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第94話 漢の会話


「ひとつだけ、心当たりがありますね……『沈黙の遺跡』という場所です。ルザルク殿下からの依頼で魔導飛空艇の動きを監視するためにその近くへ行ってたのですが、Aランク相当のゴーレムたちが入口を守っていて、私では中に入る事ができませんでした。しかし、阿吽達であれば攻略できる可能性もあります」


「そんな場所があるのか! なら俺達は協議会までの期間を戦力強化に充てる事にする。

 禅、後で場所を教えてくれるか?」


「はい、もちろんです」


「では、最後に今日の話を纏めよう。

 まず、戦争により家をなくした被害者に関しては、アルラインに残るか、他の街への移住を希望するかを聞き、移住者は各街に割り振りを行う。プレンヌヴェルトに関しては、街の拡張と文官の斡旋を行う事を視野に入れて検討。

 次に捕虜に関しては、アルラインの戦後復興作業に従事してもらい、復興作業が終了次第イブルディアへ返還予定。食料問題に関しては各街や村に協力を仰ぐ事とする。また、これに関しては、最後の問題が解決し次第再検討を行おうと思う。

 3つ目は皇帝や魔族の対応。これは3か月後に行われる『スフィン7ヶ国協議会』にルナ皇女と僕が出席し、各国へ協力を仰ぎつつ、目標の暗殺も視野に入れて作戦を立てようと思う。この作戦に関しては、【黒の霹靂】や禅君の協力も必要になってくる。そこで、開催1か月程度前には再度集まる事を考え2カ月程度は各自戦力の強化に努める。

 以上の事を陛下に進言し、陛下からの指顧しこで動く事を了承していただく。まぁ、これに関しては、この内容以上の事が誰かから提案されない限りは受諾されるはずだ」


「っし。なら俺達【黒の霹靂】は、さっそく明日から『沈黙の遺跡』へと向かうことにする。何かあったら通信型魔導具で連絡をくれ。禅、この後はどこで話す?」


「実は、見せたいものがあります……私に付いてきてはくれませんか?」


 こうして、今後の対応の大枠が決まり、禅とアルラインの外へと向かって行くこととなった。



◇  ◇  ◇  ◇



 早朝から話し合いを始めてはいたものの、『黄金の葡萄亭』から出る頃には正午を少し回っていた。若干腹は減っているが、それよりも今は禅との話が重要だ。

 禅の後ろを歩いて付いて行くと、人気の無い森の中へと入っていく。敵意は全く感じないし最悪の場合は帰還転移もできるが少し警戒してしまう……こんな森の中で俺に見せたいものとはいったい何なのだろう。


 禅は武京国出身という事もあり、俺の苗字である“百目鬼”に関して少しでも知っている事を教えてもらいたいと思っていた。そのため、人気の無い場所というのは俺にとってもありがたい事ではあるが……

 森の中へと入ってから20分ほど経った時、禅は急に歩みを止めた。


「そういえば、しっかりと自己紹介するのは初めてでしたね。私は水月 禅、出身は武京国です」


「【黒の霹靂】の阿吽だ。会合の時にも言ったが俺の事も阿吽って呼んでくれ。

 んで、俺に見せたいものとか話したい事ってなんだ? わざわざ人気の無い場所まで来たけど……」


「そうですね、色々あるんですが……まずはこれを見てください」


 そう言うと禅はスキルを発動し、一匹の大きな獣を呼び出した。

 全長は4mほどあるだろう大きな体躯、黒色の模様が入り全体的にはキラキラと輝く白色の体毛。上下の顎からは大きな牙が二本ずつ生え、太い四本の足の先には鋭い爪が生えそろっている。


「白い虎……」


「はい。僕のパートナーの『ミーちゃん』です。白虎という霊獣なのですが……率直に聞きます、どう思いますか?」


「どう答えていいのか分からない質問だが……そうだな。

 この攻撃的なフォルムは一瞬で見る者を圧倒する魅力がある。それに対して、俺に向けてくるその眼差しは非常に穏やかなもので、知性と品性を感じる。

 一言で表現するなら……『美』だ」


「ッフ。やはり、あなたに秘密を打ち明けて良かった……同志、阿吽!」


 同志……ま、まさかっ! コイツもモフり好き……


「そういう……ことか」


 改めて禅を見ると、白虎を見つめるその瞳は慈愛と信頼に満ち、それでいて確かな信念を感じる。

 気が付くと俺は、禅とガッチリと握手を交わしていた。


「やはり、阿吽もこの世の真理を垣間見たのですね。まぁそれも当然でしょう……あのキヌさんが阿吽のパートナーなのですから」


「あぁ。キヌは最高の相棒だ。それで……禅はドコ派だ?」


「私のパートナーはミーちゃんですからね。やはり、この首回りが一番……いや、でも尻尾も捨てがたいっ!」


「分かるぞ! 俺は尻尾派だ!」


 何だ、この心地の良い会話は……仲間と話している時にも安心感や充実感は感じているが、それとはまた違う……何と表現すればよいのか分からない満足感。これが“同志”というものか。


 その後モフモフ談議に花を咲かせていたが、自分の和装を見て思い出した。

 そうだ、俺には禅に聞かなければならない事がある。少し口惜しいが話題を変えることにしよう……


「そういえば、禅に聞きたいことがあったんだ」


「何でも聞いてください、心の友よ」


「実は、俺の苗字についてなんだ。これを知れば危険に巻き込んでしまう可能性もある。それに、口外しないで欲しい事でもあるんだが……」


「私の秘密はもう阿吽に話しましたよ? それに、私は危険な事にも慣れています」


「そうか。なら、遠慮なく聞かせてもらう。俺の苗字は“百目鬼”という。何か知っている事はないか?」


「やはり武京国の出身だったのですね。それに、百目鬼とは……」


「何か知っているのか!? どんな事でもいい、教えてくれ!」


「あまり詳しい事は知らないのですが……百目鬼という家名は武京国である意味伝説となっています。おそらく、阿吽の血族でしょう。それに……阿吽の強さにも少し納得がいきましたよ」


「詳しく聞いても良いか……?」


「もちろんです。その伝説となっている方の名は『百目鬼 大獄だいごく』様です。心当たりはありますか?」


「俺の……爺ちゃんの名だ。その伝説って……」


 それから禅は武京国で伝説となっているという、爺ちゃんの事について教えてくれた。


次話は6/14更新予定です♪


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尻尾派です。獣人娘の頭を撫でてたい
[良い点] やっぱり禅さんは良い奴だ [一言] ジーちゃん何やらかしたの?笑笑
[一言] わくわく
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