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第247話 キュルの課題と上級攻略②

 

~キュルラリオ視点~


 四方から襲い来るキリングレオとレッドゴブリン、その数8体。

 恐らく、あの指笛を聞いた奴等が全て集まってきたのだろう。となると、この場から離れれば、またその周囲の魔物を呼ばれかねない……。


「コイツ等全員、殲滅するしかないって事ね……。フゥー、よし! 腹括った!!」


 ポジティブに考えれば、これは多対一で戦う事の恰好の訓練となる。

 というか、阿吽師匠はそれを見越してソロ攻略をさせていたのかもしれない。……いや、絶対にそうだ!

 それに、これだけの魔物を倒しきればレベルもっ! であるならば、ココで離脱石を使って逃げるなんて言語道断っ!!


「フォー―!! テンションぶち上ってきたぁぁ!!」


 脳内に分泌される快楽物質に身を委ねつつ、自然と身体が戦闘モードになる。

 恐怖心はない。冷静に周囲も観察できている。

 加えて心臓の高鳴りとともに、仮面の下で無意識に口角が上がっているのを自覚した。


 ただ、見つかってしまっている現状、ここから取れる選択肢はそれほど多くはない。


「といっても、この状況は【存在誤認】一択だけどね!」


 少し自分の立ち位置をずらしつつ、切り離した尻尾に【存在誤認】をかけ、通りすがりに騎乗しているレッドゴブリン目掛けてショートソードを突き立てる。そして、一瞬僕を見失って困惑しているキリングレオには【麻痺毒攻撃】を付与した尻尾を【遠隔操作】で操り首元にぶち込んだ。


「思考と身体が完全一致するこの感覚っ! 気っ持ち良いぃぃーーー!!」


 トドメは刺せていないが、これでまず2匹は無力化した。あとは麻痺と毒がHPを削り切ってくれる。

 次は……と周囲を見渡そうとすると、ヒューっという風切り音が聞こえ、直後左足に激痛が走る。


「ぐっ……」


 目だけで確認すると、太ももに矢が刺さり貫通していた。


(危なかった。これが胴体や頭だったら……)


 そこまで考えて少し冷静になれた。戦闘の快感に身を委ね過ぎては視野が狭まる。没頭しながらも視野は広く、冷静にならなければ……。

 それに出し惜しみなんかしていたら、何も得られず撤退する事になる。今は後の事を考えず、最高のパフォーマンスをし続ける!


「【外柔内剛】、【舞踊刃尾《ダンシング テイル ブレイド》】」


 迫ってくる3ペア6体の魔物の動きに注意しながら自己強化スキルである外柔内剛でSTR(筋力)VIT(耐久)DEX(器用)INT(知力)を1.8倍とする。AGI(敏捷)は基礎値の30%減少してしまうが、敵を一体でも減らすために攻撃力の底上げが最優先。


 加えて【舞踊刃尾《ダンシング テイル ブレイド》】で【高速再生】と尻尾の切断を繰り返し、弾数を6に増やす。それらすべてに【毒攻撃】と【麻痺毒攻撃】を付与しつつ高速回転させると、MPがゴリゴリ減っていく感覚に襲われる。


「ハァ……ハァ……、MPの消費えっぐぅぅ」


 この技巧(アーツ)は一連の多重連結したスキルを超高速で発動し、遠隔操作で切断した全ての尾を同時操作できるようにするものだが、その反動として消費HP・MP量は通常発動時の1.5倍となる。

 MP消費が僕の欠点(ウィークポイント)なのは分かっているため、ポーション類はかなり多めにマジックバッグに詰め込んではあるが、まさか一階層でこれだけピンチになるとは思っていなかった……。

 だが、起きてしまった事を後悔し反省するのは全てが終わってから。


「コイツ等は全部まとめて経験値に変えてやる!!」


 僕の意思に反応し、四方に飛んで行く尻尾。

 まずは相手の移動速度を落とすために、足となっているキリングレオを中心に狙う。


 キリングレオだけであれば、中・遠距離のレンジで僕に分がある。

 乱舞する6つの尻尾が攻撃を避けようとする3体のキリングレオを執拗に猛追し、数秒とかからず命中する。すると見るからに動きの機敏さが落ち、麻痺と毒の状態異常を与えているのが分かった。攻撃面は同時三方向でも問題なく、状態異常の発動率も申し分ない。

 師匠たちに弟子入りする以前は、こんな芸当できなかった。前より成長出来ている自分に少しホッとするが、左足の痛みで再び我に返る。

 それが功を奏した。


「ギュルエェエ!」


 短い咆哮と共に、死角からレッドゴブリンが飛び掛かってくるのに気が付く。

 それだけでなく、その後方からも別のレッドゴブリンの持つボウガンが僕に狙いを定めていた。

 背後からの同時攻撃。注意はしていたが、戦闘中の小さな成功で悦に入り、集中力が一瞬途切れて移動し続ける全ての敵を視野に入れ続けられなかった。こうなると、状況把握を補完するための予測もまだまだ練度が足りていない。


「やばっ!」


 咄嗟に取った行動は【形態変化】で両腕を硬化しての防御。

 ……しかし、そこで違和感に気付く。


(残り一体、レッドゴブリンの姿が見えない……)


「ギャギャィ!」


 スローモーションに見える世界の中、キリングレオのでかい図体に隠れていた残り一体のレッドゴブリンが短剣を持って飛び出してくるのが見えた。

 3体同時の攻撃……。しかもこのタイミング、この角度。ガードが間に合わない……。


 どこかを犠牲にするしかないか? でも硬化していない部分で受けるのは愚策……。


(くっそ! 諦めてたまるかっ!!)


 両腕にかけた硬化の形体変化を薄く強靭な膜で全身を覆うようなイメージに変える。失敗すればボウガンやショートソードも全て生身で受けてしまうが、不思議とそんなマイナスな想像は思考の外に追いやる事ができた。


――そんな中、ふと湧き上がってくる全能感。

 状態異常を与えていたキリングレオや、最初に襲ってきたレッドゴブリンたちが毒の状態異常で息絶えたようだ。一気にBランク5体分の経験値が入り、レベルが上がる感覚……。それが、レッドゴブリンの刃が届く直前このタイミングで起きた。


 そして数瞬後、身体の中から何かが弾けたような気がした。


――キィィィーーン!


「ギャイ!?」


 討ち取ったと思ったレッドゴブリン達が驚愕の声を上げる。

 だが、そんな事に構っている暇はない。

 奇跡的にだが何故か防御が成功した今、無防備になったこのタイミングでレッドゴブリン達を仕留め切るのが今できる最善策。

 散らばっている尻尾の位置を再確認し、それらすべてを操作。

 さらに、レッドゴブリンの背後から迫る尻尾に気付かれないよう、ブラフとして僕は攻撃モーションに入る。


「グゥブッ……」

「ギュエェ!?」

「ゴブッァ……」


 3体のレッドゴブリン全てに背後から尻尾が命中し、腹部に大きな風穴を開けた。

 地面に広がる赤黒い血だまりの中にバタっと倒れ込むレッドゴブリンを視界に捕らえつつ周囲の状況を改めて目視で把握する。


(レッドゴブリン4体、キリングレオ4体、全て……倒しきれた)


 それを再確認すると、内から湧き上がってくる感情が爆発した。


「っしゃ、オラァアぁぁぁーーーー!!!!」

 


あけまして、おめでとうございます★

本年もテンション爆上げで執筆していくので、お付き合いよろしくお願いいたします!

また、コミックのサイトがリニューアルされたので、URLを添付させていただきます♪

(https://comicpash.jp/)

漫画の方も応援いただけたら、めちゃくちゃ嬉しいです★


次話は1/17(金)投稿予定です♪

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明けましておめでとうございます\(^o^)/
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