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第193話 ブライドとの再戦⑤


「行くぞ、ブライドっ!!」


「俺が死ぬ前に、貴様だけは殺してやる!」


 ほぼ同時に放たれた雷槍とフレイムランスが二人の中央部分で衝突し弾け飛ぶ。まだ初手の様子見のような魔法だが、INT(知力)の値が300近い両者の魔法がぶつかり合うことで、周囲の空気が震え、爆風が髪を激しく揺らした。

 その間にも俺は赤鬼の金棒をマジックバッグへと収納し、代わりに白鵺丸を取り出す。

 赤鬼の金棒は武具を破壊することに長けていたが、俺は棒術のスキルは持っておらず、刀術は『Lv.6』という高いスキルレベルとなっている。それは、これまでに使ってきた期間の違いもあるのだろうが、本質的に俺の戦い方が太刀という種類の武器と相性が良いというのもあるのだろう。それに、ここからはブライドを本気で仕留めに行くとなればやはり使い慣れた白鵺丸を使った方が良い。


 白鵺丸を腰部に装備しつつ、視線はブライドの動きに集中させる。

 すると、黒い翼を羽ばたかせながら逆風の中でも一直線に俺へと近付きながら右腕と一体化している魔剣オルグヌスに更なる魔力を込めているのが分かった。

 MPの消耗など毛ほども考えていないような選択……、10分間という時間をフルに使って勝負をする気などサラサラないのだろう。だからこそ嬉しくなる。


 左腰に装備した白鵺丸の柄を軽く持ち、ブライドが魔剣オルグヌスを振り下ろすよりも速く抜刀。


――キィィィーーン!!


 しかし直後に響いたのは、互いの武器が衝突した金属音。続いて腹部に衝撃が走り、俺の呼吸が一瞬止まる。

 

 ブライドの剣速が俺の予測を越えてきた。それだけではなく、ブライドは弾かれた反動を利用して身体をクルっと半回転させ、回し蹴りを打ち込んできやがった。ブライドの狙いは最初からコレだったのだろう。一連の動きに(よど)みがない。さらに、一瞬の隙を逃さず至近距離で火球を放ってくる。


――ドッゴーーーーン!!


「くっそ……マジで痛てぇな!」


 あっぶねぇ……。それなりにダメージを負っちまったが、ギリギリガードが間に合い攻撃型魔法障壁で何とかダメージを軽減できた。


「あのタイミングからでも防御するのか……焼き尽くすつもりで放ったんだがな。だが、これならどうだ!」


 同時展開された複数のフレイムランス、ざっと数えて30は下らない。マジでMPの消費ガン無視で攻撃してきやがる。

 だが、キヌでもないんだし、ブライドがその数のフレイムランスを扱えるとは――


「チッ! そういうことか……。その魔剣、厄介だな!」


 さっきまで魔法を放つときは左手をかざして発動していた。だが、今は魔剣に浸食された右手を指揮棒のようにユラユラと振りながら発動した。あの魔剣は近接攻撃に加えて魔法補助を兼ね備えるような能力を持ち合わせているのだろう。


 振り下ろされた魔剣オルグヌスに従うように、一斉に展開されたフレイムランスが俺を目掛けて飛んでくる。


「くたばれ阿吽っ!!!」


「上等だ!! 防ぎきってやんよ、コノヤロウ!!」


 魔法障壁を張り直しつつ、()えて前に出る事で着弾位置を少しでもズラす。そして、直撃しそうなものに絞って白鵺丸を振り続け、なんとかダメージを最小限に留めるように立ち回る。

 腕や足に数本フレイムランスを受けてしまうが、障壁でダメージの軽減もできている。頬を掠めたフレイムランスが背後に着弾し、その熱を背中に感じるも集中は途切れさせない。そうして長い数秒が終わりを告げ、フレイムランスの雨を防ぎきる事ができた。


 チラッと俺の背後を確認し大惨事になっているのを見て、俺の選択は間違ってはいなかったと確信する。

 もしあの場で受けきるか、チキって後方へと飛び退いていたら、今よりも確実にダメージは負ってしまっていただろう。


 この程度のダメージで抑えられているのは、俺が着ている伝説級防具の【茨木童子和装】のお陰もある。単純な防御力はもちろんのこと、コイツには自動修復機能が装備性能として付いている。所々が焼けて穴開きになってしまっているが、装備の破損をある程度気にせず戦えるのも俺の一つの強みだ。


 ただ、今の攻撃でHPは4割ほど削られており、さすがに何回もこんな攻撃を受けられはしない。なら尚の事、攻めに転じるべきだ。それにブライドが知らない手札を俺はまだ持っている。それを温存しておく意味はもう無い。


「阿吽……やはり貴様は強敵だ。今まで出会ってきたどいつよりも強い。不服だが、認めるしかない。……だが、俺は負けない。俺の命が尽きるその前に、確実に貴様の命を刈り取ってやる!」


「お前の性根は魔人化をしても変わらねぇな。確実性を重視し過ぎて勝負所を見誤ってんぞ。それに、調子に乗って喋っている場合か? お前は今、俺を殺せる最後のチャンスをみすみす棒に振ったんだ」


「フッ、抜かせ! 戦況は俺の有利に変わりはない!」


 ブライドは翼で羽ばたきながらフワリと空へ舞い上がる。優位に立ち回れる空中で次の攻撃の準備ってところか。

 そっちがその気なら、逆に地面に引きずり下ろしてやる。

 いつまでもお前が先手を取れると思うなよ!


次話は11/24(金)投稿予定です♪

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