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キミと僕の約束、それは世界を守る誓いの聖約  作者: はるたん
第一章 『彩菜サルベーション』
13/46

13 品定めの儀式

「…………」


 その発言に茉弘は息を呑んだ。

 その事実が、飲まざるを終えない事実であったからだ。


「…………僕も、そうなんですね」

「はい。『精霊』である貴方もまた、我々が呼ぶ終末因子の一つです。『精霊』は終末因子の中でも最上位——特級因子と呼ばれる世界を殺す怪物の一角と呼ばれており、最大で十体の存在します。貴方はその一人であると、彩菜様は仰られておりました」

「…………」


 自分が危険な存在であることを茉弘は認識していた。

 けれども実際は上辺の認識だった。いや、本当は認識したくなど無かったのだろう。

 自分は少し特別で、特殊な存在で、人よりも少し危ない存在だと信じたかったのだ。

 だが、実際の自分の正体は真性の怪物で、世界を本当の意味で終わらせてしまう化物だった。

 ならいずれ、茉弘はあの怪物たちと同じ光景を生み出してしまう存在に——


「何やら卑下しているようですが、それは杞憂かと」

「え……?」


 希愛の言葉に、俯いた視線が動く。


「確かに貴方は精霊ですが、魔術師でもあり、そもそもの前提として人間です。貴方が世界を壊そうなんて気を起こさなければそれで済む話です」

「け、けど……その『精霊』に僕の意思とか身体とかを乗っ取られたりする可能性が……」

「……ふむ。そもそもそこの認識がズレているのですね」


 なにやら納得したようにあごに手を当てた。


「茉弘さんは一つ大きな誤解をしています」

「ご、誤解って……一体何の……」

「今の貴方は『精霊』が終末因子の一員だから『精霊』は悪い存在と思っているようですが、それは大きな勘違いです。現に多くの者からは危険視され、世界を殺す怪物などと言われいますが、我々魔術師に終末因子と戦う魔術を教えたのは、他ならぬ『精霊』本人ですよ?」

「…………は?」

「更に付け加えるなら、『精霊』と彩菜様は九〇〇年間交友があります」

「…………」

「…………」


 茉弘と希愛の間に、数秒の沈黙が流れた。


「う、嘘ついてるとかじゃない……ですよね?」

「……? なぜ貴方に嘘を吐く必要があるのですか?」

「……希愛さん、九〇〇年間、彩菜さんと『精霊』に交流があるって言いましたよね?」

「はい。それが何か?」

「訊いていいのかわからないんですけど……彩菜さんって、一体何歳——」


 と、言いかけたそのとき。


「「……!」」


 二人は、世界が軋む音を聞いた。




(——さて。少し酷ではあるが見せてもらおうか。君の今の力を)


 そう胸の内で紡ぎ、品定めるように少年を見つめる。

 時期尚早ではある。確証もない。だがこれはやらなければならない儀式だ。これからの先の為に。

 故に——迷いなく彼女はこの蛮行を実行し、胸の内で告げた。


(もし示せなければ、死ぬのは『私』ではなく、『世界』全てに変わるだろう。だから……超えて見せろ」


始まるは品定めの儀式。

ひとつの決意から生まれし、少年を変える試練である。


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