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「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無双しようと思います~【書籍化&コミカライズ】  作者: 幸運ピエロ
第11章 修羅咲ク都 武京編

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第307話 鍛刀①

 

~二代目 國光視点~


 阿吽達が天狗谷へ向け出発してから、もう1週間が経過している。

 徒歩で片道1日はかからない距離。往復で2日を要したとしても、これはあまりに遅すぎる。何かあったのではと頭の片隅では考えつつも、信じて待つのが送り出したわしの使命でもあると思い直す。


 そして、鍛冶台の上にある白鵺丸をじっと見つめる。

 白鵺丸を受け取ってからこれまで、寝食以外の時間は白鵺丸との対話(・・)に時間を費やしてきた。

 刻み込まれた無数の小傷、僅かな歪み、微かな錆び。それは白鵺丸が阿吽と共に歩んできた軌跡、戦いの記録とも言い換える事ができるものだ。


 どのように刀を振るのか。

 どんな敵と戦ってきたか。

 戦いの癖や技術。

 ――そして使い始めてから今までの成長までもが自ずと感じ取れた。


 未完成のまま、ここまで使い込まれ、それでも折れんかった“芯”。

 あのたわけは武器に無理をさせすぎだと小さな怒りが湧いてくるも、知識が無いなりに大切に扱おうとしていたことや、それすらも白鵺丸は嬉しかったのだということが、見ているだけで伝わってきた。


「お前も大概……たわけやな」


 小さく呟き、もう一度視線を落とす。

 直せば、死ぬ。

 せやけど、その先に進みたい。そんな意志とも言えるものが、この太刀からは伝わってくる。


 やから――待つ。

 あの若造が、何を持って戻ってくるか。


 炉の火が、低く鳴る。

 時間はこの際どうでもええ。

 急かす理由もないし、焦っても仕方がない。

 ただ、待つ。


 やがて。

 戸の向こうで、足音が止まった。

 堂々とした足取り。わしの工房にこんな傍若無人に立ち入ろうとする者など、あの若造(たわけ)以外には考えられん。


 そして――

 軋む音とともに、扉が開く。


 入ってきた若造を一目見て、分かった。


(……ふっ、空気が違うわ)


 纏っとるもんが変わっとる。


 ――ムカつくほどに“やり切った顔”しとりやがる。

 口元が、わずかに歪んだのを自覚した。


「わりぃ、待たせたな」


「心配なんぞしとらんかったが、……何かあったのか?」


「いや、まぁ……話せば長くなるんだけど」


 若造は茶を濁しつつ、チラッと隣のキヌを見る。


「ん。私から簡潔に説明する。阿吽が天刑の技巧を破壊した時、一緒に谷に張られてた結界までぶっ壊しちゃって。そんな状態だと、周辺の魔物が大量に侵入しちゃいそうだったから、天刑と私で結界の張り直しをしてた」


「壊すのは簡単なんだけどなー。まさか張り直しに3日もかかるとは思わんかったわ! てか、まさか結界まで壊れるとは思ってなかったし……事故? みたいな?」


 悪びれもなく笑う阿吽と、小さく肩をすくめるキヌ。


 というか、天刑と? キヌで? 一緒に結界の張り直し?

 一体どういう状況になったらそうなるんか……。

 そう考えていたら、ふと後ろに立つ人物に気が付いた。


 黒い片翼。口元は半面で覆われているが、間違いなく天狗族。咄嗟に警戒をするが、そやつは丁寧に頭を下げ、挨拶をしてきた。


「お初にお目にかかる、國光殿。俺は天狗族の真鴉と申します。阿吽と行動を共にすることを許され、今は阿吽を長と仰ぎ忠誠を誓っております」


「相変わらず真鴉は硬っ苦しいな。“仲間だ”って言えば早いだろ」


 天狗族が……仲間?

 いろいろ疑問は尽きないが、理解しようとするだけ無駄な気がして、問いただすのを諦めた。


 ……そんな事よりも、わしにとって一番重要な事を聞きたい。


「それで……持ってきたんか?」


「あぁ、約束通りな」


 そう言いながら、若造はマジックバッグから麻袋を取り出した。


 最初に感じたのは、沈み込むような“圧”やった。

 袋越しでも分かる。

 ただの鉱石やない。


「……出せ」


 短く言うと、若造は迷いなく袋を開く。

 そして、転がり出てきた黒色の塊。

 その瞬間、工房の空気が僅かに歪み、炉の火がひときわ大きく唸った。


(……なんや、これは)


 喉の奥が、ひりつく。

 目を逸らせん。

 触れてもおらんのに、指先がざらつく。

 ゆっくりとその鉱石へと手を伸ばし――寸前で止めた。


 分かってまう。

 これは、“理解させられる類のモン”やと。


「お前、これ……」


 口の中の水分が蒸発したのかと思うほどに乾いている。

 捻り出た声は、少し掠れていた。


「武鋼、持ってきてやったぜ」


 迷いのない目だが、その奥には何かの含みが感じられる。


「これ以上の純度は現存していないらしい」


 ――まさか……。


「ヒヒイロカネ……か?」


 言葉にした途端、妙に腑に落ちた。

 武鋼の中でも別格、まさに刀になるために存在する鋼。

 それを、こいつは持ってきた。


「お前ってヤツは、ほんとに……」


 思わず、笑いが漏れる。

 呆れ半分。

 ――もう半分は、抑えきれん高揚感。


 胸の奥で火が点き、一気に激しく燃え上がる。

 久しく感じていなかった感覚。


 ……あかん。

 ……今すぐ、打ちたい。


「俺は最高の仕事をしてきたぞ? あとは國光の腕次第だ。白鵺丸を……頼む」


「上等や。武京一……いや、世界一の刀に仕上げたるわ」


 受け取った武鋼は見た目に反して羽のように軽い。気を張っとらんと吸い込まれそうになるほどの魅力を脳に直接叩きつけてくる。

 触れた時点で勝負が始まる鋼。この抗い難い高揚感に魅入られれば堕ちる。

 一つの油断、小さなミスでもあれば……、一瞬で喰われる。


「しばらく時間をくれ。集中したい」


 そう言って阿吽達を工房から出し、手ぬぐいを頭部に巻き付ける。


 ――ゆっくりと炭をくべ、炉の火を強くしていく。

 ここで急いては全てが台無しになる。

 急がん。焦れば、応えん。

 それはどんな鋼も同じや。如何なる鉱石も、火に嘘は絶対に付かん。


 炉の中、火の色を見極める。

 (ふいご)を押して空気を炉に流し込むと、赤から橙……そして黄色へと、どんどんと深みを帯びていく。

 黄色に白みが混じり始めると、チリチリと小さな火花が炉の中で踊りだした。


(……さて、始めるか)


 白鵺丸を静かに炉へ入れる。

 ゆっくりと刃が赤く染まり、輪郭が揺らぎ、やがて形を失う。

 この数日間見続けた刀が、二代目國光の最高傑作だと確信しとった太刀が……武器から金属へと戻っていく。

 正直、名残惜しさはある。それでも、目は逸らさん。


「待っとれよ。お前の思う形に、仕上げたるからな」


 誰に言うでもなく、呟く。

 本当にええ刀やった。

 せやから――

 わしがこの手で、きっちり終わらせたる。



どうも! 幸運ピエロです★

今月の8日で、なろうに初投稿をしてから4年が経ちました♪

ここまで続けてこられているのも読者の皆様の暖かい応援があってのことだと、しみじみ実感しております!!


最初の方を読み返してみて、拙い文章に恥ずかしさを覚えつつ、当時の気持ちがハッキリと蘇ってきてちょっとエモい感じにもなってます。

さてさて、物語も300話を越え11章の武京編に入っておりますが、実はこれでも全体の構成の中盤位なんです!笑

今後も長いお付き合いになるかと思いますが、引き続き楽しんで頂けたら幸いです★


今後もバイブスぶち上げて執筆してくんで、よろしくぅぅぅ!!!

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