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「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無双しようと思います~【書籍化&コミカライズ】  作者: 幸運ピエロ
第10章 巨大迷宮都市ウィスロ編

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第246話 キュルの課題と上級攻略①

 

 ~キュルラリオ視点~


「全身に感じる不穏な空気、激しく鼓動する心臓……、つい先日の事なのに久しぶりの感覚だなー」


 上級【獅子の塔】。死の匂い漂うダンジョンに、またもやソロで来てしまった。

 でも、以前と今回とでは明確に違うことがある。


 5人の優しくも厳しい師匠たちに師事し、文字通り死と隣り合わせの訓練を毎日こなしてきた。それは、確かな自信に繋がっている。それだけではなく、ソロでの立ち回りや自分の得意な事や苦手な事を見つめ直し、不利になる状況を徹底的に避ける手段も身に付けた。


「それに、阿吽師匠たちに師事し始めて初めて分かった事もたくさんある」


 阿吽師匠が僕をソロでダンジョンへ潜らせる意味。

 それは、リスクと引き換えに得られる莫大な経験なのだろう。レベルを上げるための経験値だけ見てもパーティーでの戦闘よりソロでの戦闘の方が圧倒的に多い。それに、新たなスキル取得やスキルレベルの上昇は、試行回数に比例することは今までの経験から理解してきた。


 師匠たちと話していて分かったのは、僕の成長速度の“異常性”。自分だけでは必死過ぎて考えが及んでいなかったが、師匠たちから見てもレベルやスキルレベルの上がり方は異常な程だという。それを聞いた時、誇らしく思えただけでなく未来への希望が持てた気がした。


 師匠たちは良くも悪くも嘘をつかない。

 ダメな部分はダメだと指摘されるし、良い部分は全力で褒めてくれる。最初は僕が言い出した我侭だったが、嫌な顔一つせずに僕のために時間を作って指導して下さる。


 ならば、僕ができる恩返しは一つしかない。

 師匠たちの期待に応える事、そして期待以上の驚きを与え結果で示す事だ。


 今の僕は何もかもが足りていないのも自覚している。それは最上級の塔への入場資格を得る事だけでなく、レベルやステータス、魔法・スキルの技術や熟練度、戦略的思考全てだ。だからこそ師匠は僕に“ソロで”の上級踏破を課題として提示したのだろう。


 実は最上級への入場資格を得るためだけなら、別の手段もある。

 これはカルヴァドスだけでなくテキラナも行っているが、既に上級ダンジョンを攻略済み高レベルパーティーに同行し、上級までの攻略を済ませる方法だ。

 “ブースティング”や“キャリー”と呼ばれ、『推奨しない』と冒険者ギルドは定義しているが、禁止されている行為ではない。

 当然のことながら、最上級の塔へと入場できる者を増やせば、狩場独占のために割く人材が増え戦略の幅も広がる。テキラナにしても、現状の独占を打破するためには少しでも人材は多い方が良い。


 もちろん、“上級の塔”と呼ばれている通り、この獅子の塔を踏破したものは、冒険者がひしめき合うウィスロでもかなり上位の者たちだ。

 だが、その上位の中でも実力の差は天と地ほどに分かれている。


 今回僕が師匠から仰せつかったのは“切り札”となる事。それはどんな意味なのかは理解しきれていないが、少なくとも『格下を大量に対処するだけ』というわけがない。


「もう一つ二つ壁を越える必要があるって事ですね。そして、この上級ダンジョンを攻略した暁には、自然とソレを身に付ける事ができていると……」


 とは言っても、死神の鎌が首にかかっている状況は何一つ変わらず、何か一つ間違えば命を落とすことになる。まずは、1階層で魔物の特徴や攻撃パターンを見抜き、慎重かつ大胆に攻略を進めていこう。


「っと、さっそくお出ましですか」


 身を屈め、できる限り気配を消しながら周囲を警戒していると、Bランク下位の『キリングレオ』に『レッドゴブリン』が騎乗し徘徊しているのを見つけた。


(まだ気付かれていない今のうちに準備を整え、一気に倒しきる)


 【尻尾切断】と【高速再生】を行い、【形態変化】と【毒攻撃】・【麻痺毒攻撃】を付与。極力殺気は抑えつつ隙を伺う。

 すると、キリングレオがスンスンと鼻をひくつかせ、こちらの方に顔を向けた。


(まずいっ!)


 僕目掛けて一直線に走ってくるキリングレオとそれに騎乗したレッドゴブリン。殺気や気配は消せたが匂いまでは完全に遮断できない今、敵を発見してまず行うべきは風向きを見極め風上から移動するべきであった。

 だが、もうこうなってしまっては遅い。

 立ち上がり迎撃態勢を取りつつ、準備してあった尻尾を高速回転させて死角からキリングレオに向けて放つ。


 炎狼と違い、直線的に突進してくるだけなら対処は問題ない。まずは冷静にキリングレオを仕留め切る事だけ考えていると、レッドゴブリンがキリングレオの背から跳び上がり、ボウガンでの攻撃を仕掛けてきた。


「阿吽師匠の雷槍と比べたら、これくらいおもちゃみたいなモンですっ!」


 攻撃を避けながらも尻尾のコントロールは怠らない。キリングレオの横っ腹に高速回転した尻尾が突き刺さり、麻痺と毒の状態異常を与える。


(こうなれば、あとはレッドゴブリンとのタイマンだ。ゆっくりと対処すれば問題な……っ!?)


――ピィィーーーーッ!!


 笛のような音の鳴る方へ目を向けると、レッドゴブリンが指を咥え指笛を鳴らしていた。

 初撃で戦況がこちらに有利に動き、相手との実力差も把握できたことで油断してしまった。この指笛は十中八九、増援を呼ぶためのもの……。今になって思えば真っ先に対処すべきはキリングレオではなく、レッドゴブリンの方だったわけだ。


「くそっ!」


 すぐに再び気配を消しレッドゴブリンの背後へと移動、手に持ったショートソードで背中に刃を突き立てる。

 間髪入れずキリングレオへと向き直り、尻尾を再び遠隔操作して追撃を与え両者を始末するが、その頃には四方からキリングレオとレッドゴブリンがこちらに向けて走ってきているのが確認できた。

 その数、4ペア合計8体……。


「はぁ……、最悪だ……」




年の瀬ですねぇ★

年末年始がかなりバタバタしており、次話は1/10(金)の投稿となりそうです(汗)

今年一年たくさんの応援本当にありがとうございました♪

来年も楽しんで頂けるようにハイテンションで突っ走るんで、応援よろしくお願いいたします♪

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