第88話 非道
〜阿吽視点〜
墜落していく機体を眼下に、全てのドラゴンが唖然としていると、上空からドレイクが舞い降りてきた。
「全機撃墜できたっすね!」
「ドレイク凄かったな! いつの間にあんなブレス撃てるようになったんだ?」
「氷竜の試練で壁を破壊するために試行錯誤したんっすけど、最終的にブレスの効果を最大にできるように風魔法で指向性を付与したんっす。めっちゃムズいんっすけど何とか形になったっすね!」
「これを3週間で獲得したのか……キヌですらクエレブレから直接魔法を学んでも、応用まで行けてないぞ……」
「無我夢中でしたから! それよりも、これからどうするんっすか??」
アルラインにも飛空戦艇が向かっていると言っていたし早急に向かう必要があるだろう。
一番最速で到着する方法はアルラインダンジョンへ全員が転移し、キヌたちと合流して戦線に合流する事だな。
そのためには、墜落した飛空戦艇の中で生き残っている帝国軍人を捕虜としておくなどの措置が必要だろう。
「そうだな。まだ飛空戦艇が3隻アルラインの方角へ向かっているそうだ。ファーヴニル、ここは任せても大丈夫か?」
「あぁ、任せておいてくれ。生き残りを捕虜とし、飛空戦艇が再び動き出さないようにしておく」
「任せた。キヌ達には俺から魔導具で連絡を取って戦況の報告も村にしておく」
「助かる。里に残っていた者たちも安心するだろう」
“魔導具での連絡”というのは、俺達が念話ができる事を隠すための咄嗟に出た嘘ではあったが、問題なかったようだな。
その後、キヌ達へと念話で連絡をとり、人気の無い場所まで移動後にアルラインダンジョンへ転移し、全員集合をすることができた。
移動時間はかなり短縮することができているが、距離や時間的に考えると、アルラインにも飛空戦艇は到着してしまっているだろう。
被害が出ていなければよいが……
とりあえず、ルザルクと情報共有だな。
『ルザルク、こっちはドレイクと竜人達が全機撃墜し、アルラインに向かっている。もうすぐ着きそうではあるがそっちの状況はどうなっている?』
『阿吽! 良かった! こっちは戦線が膠着状態となっていたが、飛空戦艇が現れ街を破壊しだした。帝国は戦争を何だと思っているんだ……
民衆が避難しているコロシアムや王城は無事のようだが、街の一部が壊滅状態だ。人的被害はまだ確認できていない。阿吽達は飛空戦艇の方を任せたい!』
『了解した。すぐに向かう』
通信を切ると全員でアルラインダンジョンから外に転移し、街に向かった。
俺とネルフィーはコロシアムへ、キヌとシンクは王城へと向かい人的被害が出ないように、できる限りの防御策をとるつもりだ。
ドレイクだけは街から離れたところで竜化を行い、飛空戦艇に向かって飛翔している。
≪ドレイク、遠慮なく撃墜してくれ。街の被害は俺達が何とか抑える!≫
≪了解っす! 全力のブレスで破壊してやるっすよ!≫
俺達がコロシアムへ到着すると中は、パニック状態となっていた。マイケルが音声拡張型魔導具で混乱を沈めようとしているが、どうもマイケル自身混乱している様子も見える。
確かに飛空戦艇が飛来し、いきなり街を破壊しだしたらそうなるだろう。
というか、真っ先に街に攻撃を仕掛けるとは……皇帝が魔族に洗脳を受けているのは本当の事のようだ。非戦闘員である民衆を狙うという非道な行為を行ったことが、帝国民に知れたらクーデターも起きそうなものだ。
というか魔族の狙いは正にソレであり、アルト王国とイブルディア帝国の両方を潰そうとしている節もある……
だが、魔族の事は後で考えるとして……とりあえず、この混乱を収めるのが先決だろう。
序列戦後の式典で、俺達がドラゴンに乗って登場したというのは知れ渡ってはいるが、ドレイクはその時と姿が変化している。これも混乱の原因となっている可能性がある。
俺はマイケルがいるブースまで空舞で飛び上がり、情報を伝達した。
すると、マイケルは魔道具のボリュームを最大に調整をすると、混乱している民衆にしっかりと聞こえるようにアナウンスを行った。
『アルト王国民の皆様っ! 我らの英雄【星覇】が到着いたしました!!
ただいま飛空戦艇に向かっているドラゴン、【破壊の化身】ドレイクは、竜人族の里に向かった飛空戦艇を単独で3隻撃墜したそうです!』
アナウンスが流れると、コロシアムにいる民衆は驚きとともに徐々に落ち着きを取り戻していった。
『これ以上の被害を抑えるため、飛空艇をこの場で撃墜するようです! 落下物にご注意ください! また、冒険者の方は落下物がコロシアム内に落ちてくるのを極力防ぐようお願いいたします!』
そのアナウンスと共にコロシアム内の雰囲気が変化していく。
冒険者も自分たちの役割が明確になり、民衆の誘導や魔法を発動できるように準備をしだしている。ネルフィーはコロシアムの壁の上に待機し、魔法と矢で飛来する落下物を最速で撃ち落とせるように陣取っている。
俺もすぐに壁の上へ跳び上がると、ドレイクが魔法攻撃を避けながら、ブレスで街を破壊しないように位置の調整を行っているところだった。
そしてドレイクは2隻の飛空戦艇が一直線になる位置を的確に捉えつつ、口腔内にエネルギーを貯め込む。
数発の魔法攻撃は受けているものの、そんなダメージは関係ないとばかりにレーザーのようなブレスを放つと、2隻の飛空戦艇の魔導防御壁と装甲を貫き、その機体は真っ逆さまに墜落し黒煙を上げる。
しかしその直後、最後に残った飛空戦艇の主砲が、ドレイクへ向けて光を放つのが見えた。
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