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第235話 上級【獅子の塔】

 

~阿吽視点~


「さてと、んじゃ久しぶりのダンジョン探索にいくかー!」


 キュルラリオの修行のため、1カ月はダンジョン探索を中止していたが、それも今日から再開だ。

 初級【蛇の塔】と中級【狼の塔】はソロでも攻略できる程度には歯ごたえの無い難易度だったが、ここから先の上級【獅子の塔】と最上級【竜の塔】はそうもいかないだろう。

 トラップも上級以降はかなり危険度も上がるという情報もあるし、気をつけつつ攻略に臨まなければならない。

 加えて、【獅子の塔】は中級までと違い全40階層もある。それを上回る難易度の最上級となると、【竜の塔】は50階層を確実に越えるらしい。もしかしたら60階層以上の可能性まで考えられる。そうなると時間も相応にかかってしまうわけだ。


「兄貴、上級以上のダンジョンでは狩場独占があるってハイルが言ってたじゃないっすか? もし、そいつらと遭遇したらどうすれば良いっすかね?」


「あー、そういえば上級からは狩場独占もあるのか……。んー、邪魔してくるなら容赦なく叩き潰していいぞ。俺達の行く手を阻む奴等は全員敵だ。」


「了解っす! わかりやすくていいっすね!」


「まぁ、あとはそいつらと出くわした時に考えれば良いだろー」


「阿吽、暗殺クランも同様で良いか? 見つけ次第、私が処理して回っても良いが……」


「確かにネルフィーの索敵なら相手より先に見つける事は出来るだろうな。それも最初は攻撃の意思があった場合迎撃する事としておこうか。鬱陶しかったら見つけ次第殺して回ってもいいが……でも、それをやっちゃうとなー」


「ん。阿吽やっぱり優しい。今、キュルの成長の機会を奪わないようにって考えたでしょ?」


「バレたか……。キヌには隠し事できねぇな」


 全部俺達がぶちのめして回れば手っ取り早いが、それじゃあもし【テキラナ】が序列争いで勝ったとしてもその後が続かない。それに、キュルラリオが成長できる絶好の実践の場(チャンス)をみすみす潰すのももったいない気もする。まぁ、それも相手の出方次第でいいか!


「とりあえず、俺達の邪魔をする奴らは全員敵認定で構わない。それを続けていけばそのうち俺達には手を出してこなくなるだろ。【カルヴァドス】からしても俺達を敵に回すより、放置しておけばその分自陣の被害は減る。それにたった5人で最上級のスルトみたいなボスを突破できるとも思われないはずだ」


「承知した。なら見つけ次第皆には念話で敵の位置を教えるにとどめる」


「だな! なら、上級ダンジョンの攻略開始するか!」


 上級の塔の入口にある魔法陣に触れると景色が一瞬で変わり、荒野が広がるダンジョン内に転移された。

 【獅子の塔】からは迷路型のフロアだけでなく、プレンヌヴェルトにも作ったような平原、荒野、砂漠、雪山、火山地帯などの地形型のフロアとなる。

 これはパーティーでの戦闘がしやすくなる反面、四方八方に注意を向ける必要も出てくるし地形の把握にも時間がかかってしまう。ウィスロの街に地図は売っているが、上級以上となるとかなり高額になるし、それが正確かもわからない。情報を隠しておきたい上位クランとしては大事なところは敢えて書き記さないだろうとも考えられるとどうしても購入する気にはなれなれなかった。


「っと、さっそく魔物のお出ましだ!」


 こちらに向かって走ってくる魔物が4体。獅子の塔と呼ばれる所以でもあるBランク下位の『キリングレオ』や『レッドゴブリン』だ。

 このレッドゴブリンはキリングレオと共闘するだけでなく、時々キリングレオに騎乗までして攻撃を仕掛けてくる。もちろん人型に近い魔物の特徴である武器や防具の装備もされており、個体によって遠距離攻撃の手段も持ち合わせている。

 今向かってきているのもキリングレオに騎乗した2ペアのキリングレオとレッドゴブリンだった。

 それを確認すると、前衛のシンクとドレイクが迎撃のために走り出す。


「この程度の敵、阿吽様やキヌ様のお手を煩わせるほどでもありません」


「そっすね! それに肩慣らしにはちょうど良いっす!」


 俺の斜め後方からネルフィーの放った一本の魔法矢が、スピードに乗りだした二人の合間を縫って追い越し、ボウガンを持っていたレッドゴブリンの腹部に突き刺さると、それを皮切りに戦闘が開始される。

 シンクに向かって突進し鋭い爪を付きつけようとしてきたキリングレオは盾で弾かれ、巨斧型に怒簾虎威(どすこい)を変形させたシンクに空中で一刀両断される。

 それと同時、後ろから走ってきたドレイクがシンクを追い越すと、キリングレオに騎乗しているレッドゴブリンもろとも赤鬼の金棒で背骨を叩き折る。

 最初に矢が命中し地面へと落とされたレッドゴブリンへ目を向けると、いつの間にかその身体に5本の魔法矢が刺さり既に絶命していた。


 久しぶりのパーティーでの戦闘だが、連携や標的とする魔物の選択、さらには互いの位置が邪魔にならないようにする配慮など、完璧とも言える立ち回りを見せつけられると、もうしばらくは俺やキヌの出番はないかもしれないと苦笑いすら自然と出てくる。

 レベル上げの事を考えると俺達も戦闘に参加させて欲しいんだけどなぁ……。


 そんなこんなで道中出くわした不運な魔物全てを経験値に変えながら1日かけて9階層まで猛進し、さらに数時間が経過してそろそろ休憩を挟もうかという頃、周囲の様子を見に行っていたネルフィーから念話が入ってきた。


≪そこから11時の方向に見える塔の前に冒険者が10人ほど集まっている。恐らく【カルヴァドス】陣営の行っている狩場独占というやつだろう≫


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