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蒔島家の事情  作者: JUN
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クラブ見学

館倉学院では、1年生の間はクラブに入らなければならないという決まりがある。そのため今日の午後はクラブを見学して回る事になっていた。

 なので今日の午後は、全校生徒がクラブ活動だ。

 クラブはたくさんあるが、名前だけで活動実態のないクラブはないらしい。その一覧表から気になるクラブを選んで見学に行き、今週中に入部届を提出しなければならない。

 俺も勇実も、わいわいと目を輝かせて表を見るクラスメイトの中で、一応チラリとは全てに目を通した。

「やっぱり決まりだな。柊弥もか」

「ああ、そうだな。

 でも、ほかもちょっと見学してみるか、せっかくだから」

「そうだな」

 勇実は弓道部に入部することを決めているし、俺は弦楽合奏部に入部するつもりだ。

 それでとりあえず、その2つを見ることにした。

 弓道場は体育館の横にある。部員は50名で、見学者も多い。何せ、かっこいいと人気だ。

 部長はストイックな感じのする上級生で、試合の時には他校の女子が騒ぐらしい。国体にも出場した選手だという。

 ピンと張り詰め、息さえも潜めたような空気の中、矢がタンと音を立てて的の真ん中に吸い込まれていく様は、見ていてぞくぞくするような気がする。

 続いて隣の柔剣道場へ行くと、剣道部と柔道部が練習をしていた。

 柔道部は、がっしりとしたがたいの部員たちが大きな声を上げて組み手をしており、痛そうで、俺にはどう考えても無理だなと思う。

 隣の剣道部も規律を重んじ、厳しそうではある。剣道部の部長も、国体で優勝した生徒だとそばの誰かが言っていた。

 次に、弦楽合奏部を見に行く。

 この館倉には、弦楽合奏部と吹奏楽部があるらしい。両者の違いは、楽器編成の違いだ。

 弦楽合奏部はバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの編成で、部員は40人程度だろうか。見学者もそこそこいる。部員たちが弾いたのは『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』。有名な曲なので、大抵の人は聞いたことがあるのではないだろうか。

 演奏はそろっているし、悪くない。ただ、皆が楽しそうに弾いていた。

 楽しそうに。

 心が、どこか痛む。

「柊弥?」

「いや」

 曲が終わったところで、俺たちは教室を出ることにした。

 ほかの見学者も、曲が終わったところで、

「じゃあ入部希望者は入部届をよろしく」

と言って出され、ぞろぞろと次のクラブへと移動していく。

 1階の校舎の端にちょうどいい階段があったので、そこに座った。グラウンドの野球部と陸上部、遠いがテニス部も見える。

「はあ。ほかに見たいところあるか?」

「いいや。もうここで時間潰すか」

 俺たちはそう言って、さぼりを決め込んだ。

 と、頭の上から声がした。

「ああ?サボりか、お前ら」

 反射的に顔を上げると、担任の城崎の呆れたような顔があった。

 城崎亮介。ワイルドとでもいうのだろうか。ただただ、面倒くさがりに俺には見えた。

「いえ。陸上部の見学をしています」

「ここからか?」

 俺も勇実も、グラウンドに目を戻した。

「クラブはもう決めたのか」

「はい」

「じゃあ、まあいいか。

 蒔島も殿村も、チャイムが鳴るまではいろよ。それからは任意に帰宅でいいけどな」

 そのために、今日の終礼は昼休み明けに終わっている。

「はあい」

 俺たち以上にやる気のなさそうな担任を、俺たちは見送った。

 入れ替わるように、春弥と前川が来る。

「あ、ここにいた!」

 春弥は隣に座った。

「クラブ回ってどうだった?」

 それに、春弥と前川が座るれるように端に寄りながら答える。

「まあ、平和そうだったし、予定通り弦楽合奏部にしようかな」

「俺はやっぱり弓道だぜ。

 前川は剣道部か、中学から引き続き」

「そうだね」

「お前はどうなんだ、春弥」

 春弥は首を傾けて言った。

「僕は写真部にしようかなって。それで、智宏のかっこいい写真をいっぱい撮るんだぁ」

 春弥と前川がにっこりとしあうのに、俺も勇実も目を向けずにグラウンドをただ見つめていた。

「いや、そうじゃなくて」

 春弥が言うので、何かと俺は春弥に目を向けた。

「柊弥が弦楽合奏部に入るのも勇実が弓道部に入るのも、聞いてたから知ってたよ。聞きたかったのは、先輩とか顧問の先生とかどうだったかって事。

 一応自分で探してみるって言ったんだしね。時間稼ぎのとりあえずのいいわけでも」

 小首を傾げて言う春弥に、俺は渋い顔をした。

「勘弁してくれ」

 勇実も、苦笑を浮かべていた。






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