33 夢境の邂逅
「——————あれ?」
いつの間にか。
茉弘は世界に、ぽつりと立っていた。
彩菜の作る色褪せた『世界』ではない。見慣れた青空が広がる、景色だけが白に包まれた世界だ。決して誇張などではなく、本当にただひたすらに白い世界。
「僕は——何をしていたんだっけ……」
ぽつりとそう呟いて、周囲を見渡してみる。
これといって何もない。自分はここでなにをしていたのだろう……?
頭に霞みがかかったみたいに、記憶がうまく思い出せない。
「——彩菜と戦っておったのだろう? 何を忘れているのだ」
ハッ、っと背後を振り返る。
そこにいたのは紺色を基調とした見覚えのない制服姿の少女だった。
外見は十五から十六あたりで、大人びた顔立ちを飾る天真爛漫な微笑。少し早めの成熟を遂げた身体と変わらぬ長さを持った闇色の髪。
その姿は、あまりに完璧で、目を奪われるほどの暴力的に美しい少女だった。
「……き、みは——」
「む、わたしの名か? わたしは————だぞ!」
「え?」
他は鮮明に聞こえたのに、一部がまったく聞き取れなくて僕は首を傾げた。
すると、少女も同じように首を傾げた。
「むう、声が届いていないのか? ならこの名はどうだ?」
そう言って、彼女は自分の胸に手を当ててこちらを見た。
「わたしは精霊。かつて世界を殺す怪物と呼ばれた化物だ」
「せい、れい……精霊……」
その言葉が、頭にかかっていた霞を掃った。
そうだった。僕は——俺は!
「彩菜さんにやられて……」
が、そこで茉弘は言葉を止めた。
理由は単純。先ほどまで少し遠目にいた彼女が、いつの間にか目の前にいたのだ。
「そうだ。お前はあやつに負けた。まもなくあやつは希愛の中にある世界王の座を取り込むだろう」
その言葉を聞いた次の瞬間、己に対しての怒りと無力感が茉弘の心を強く締め付けた。
こんな場所にいるのだ。自分は恐らく敗れ、挙句死んだのだろう。
大事な人を救えず、大事な人を止めることも出来ずに。
「俺、は……」
己の非力さを嘆くように拳を握り、真っ白な地面に打ち付ける。
が——
「——逸るな。お前はまだ終わっていないぞ」
「………………え?」
次の瞬間、少女から発された声音に、茉弘はハッと顔を上げた。
いや、正確には自分の中から聞こえる鼓動とその声音に驚いたのである。
茉弘は咄嗟に胸に手を当てて、その鼓動を確かめた。
「動いてる……」
「それはそうだろう、お前は生きているのだから」
「いや、でも——」
じゃあここはなんなんだ。そう問おうと少女の方を向いた。
その時だった。
そこに彼女はおらず、あったのは一本の剣だった。
「これは——」
一瞬、『最後の剣』にも見えた。
けれど。
「……透明な剣?」
透明、という表現は恐らく適切ではない。
透明と見まがうほどの透明度を持ちながら、その光沢は金属と何ら遜色はなかった。
突如として現れたその剣にほんの少しの疑念を抱きながらも、その柄に触れた。
——大切なものを救え。
瞬間。
どこから聞こえてきたのかも定かでないその声に、なぜか安心感を覚えていた。
——お前はまだ、立ち上がれるのだから。
その言葉で、意思が灯った。
燃える意思が、憧憬を灯した。
式部茉弘を構成する全てを、己の瞋恚が覆った。
——あやつに悲しい道を歩ませるな。
歩め。弱音も恐怖も、今だけは捨てて。
伸ばせ。可能性があるのなら。
立ち上がれ。その手にまだ術があるのなら。
——茉弘なら出来る。わたしはそう信じておるぞ。
その言葉を最後に、果てしなく感じた夢境は、終わりを迎えた。
えーーーっと(笑)
……
…………
………………
すみませんでしたああああああああああああああ!!!
今日から不定期に再開しますううううううううううう!!!
復活早々短くてごめんんんんんんんんんんんんんんんん!!!




