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「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無双しようと思います~【書籍化&コミカライズ】  作者: 幸運ピエロ
第11章 修羅咲ク都 武京編

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第287話 名を得るもの


~???視点~



――終わりのない、闇があった。

 ここは自分と同じような曖昧な存在が、ただ流されていく。そんな場所。

 どれほど昔からここにいるのか、もう覚えてすらいない。


 自分という存在は、名も形もなく、永劫の流れに漂うだけだった。

 光も、音も、痛覚や触覚すらもない。

 ただ無限に溶けていく時間だけが、静かに……緩やかに……押し寄せていた。


 けれど、ある時――誰かの声が、その流れの底からボクを掬い上げてくれた。

 まるで、永い夜に差した一筋の陽光のように。


『星より出でて、星へと還る――その永劫の流れに捕らわれし巨獣。今こそ、数奇の運命から解き放たれよ』


 遠い、遠い響き。

 けれど確かに、ボクに届いた。


 ボクのために紡がれた言葉、ボクだけのために練り上げられた魔力。

 それはとても暖かく、やさしい声と力だった。


 その言葉に触れ、散り散りになっていた“自分”のかけらがゆっくりと集まってくる。

 意識が形を持ち始め、出来上がったばかりの胸の奥に鼓動を感じる。


(――誰かが、呼んでる)


 炎のように赤く、雷のようにまぶしい光。

 それが何なのかは分からない。けれど、心はぐっと引き寄せられた。

 不思議な温もりと、心地よい震えが、ボクを包む。



 やがて、闇は殻に変わった。

 黒い卵の中で、ボクは再び眠りに就く。

 ただ、これは永遠の眠りではない。

 外から流れ込むぬくもりが、眠りの奥を優しく揺さぶる。


(……あたたかい)


 そよ風のような声、笑いのような小さな震え。

 それぞれが、ボクの心をそっと形作っていく。


(この感じ……なんて言うんだろう? ……もしかして、“しあわせ”っていうのかな?)


 外の気配を感じる。

 チラチラと光が見えはじめる。

 音が近付いてくる。

 知らないはずなのに、懐かしい。

 まるで、ずっと探していた場所に戻ってきたようだ。


 殻の内側が熱を帯び、鼓動が強く胸を打つ。


(もっと、外へ――)


 バキリ、と音がして、時間が止まったかのように光が溢れ出す。

 その光がまぶしくて、少し目を細めた。

 炎が流れ、雷が弾け、初めての息が喉を抜ける。


(まぶしい……でも、きれい……)


 見上げた先に、二人。

 一人は内に雷を宿し、もう一人は心に炎を抱いていた。


(この人たちが……、ボクを呼んでくれたんだ)


 立ち上がろうとするけれど、足はまだ不安定。

 毛を揺らす柔らかな風。

 踏み出す度に足元から伝わる冷たさ。

 そして胸をくすぐる、ワクワクする匂い。

 まるで世界が生きているみたいだった。

 これから何が起こるのか……少し怖くて、でも知りたい気持ちが勝る。


 鼻先を伸ばすと、目の前の二人がそっと手を差し出してくれる。


(触れたらどうなるんだろう……、温かい? 痛い? でも、触れたい)


 雷の匂いと火のぬくもり。

 指先が頬に触れるたび、心がふわっと軽くなり不思議な感覚が穏やかに広がる。


(……パパと、ママ?)


「この子……私たちの魔力を知ってるみたい。名前、つけてあげないとね」


 言葉は分からないけれど、嬉しそうなのは伝わってきた。

 そして、少し間をおいて再びパパの手がボクに触れ――


「……お前の名前は――夕雷(ユラ)だ」


夕雷(ユラ)』という音が空気を震わせた瞬間、背中に電流のような震えが走り、全身の毛が逆立つ。

 鼓動が耳の奥まで響き、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。


(名、前……?)


 呼ばれた瞬間、ボクは自分の形が完成したのを感じた。


(そっか……。これが、“うまれる”ってことなんだ)


 パパもママも、ボクを見ながら目を細めて微笑む。

 それを見ると、心がポカポカと温かくなった。


「キュウッ!」


 自然と声が溢れ出る。

 体が小さく震え、心が跳ねる。


 ボクの物語は、ここから始まるのだ。



――ベヒーモス。

 かつて星を揺るがした巨獣は、いま小さな命としてこの地に立つ。

 【天災】と呼ばれるほどの力を内包しながらも、その心はただ一つの()を喜びとして抱いていた。

 両親の温もりを知ったその小さな胸の中は、未来への希望と、未知への好奇心が大きく膨らむ。


 そんな“小さな巨獣”が、やがて新たな災いと奇跡を呼ぶことを、今はまだ誰も知らない。


 


次話は11/28(金)投稿予定です♪

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― 新着の感想 ―
2週目を読み終わっていてもたってもいられなくなったので、感想失礼します。ユラの誕生と、これからの星覇メンバー各々の旅の道筋がどうなるのか楽しみなのとでワクワクします! 毎回ヘドバンかましながら読んでま…
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