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第160話 幻影城第五階層


 第五階層に転移すると、そこは何の変哲もない石造りの部屋だった。

 ダンジョンで階層を新たに作成した際、何も手を付けていないとこのような部屋となる。そこではキヌとウルスが座り込んで話をしていた。


「よぉ、キヌたちはまだ何も手を付けてないのか?」


「ん。待ってた、阿吽。相談したい」


「まだ決めきれていない感じか?」


「あんまりいい案が思い浮かばない。やりたいことはいっぱいあるけど、なんか全部違う気がしてる……」


「そっか、ウルスからは何か提案とかないのか?」


「ウチは、キヌちゃんのサポートなの。ウチの意見を最初から出すのは違うの」


「まぁそうだわな。俺もキヌがやりたいようにフロアを作って欲しいと思ってるし、ウルスの言っていることは間違っていない」


 うーん。どうしたもんかな……、色々考えていたみたいだけど、キヌの中でそれらの案は“違う”と結論が出ている感じだ。でもまずはキヌの考えていた事を聞いてみるか。


「キヌのやりたいことってどんな感じだったんだ?」


「ダンジョンフロアに幻術をかけて同じ順路をループさせたり、遠距離魔法の得意な魔物をいっぱい配置して一方的に攻撃をしたり、それを組み合わせてみようかとも考えた」


「んん? 悪くないコンセプトだと思うぞ。幻術に対抗できる策がなければ、絶対突破されないフロアになりそうじゃね?」


「うん。一般的なダンジョンの高層階であればいいと思う。でも、()()()()()()のコンセプトではないと思う。ウルスにも聞いてみたけど、幻術を無効化できる魔導具もあるみたいだし」


「そうなのか?」


「多くは出回っていないアイテムだけど、一定数は確実に存在するの。ウチも昔、アルラインのボス部屋突破の報酬で出たのを確認してるの」


 確かにその魔導具があればこのフロアはただイタズラに遠距離から魔法を撃ち続ける敵が存在するだけのフロアになってしまう。キヌは『最難関ダンジョンの最高層一歩手前のフロア』として考えると難易度は低いと考えたのだろう。


「キヌのアイデア自体はすごくいいと思う。だから、それはプレンヌヴェルトダンジョンで使わせてもらうよ」


「ん。でもどうしようかな……この際、全部1体の魔物にポイント使い切っちゃう?」


「うーん……うん?」


 少し投げやりに言われたキヌの言葉……。実はすごく良い案なんじゃないか?

 魔物を召喚するにはランクに応じてある程度必要なポイントが決まっている。ただ、今回に関しては渡したダンジョンポイントの量ではSSランクの中〜上位を1体召喚するのが精一杯だが、ヤオウがもう一体増えると考えれば相当な強化にはつながる。しかし、それでは4階層であるクエレブレとヤオウペアのフロアの方が圧倒的に攻略難易度は高いだろう。

 ではどうするのが良いか、()()()()を変えてしまえばいい。


「今までやったことなかったけど……ランダム召喚やってみるか?」


「ランダム召喚?」


「あぁ。使ったダンジョンポイント以上に高ランクの魔物が出現する可能性もあるが、下手するとランクが低い魔物が出現しちまう召喚方法だ。まぁ言っちまえば博打(ばくち)だな」


「ん! それ、面白そう」


「ただ、あんまり詳しいことは俺も分からないんだよな……。ウルス、詳しい説明頼んでいいか?」


「了解なの! まず、ランダム召喚は今阿吽が説明したので大体合ってるの。付け加えるとしたら、レベルをいくつで召喚するか、使うダンジョンポイントは何ポイントかで高ランクが出現する確率が変わるの」


「ふむ。要するに、召喚時のレベルを低く設定すれば育てるのは大変だが高ランクの魔物が出現する可能性が上がり、レベルを高く設定すれば即戦力にはなるが低ランクの魔物が出現する可能性が上がるということか?」


「その通りなの。あとは召還する者の幸運値も関係はするけど……キヌちゃんの幸運値は平均的だからそこはあまり考えなくていいの」


「じゃあ、阿吽が召喚して。阿吽は他の人より幸運値が高いから」


「ちなみに阿吽の幸運値はいくつなの?」


「俺か? 35だけど?」


「ふぇ? ええぇぇぇぇ!?」


「どうしたんだ? 確かに皆よりは高いけど、そんな驚くことでもないだろ?」


「そんなことないのっ!! 幸運値が30を超える生物(・・)なんかウチは知らないの!! というか、アルスやイルスは驚かなかったの!?」


「うん? あー。そういえば、あいつらには俺のステータス見せたことなかったような……まぁ、俺の場合ステータスなんかどんどん変わっていくしな」


「はぁ……、分かったの。じゃあウチから幸運値については教えておくの! まず————」


 ウルスから聞いた幸運値の概要をまとめるとこんな感じだ。

 まず、幸運値はその生物が生まれてくるタイミングで決まり、ほぼすべての人間や魔物は変動することなくその生涯を終えるらしい。ただ、極まれに幸運値が変化する者もいるそうだ。

 俺の場合、人間だった時の幸運値は「10」だったが、ゾンビとして生まれ変わってからは「35」となっている。ちなみに全生物の幸運値の平均は「11〜15」であり、「10以下」は相当運が悪く、何をやっても裏目に出てしまうようなタイプ。「15〜20」は強運、「20〜25」は豪運と言われ、冒険者であれば宝箱からレアリティーの高いアイテムが得られたり、商売をするものであればたまたま大量に仕入れた食料が数日後に急な価格高騰が起きて巨万の富を得られるなどの事が人生で複数回起きるような感じらしい。


 それを踏まえてウルスは「30を超える幸運値を持つ生物を知らない」と言っていた。たしかに、言われてみれば俺は人間の時はあまり運が良い方ではなかった。だが、ゾンビになってから半年くらいの間にレアリティー赤の武具を複数個と、紫の防具一式がダンジョンの宝箱から出ている。これは明らかに異常なことだ。


 俺がなぜ死んでゾンビとなったのか。自我や記憶が人間の時から保たれたままなのかは謎だったが、もうひとつ新たな謎が浮上してきてしまったな……。まぁ、『幸運値が異様に高くなった謎』は今後悪い方に転びそうにも無いし“ラッキー”くらいに考えておこう!


「そっか、とりあえず理解した。ってことは今回ランダム召喚をするなら、幸運値が異様に高い俺がすれば、ランクの高い魔物が生まれてくる可能性も相応に高くなるって事だよな?」


「なの。でも、あくまで可能性が上がるってだけだから過信はしちゃダメなの!」


「うーん、キヌどう思う?」


「ん。私はランダム召喚を阿吽にして欲しい。その結果召喚された魔物がどんなに弱い魔物でも頑張って育てて強くする」


「……よし、わかった! なら、ランダム召喚やってみっか!!」


ギリギリ間に合ったぁぁ!!

次話は3/31(金)投稿予定です♪

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