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「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無双しようと思います~【書籍化&コミカライズ】  作者: 幸運ピエロ
第11章 修羅咲ク都 武京編

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第291話 小さな違和感

 

~阿吽視点~


 雲海を切り裂くように進む飛空艇は、王国領を抜けゆっくりと帝都イブランドへ舵を切っていた。

 遠方の山脈から運ばれてきたのか、時折吹く強い風はひんやりしており、季節が変わる前触れのような独特な匂いが鼻孔をくすぐる。


「キャンッ! キュアァ!」


 さっきまで甲板を駆け回っていたユラは柵に前足をかけ、今は風に揺れる雲の流れに目が釘付けになっている。

 好奇心にまっすぐなその瞳は、生まれたばかりの世界を貪欲に飲み込もうとしていた。

 だがその度に、キヌの手がユラの身体を掴んで引き戻す。


「ん、ユラ。そんなに身を乗り出しちゃダメ」


「キュイ……」


 しゅんと肩を落とすが、次の瞬間にはまた新しいものを見つけて走り出す。


「元気が有り余ってるな」


 体の奥には計り知れない“何か”が息づいているのを感じるが、身体も心もまだまだ子供。好奇心に従順で、後先考えていないはしゃぎっぷりだ。

 そんな空の旅は、イブランド到着まで続くと思っていた。


 だが数分後、穏やかだった胸の奥が唐突に逆撫でされた。


(……なんだ、この感覚)


 風に混じる生き物の気配――いや、もっと濃い“殺意の塊”が、空を這ってくるような嫌な感覚に襲われ、【探知】スキルを発動する。


「……キヌ」


「ん。魔物……それも、相当な数」


 キヌの声が空気を引き締めた。

 俺たちの視線が、雲海の向こうへと吸い寄せられた時、嫌な咆哮とともに雲が不自然に膨らみ、裂ける。


「「「ギャルルルァァアア!!!」」」


「ワイバーン……!? いや、多すぎるだろ!!」


 十数体どころではない。

 二十、三十……いや、それ以上か。

 雲の裂け目から溢れ落ちるように、狂気を振りまきながらワイバーンが空を覆う。

 どいつも目は血走り、呼吸は荒く、どこか“追い詰められている”といった焦燥感を滲ませている。


「ワイバーンって、本来群れる魔物じゃない……よね?」


「あぁ。何かおかしいな」


 俺が白鵺丸の柄に手をかけた瞬間――カチリと、どこか乾いた音が指先に響いた。


(……ん?)


 感じた異音は刃か、鞘か。

 どちらかわからないが、白鵺丸が微かに“(きし)んだ”気がした。

 柄を握った掌に、ごく僅かなざらつきが触れる。

 まるで、刀身のどこかが疲労しているような――そんな、妙な違和感。

 考えを深める間もなく、ワイバーンの咆哮が空を裂く。


「来るッ!!」


 一体が飛空艇に急降下し、甲板の上に影が落ちた。

 反射的に白鵺丸を抜くと、いつもより――ほんの少しだけ、重い。


(なんか……抜けが、悪い気がするな)


 違和感は一瞬。

 刃が閃けば、ワイバーンは甲板に落ちる前に両断された。

 だが、次から次へと襲いかかってくる。

 それを見たユラが叫びながら、甲板に躍り出た。


「キュアァァッ!!」


「ちょ、ユラッ! 戻れ!!」


「キャン!!」


 返事というより、鳴き声に宿る意志。

 ユラが毛並みを逆立たせると、周囲の空気が帯電しだす。


 ――バチィッ!!

 黄色い光が瞬いた直後、空気が焼ける匂いが広がり、雷撃をまともに浴びたワイバーンが、悲鳴を上げながら雲海の中へと落ちていく。

 さらにユラは跳躍し、火球を吐くと雷と火が絡み合い、ワイバーンを二体まとめて弾き飛ばした。


「……幼獣の火力じゃねぇな、これ……」


 その時だった。


 すべてのワイバーンたちの視線が、ユラへ向いた――。


 俺と対峙していたヤツも、キヌに向けて咆哮していたヤツも。逃げ惑う船員を目で追っていたヤツらですら、全てのワイバーンの注意がユラへと注がれている。


「おいおい。なんだ、これ……」


 理由など、思いつくはずもなかった。

 だがあの視線は、まるで“探していた物を見つけた”ような……そんな執着の色を帯びていた。


「キュ……?」


 不安げに鳴くユラへ向け、複数体のワイバーンが我先にと突っ込む。が……、


「ウチの子を、驚かせないで」


 キヌの放った蒼炎がユラに襲い掛かる全てのワイバーンに着弾し、一瞬でその命を刈り取っていく。


 俺は空舞でワイバーンの群れに飛び込み、白鵺丸に魔力を流す。

 一瞬刃が震えるも、その後に感じる違和感はフワッと抜けていく。


「ユラが欲しいなら、(パパ)に挨拶するのが筋ってモンだろがぁっ!!!」


 船の周囲に留まるワイバーンを5体一気に斬り飛ばし、一度白鵺丸を納刀する。ここからは魔法で応戦する方が色々と守りやすい。

 キヌが炎で、ユラは雷撃で次々に襲い来るワイバーンを撃ち落とし続けていく。


 空が怒号で満ち、蒼炎と雷が飛空艇の周囲を爆ぜる。数が減ってからは突っ込んでくるワイバーンを順番に撃ち落とすだけ。

 ――戦いは、あっという間に終息した。

 残されたのは、焦げた匂いと、不自然な静寂だけ。


「……終わった?」


「探知スキルに引っかかる範囲にはもう居ねぇな」


「キュゥ……」


 ユラがキヌの腕の中で小さく震える。

 その姿はさっきまでの勇ましさとは違い、年相応の幼さを取り戻していた。


 よくよく考えれば、ユラにとってはコレが初めての実戦。にもかかわらず、明確に自身へと向けられる殺意と狂気に屈せず、その全てを跳ねのける姿には誇らしさすら覚える。


「怖かったな……、よく頑張った」


 ゆっくりと撫でると、ユラはキヌの胸に顔を押しつけながら尻尾を揺らした。

 船員たちは、まだ呆然と空を見上げている。


「……なんだろな、この感じ」


 胸のざわつきは、戦いが終わっても消えていない。

 白鵺丸の柄には、まだ僅かな違和感(ざらつき)が残っていた――。


どうも、インフルくらってフラフラの幸運ピエロです……

今年のマジで感染力ヤバいんで、気を付けてくださいねー!

そして、インフルのせいで今週執筆出来ておらず、一週休ませていただきます。汗

来週にはまた元気にヘドバン執筆したいと思いますので、応援よろしくお願いいたします★


次話は新年、1月2日(金)投稿予定です!

少し早いですが……皆様、良いお年を♪

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