13 品定めの儀式
「…………」
その発言に茉弘は息を呑んだ。
その事実が、飲まざるを終えない事実であったからだ。
「…………僕も、そうなんですね」
「はい。『精霊』である貴方もまた、我々が呼ぶ終末因子の一つです。『精霊』は終末因子の中でも最上位——特級因子と呼ばれる世界を殺す怪物の一角と呼ばれており、最大で十体の存在します。貴方はその一人であると、彩菜様は仰られておりました」
「…………」
自分が危険な存在であることを茉弘は認識していた。
けれども実際は上辺の認識だった。いや、本当は認識したくなど無かったのだろう。
自分は少し特別で、特殊な存在で、人よりも少し危ない存在だと信じたかったのだ。
だが、実際の自分の正体は真性の怪物で、世界を本当の意味で終わらせてしまう化物だった。
ならいずれ、茉弘はあの怪物たちと同じ光景を生み出してしまう存在に——
「何やら卑下しているようですが、それは杞憂かと」
「え……?」
希愛の言葉に、俯いた視線が動く。
「確かに貴方は精霊ですが、魔術師でもあり、そもそもの前提として人間です。貴方が世界を壊そうなんて気を起こさなければそれで済む話です」
「け、けど……その『精霊』に僕の意思とか身体とかを乗っ取られたりする可能性が……」
「……ふむ。そもそもそこの認識がズレているのですね」
なにやら納得したようにあごに手を当てた。
「茉弘さんは一つ大きな誤解をしています」
「ご、誤解って……一体何の……」
「今の貴方は『精霊』が終末因子の一員だから『精霊』は悪い存在と思っているようですが、それは大きな勘違いです。現に多くの者からは危険視され、世界を殺す怪物などと言われいますが、我々魔術師に終末因子と戦う魔術を教えたのは、他ならぬ『精霊』本人ですよ?」
「…………は?」
「更に付け加えるなら、『精霊』と彩菜様は九〇〇年間交友があります」
「…………」
「…………」
茉弘と希愛の間に、数秒の沈黙が流れた。
「う、嘘ついてるとかじゃない……ですよね?」
「……? なぜ貴方に嘘を吐く必要があるのですか?」
「……希愛さん、九〇〇年間、彩菜さんと『精霊』に交流があるって言いましたよね?」
「はい。それが何か?」
「訊いていいのかわからないんですけど……彩菜さんって、一体何歳——」
と、言いかけたそのとき。
「「……!」」
二人は、世界が軋む音を聞いた。
(——さて。少し酷ではあるが見せてもらおうか。君の今の力を)
そう胸の内で紡ぎ、品定めるように少年を見つめる。
時期尚早ではある。確証もない。だがこれはやらなければならない儀式だ。これからの先の為に。
故に——迷いなく彼女はこの蛮行を実行し、胸の内で告げた。
(もし示せなければ、死ぬのは『私』ではなく、『世界』全てに変わるだろう。だから……超えて見せろ」
始まるは品定めの儀式。
ひとつの決意から生まれし、少年を変える試練である。




