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キミと僕の約束、それは世界を守る誓いの聖約  作者: はるたん
第二章 虚歌の再臨祭
39/46

38-1 そうだ、京都に行こう ~準備編~


「というわけで、数日くらい庭園を離れることになると思う」

「――ふーん」

「寮長と先生には、彩菜さんが直接連絡してくれるみたい。クラスメイトには伝えないから、みんなに何か聞かれたら上手く伝えておいて」

「――――ふーん」

「凛祢? 聞いてる?」

「――――――ふーん」

「り、凛祢さん?」


 商業区画のにある大型のショッピングモールのフードコートにて。

 茉弘と式守凛祢は向かい合いながら話をしていた。

 正しく言うならば、一方的に茉弘が話して凛祢は「ふーん」としか返さないという兄妹の会話とは思えないほどぎこちないものだった。


「別にいいけどねあんたがどこでどうしていようがわたし関係ないし魔女様と一緒に京都旅行出来てよかったわねまじ死ねばいいのに」

「全部聞こえちゃってるんですけど……」

「聞こえるように言ったんだけどそんなことにも気づかないのほんとにニブチンね」

「なんでそんなに片言でかつ早口なの?」

「んなっ! 別に片言じゃないし早口でもないんですけどぉ!?」


 テーブルを叩いて立ち上がると、思ったよりも叩いた音が大きかったのと声が上ずってたのもあって、周囲の利用客からの視線が凛祢に集まった。

 ところどころから「アツアツね~」とか「ツンデレだ~」といった声が聞こえなくもなかったが、気にしないことにした。


「第二顕現――」

「ストォォォォォォォップ!!! やめろぉぉぉぉ!!!」


 凛祢にもばっちりと、むしろ僕よりもそれが正確に聞こえていたようで第二顕現まで出てきそうになり、大慌てで止めに入る。


「離せぇッ! この病み上がり! おとなしくしてなさい!」

「労わる心が残ってるなら暴れようとするなぁ!? おい、星紋早く消せって――力つよ!?」


 なんという馬力だろうか。

 万全とは程遠い状態とはいえ、仮にも男である茉弘の制止を振り切ろうと力でゴリ押ししてくる。

 や、やばい――!? こいつ、どうやって止めれば――


「なにをされているのですか、お二方共」


 二人が取っ組み合い寸前のところに、声をかけてきたのは料理が乗ったトレイを持った希愛。

 


「兄妹仲がいいのは良いことですが、あまりイチャイチャしていると他の方々のご迷惑になりますし、妙な誤解を招きますよ」

「すでに誤解されたあとなんですけどぉ?」

「おや。すでにイチャイチャしていましたか」

「してないわよ!(してないですよ!)」


 息ぴったりに凛祢と茉弘がいうと、希愛ははあ、とため息をついて机にトレイを置くと静かに座り、合掌して天ぷらを頬張った。


「ここには、魔術師以外にも外の方々の利用客もいますので、不用意な星紋の発現は控えてください」

「だそうよ茉弘」

「あなたに言っているのですが」

「なんで私がなのよ!」

「あなた以外に星紋を出している人がいますか? 左手をよく見てください」

「見なくても出てないことくらいわか――って、あれ? なんで?」


 ようやく気付いたようで、状況が理解できてない凛祢は思考停止して固まってしまった。

 その様子を見て、希愛が僕の方を見ると、顎を二回ほどくいっと向けてきた。

 呼び戻せということだろう。

 頬を思いっきりつねってやると、「はっ!」と我に返り、星紋をすうっと消えた。


「まったく。多少の不安があったので同伴を良しとしましたが、その判断は間違いだったようですね」

「なっ! 人間誰にだってミスくらいあるでしょう!?」

「ミスの度合い」


 凛祢は弁明まがいの言い訳を口にすると、希愛は半眼を作って冷ややかな視線を凛祢に向けた。

 僕はあはは、と乾いた笑いをしつつ、カップに残ったココアを一口啜る。

 それから凛祢、僕の順で料理の完成を知らせる通知が届き、それぞれで取りに行って食事を済ませた。


「では、まずは召し物を見繕うことにしましょう」

「って言ってもここ、かなりの店舗数よ。メンズ店でも三〇はあるし」

「予算を決めておけば店の数は減らせます。茉弘、手持ちはどれくらいですか?」

「えっと……正直どのくらいかかるかわからなかったから、割と持ってきてるんだけど」

「であれば手持ちのお金が四割、少なくとも三割残るように考えるとしましょう。少し拝見しても?」

「あっうん。どうぞ」


 言って茉弘は希愛に財布を手渡そうとする。

 と――


「ちょっと待てえぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

「え、なに」

「なんでしょうか」


 大声を上げた凛祢に、二人が首を傾げると凛祢は鼻息を荒くして僕を指さすと。


「あんたまだ希愛と知り合って二か月ちょっとでしょうが! 休学中で会う機会なんてほぼなかったはずなのに……なんでそんなに仲良くなってるのよ! しかもそんな自然体に!」

「「あ」」

「なによその”あ”って!?」


 凛祢がさらに声を荒げるのを横目に、僕は希愛へ視線を向けると彼女も若干の冷や汗をかいていた。

 どうやら僕同様、完全に油断していたようだった。

 それも仕方ない。

 この二か月間、茉弘が言葉を交わす機会が多かったのは希愛――の中にいる彩菜とイリ―ティアだけで、彩菜もまた、ここ最近で一番長く言葉を交わしていたのは茉弘だけだったのだから。

 


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