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第258話 大規模解放戦③

 

 巨大街を抜けてしばらくすると、カルヴァドス連合の本陣の前まで辿り着く。あからさまに警戒している雰囲気とピリピリした緊張感が場を支配し、ボソボソと小声で話す声がそこかしこから聞こえてくるが、それでも俺達は歩みを止めない。


「アイツ等か……星覇ってのは」


「こんだけの人数で囲んじまえば、行けるんじゃねぇのか?」


「やめとけって、『獅子の塔の惨劇』知らねぇわけじゃねぇんだろ? それに、上からも手出しすんなって言われてるだろうが」


「チッ、俺達なんか眼中にねぇってツラしやがって……」


 一歩進むごとに綺麗に整列されていた陣形が乱れ、俺達を避けるように徐々に二つに割れていく。

 会話の内容からもこの場で俺達に攻撃を仕掛けるのは禁止されていると断定して良いだろう。


 そうして陣形の半分くらいまで進んだ時、反対側からも陣形を割る流れが生まれ、人の壁の間に一本の道が形成された。


 その先に見えたのは、2階層へとつながる階段の前で立ちふさがる一組のパーティー。中でも一番目を引くのは中央で腕組みをし仁王立ちする男だ。

 明らかにレアリティーの高そうな装備を身に纏い、その上からでも分かる程に鍛え上げられた巨大な体躯。歩みを進めるごとに少しずつ見えてくる古傷や細かな皺の数が、戦場に立ち続けている年月を容易に想像させ、歳を重ねて尚この男が全盛期であると感じさせるだけの雰囲気と覇気を持ち合わせている。


 ……コイツがカルヴァドスのクランマスター、ウィスロ最強(・・)と噂される【暴君】ガルシアか――。


「貴様が星覇の阿吽か……、なかなかに面白そうな男だな」


「そういうお前はガルシアで合ってるか? 随分強ぇらしいじゃねぇの」


「まぁ、それなりにはな。初めて顔を合わせて何だが……単刀直入に聞く、【星覇】としては今回の解放戦、参戦する気はないんだな?」


「あぁ。お前等が手出ししてこない限り……な?」


「ほぉ? 我らが手を出せば、容赦はしないと? この軍勢の前でよくぞ吠えたな」


「有象無象がいくら束になって来たって怖くねぇわ。お前等の人数が半数になるのに数分もかからねぇぞ? 何なら試してみるか?」


「試さずとも、こうして相対すれば貴様の言葉に迷いが無いのは分かる。だが、貴様らとて無事で済むとは思っていないだろう? そんな大口を叩けるのは、我らが手出ししないと高を括っているからか?」


「いや、別に俺達は“どっちでも構わねぇよ?”ってことだ。負ける気なんてサラサラねぇんだしな」


「……フッ、まぁ今は止めておこう。開戦前に大事な戦力を減らされたくないからな。それに、貴様らは全員が殺気を駄々洩れにしているにもかかわらず、妙にソレがコントロールされている。分かりやすく言えば“実力の底が見えない”。それが分かっただけでも、こちらとしては収穫だ」


 こうして会話をしている間も【鑑定眼】でガルシアのステータスを確認しようとしているが、何一つ情報が分からない。

 ニヤりと笑うガルシアをみると、高レアリティーの装飾品で鑑定を完全に妨害しているのだろう。そして、こちらが鑑定した事を気付かれたと……。底が知れないと言う点で言うならば、お互い様ってトコだ。


「用は終わりか? ならこのまま先に進ませてもらうぞ」


「攻略、奮励(ふんれい)するが良い。このダンジョンは一筋縄ではいかぬぞ?」


「言われるまでもねぇよ」


 ガルシア達の横を素通りし、そのまま2階層に続く階段を下る。


 あっさり通してくれたが、それはガルシアの言う通り大規模解放戦の前に戦力を削られたくなかったのだろう。

 “タイミングが良かった”とは考えたくはないが、カルヴァドスとしてもテキラナ連合は全力で迎え撃たねばならないと考えている程に相手を評価しているという裏返しでもある。


 それに、ガルシアの後ろに控えていた4人……恐らく【アンブロシア】というガルシア率いるカルヴァドスのトップパーティーのメンバーがいずれも相当な猛者揃いなのは事実。


(慢心はない……か)


 大規模解放戦の行く末が少し気になるが、それをリアルタイムで知る術は俺達には無い。結果は後からテキラナかキュルにでも聞くとして……、ここからは全ての力をダンジョン攻略に費やそう。

 二階層から先は、危険度が跳ね上がるのだろうからな。


次話は4/4(金)投稿予定です♪

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