第35話 Sランク冒険者
獣人たちは村をどう発展させるかで盛り上がり出している。俺は村の宿屋に戻り、シンクとドレイクに念話をした。
≪シンク、ドレイク聞こえるか？≫
≪聞こえております、阿吽様≫
≪兄貴、聞こえてるっすよ！ あ、俺も冒険者登録してＣランクになったっす！≫
≪おー！ それは良かったな！
こっちはプレンヌヴェルトダンジョンの入口を昨晩開放した。
最初獣人達は混乱していたが、今はもう大丈夫だ。
二人は冒険者ギルドにダンジョンができたことを報告してほしい。
詳しいことは俺がスパルズに話すから、何か聞かれても『わからない』って答えておいてくれ≫
≪了解いたしました。わたくしから伝えておきます≫
≪おう、頼んだ！ あと数日したらキヌと二人でレクリアに向かうから、連絡があるまではクエストをやっててくれ≫
≪わかりました≫ ≪了解っす！≫
これで少なからずダンジョンに冒険者は来るだろう。
あとはダンジョンを調整しながら様子を見るとするかな。
◇ ◇ ◇ ◇
ダンジョンを開放して5日が経過した。思っていた以上に冒険者が来てくれている。
初日に入場した3組のパーティーがそれぞれ宝箱を発見し、青レアの武器や防具を持ち帰ったのが大きいようだ。
浅層はＥやＤランクの冒険者でもパーティーを組めば安全に探索できるレベルにしてあるのも良かった。
現在は日中であれば5組くらいが常に探索している状況だ。初日以降は、ボス部屋以外は白や緑のアイテムを宝箱に入れてある。
現在一番探索が進んでいるのはＡランクパーティーの【幻想の春風】で10階層のレッドオーガを突破し一旦帰還するようだ。
宝箱からも青レアの弓を引き当て嬉しそうにしている。
プレンヌヴェルトのダンジョンは昨日の時点で13階層まで作成してある。10階層を越えたあたりからＣ〜Ｂランクの魔物を徘徊させてあり、13階層はネームドの牛頭鬼と馬頭鬼が待機している。
見ている限り【幻想の春風】では突破は難しい。ボスの部屋からも戻る事はできるようにしてあるため、難しければ撤退するだろう。
ただ、他の街からＳランクのパーティーが来ることになれば攻略されかねないため、まだまだ階層を増やし、ダンジョンポイントが貯まり次第、新たなボスも召喚予定だ。
フロアの追加作成に関しては、イルスが俺の意図を理解しているため、昨日からほぼ全て任せている。
そしてバルバルから報告があり、今朝スパルズからの手紙が早馬で来たという事だったため、今からキヌとレクリアの冒険者ギルドに向かう事になった。
◇ ◇ ◇ ◇
俺とキヌは昼頃にレクリアの冒険者ギルドに到着し、シンクやドレイクと合流後にギルドマスタールームへ通された。
「よう、待ってたぜ」
「急いできたんだ、そんな待ってないだろ。
んで、用件は？ 報酬は明日じゃなかったか？」
「まぁな。まぁ、その報酬が今朝届いたから呼んだんだよ。
あとはダンジョンがプレンヌヴェルトにできた件だ。
まずは報酬の話からしようか」
「お、報酬が決まるの早かったんだな」
「あぁ。王都の連中も急いだようでな。
まず阿吽、キヌ、シンクの3人はＳランク冒険者に飛び級で格上げだ。
よって自動的に【黒の霹靂】はＳランクパーティーとなる。おめでとう！」
「え？ マジかよ。まだ冒険者登録して1か月も経ってないんだぞ？ 大丈夫なのか？」
「正直、前代未聞だな。この記録は今後塗り替えられることはないだろ。
通常どれだけ早くてもＳランクになるには3年はかかると言われているからな。
ただ、レクリアにＳランクパーティーが居ないってのも実は問題だったんだよ。
各街にＳランクが1組以上は所属するのがベストではあるんだ。今回みたいな突発的な事案に対応するためにな。
だからこそ被害をゼロに留めた【黒の霹靂】の活躍が際立ったわけだが……」
「そうなんだな。まぁ素直に受け取っとくよ。あとドレイクはどうなる？」
「ドレイクに関しては、被害者って事になったからお咎めはなしだ。
これも【黒の霹靂】に入った事で、ドレイクが阿吽達に監督されるというのも理由の一つだ。
これに関しちゃあ俺を褒めてくれてもいいんだぜ？」
「分かってるよ。正直何かしらのペナルティは覚悟してた。ちゃんと責任もって見ておく。
大事な仲間だからな」
「本当に迷惑かけたっす！ レクリアのために少しでもクエストをこなします！」
「あぁ。期待してる。
この1週間も積極的にクエストを受けてくれていたからな。
実は住民からも冒険者からもドレイクは評判が良いんだ」
「へぇ。頑張ってたんだな！ あ、そういえばクランはどうなった？」
「クランの申請もちゃんと通った。そのことで報酬っていうか付帯してくることもあるんだが……まずはクラン名を教えてくれ」
「そうだな。
クラン名は【星覇】だ」
「ほぉ。良い名だな。阿吽が考えたのか？」
「いや、これは仲間たちみんなで考えたんだ。
俺たちの目標はこの世界で最強になる事だからな、そこから名付けた」
「ん。最高のクランにする」
「そうか。最強とはかなりデカい目標だが……お前らならやれそうだ。期待してるよ」
「おう！ んで、付帯してくることってなんだ？」
「それはな、2か月後に王都で行われる“クラン対抗の武闘大会”があるんだが、知っているか？」
「あぁ。噂には聞いたことがある。この王国内に拠点があるクランの順位、序列を決める大会だろ？」
「そうだ。通称、“序列戦”とも言うな。
通常は創立2年目以降のクランが対象になるんだが、お前らの強さを見てみたいと上からの御達しでな。それに参加する権利が与えられた」
「面白そうだな。他の国のクランは参加しないんだっけか？」
「そうだな。アルト王国の序列を決める大会だ。
優勝すれば『アルト王国クラン序列1位』となるわけだ。
しかし、そんな簡単に優勝できる大会ではないぞ？ 王都には30以上のクランがある。王国内全部合わせると50近くになるはずだ。そんな中でもＳランクのパーティーを複数抱えているクランも存在するからな。
でもまぁ、お前らがどこまでやれるか正直俺は楽しみだ」
「出るからには優勝してきてやんよ。まぁそうなると2か月間は準備と移動で終わりそうだな」
「移動費は出ないからな。ちゃんと稼いで貯めておけよ？
あぁ、最後にもう一つ報酬があるんだ。多分お前が一番喜ぶだろう報酬がな」
そう言ってスパルズはニヤっと笑みを浮かべた。
本日、夜にも投稿予定です！
この話を気に入っていただけた方、「続きが読みたい」と思われた方はブックマークや、広告の下にある評価をして頂けるとモチベーションとテンションが爆上がりします！
応援の程よろしくお願いいたします！
