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第151話 フォレノワールダンジョンの問題点


 イブルディア帝国から帰国した数日後、情報共有のためにクランの中核メンバーにはコアルームに集まってもらった。

 この場に居るメンバーは黒の霹靂に加え、アルスたちコア組とバルバル、そしてクエレブレだ。


 ここまではイブルディア帝国で起きていた事や、魔族の派閥である『サタナス』と『鬼目衆』についての話があがった。話し合いの結果、アストルエやブラキルズの言っていた内容に差異が無いことから、おおよそ真実であると仮定しておく。まぁ正確な話はゾアがいずれ会いに来るようなことをキヌ達に伝えていた為、その時にでも詳しい話を聞いてみることになるのだろう。最悪の場合は戦闘になってしまうだろうが……、それについても今は情報が少ないため保留となっている。

 なので鬼目衆については一旦置いておくが、様々な懸念があるのはサタナスだ。特に重要なことは5年後に魔王が復活するため、その際に世界的に大きな戦禍が訪れる可能性が高いという事と、その5年間の間にも今回のような事件が起きる可能性があるという事。


 ただ、これらに関して俺達は積極的に動くことは()()()という結論に達した。

 理由としては、サタナスが今後どこで何をするか予測がつかず、また魔大陸に拠点があると考えると現状での移動手段が飛空艇で飛んで行くか、海を大型船で渡る方法に限られるためだ。飛空艇ついては、燃料となる魔鉱石の問題や安全性を考えると8割方失敗するだろう。海路に至っては、魔大陸に渡れたという記録がないためもっと危険性は上がる。

 それならば、いっそのことルザルクのような各国の首脳陣に対策を考えてもらい、必要な時に救援要請や情報提供をしてもらう程度に考えておいた方がいい。


 だが、黙ってこの5年間を過ごす気もない。それだけの期間があれば俺達の武力も大きく成長する見込みがある事やダンジョンの機能を使えば防衛機構の構築なんかも十分可能だろう。


「まぁこっちはこんなもんかな。バルバルからは何かあるか?」


「私からはプレンヌヴェルトの開発の進捗くらいですね。建築関係は王都からの移民を全面的に受け入れた事で、国がプレンヌヴェルトの発展を大々的に支援してくれており、そのお陰で予定の倍の速度で開発が進んでいます。

 ただ、街全体の完成予想サイズはレクリアの2倍近い領土になりそうなので、全てが形になるのは早くても2〜3年後かと。今は将来宿屋として使用する建物を最優先に建築し終えたので、移民全員が何とか寝泊まりができる場所の確保を済ませた段階です。

 ここからは魅力的な街を計画的に作れるよう、区画ごとに特色を出していくための会議と並行して外壁工事と街路整備を進めていきます」


「順調そうで何よりだな。……ってか、ちゃんと休めてるか? 顔が相当疲れてるだけじゃなくて、その……【高速演算】とか【並列処理】なんていうスキルがバルバルのステータスにあるんだが……」


「そりゃ数か月休みナシで仕事し続けてたらスキルも生えますよ……。でも一番大変な時期は過ぎたと思うので、ここからはちょっと楽にはなりそうです。おおよそ急がなきゃいけないことは済みましたから。明日から2日間はゆっくり休みます」


「そ、そうしてくれ。いろいろありがとうな」


「良いんですよ。でも時間ができたら私もやりたいことをやらせてもらいますからね!」


「もちろんだ。ちょっとバルバルには負担かけ過ぎたからな。欲しいものとかあったら言ってくれ。国からの褒美もあることだしな」


「んー、今はまだいいです。その時になったらまた言いますね!」


 さすがにバルバルに負担掛け過ぎてたな……。スキルを獲得するくらい仕事し続けるって相当だと思う。かといって、ここまで開発が進んでいたら今更俺達で助けれることもないだろうし……。

 せめて何かご褒美でもあげなきゃと思うのは自然なことだと思う。


「んじゃ、次はコア組からだな。一応俺は報告を受けてるけど、皆にも知っておいてもらいたい事がある。ってことでアルスから頼んだ」


「うむ。これはすぐに問題となる感じではなく、ゆくゆく解決しなければならない課題じゃな。

 フォレノワールの入口を閉じてから数か月経つのじゃが、どうもフォレノワール周辺から吸収できる魔素の総量が落ちてきておる。このまま入口を閉じ続けていたら何かしらの大きな問題となりそうなのじゃ」


「あれ? それってダンジョンポイントを使っていれば問題ないと言ってませんでしたか?」


「うむ。最初はそうじゃった。だが実際、徐々に吸収量が減っていっておるのは事実じゃ。やはり今後はフォレノワールも入口を開ける必要がありそうという話じゃよ。ただ、今の減少ペースを考えるとあと半年くらいは問題なさそうではあるのじゃがな」


 これはイブルディアから帰ってきた次の日に俺だけには報告されていた事だ。

 ここ数カ月間、魔素の吸収量を毎日計測してもらっていたが、そのデータを見てみると入口を閉じてから2カ月を過ぎた頃より明らかな減少に転じていた。

 ダンジョンポイントを使った後には一時的に回復しているが、長期的に見て何かしらの対策をしなければフォレノワールがどうなってしまうのかは想像がつかない。

 ただ、現状はプレンヌヴェルトダンジョンからの収入の方が圧倒的に高いのと相当量の貯蓄があるため、現時点で対策を考え実行できれば良いという話だ。


「まぁ、そういうことなんだよ。って事で、今後のフォレノワールの方針をここ数日俺なりに考えてみたんだが、ちょっと大掛かりなことになるから全員の協力が必要不可欠なんだ」


「うむ。では、ここからの話は阿吽に任せるとしようかのぉ」


 隣にいるアルスはもうニヤニヤしてしまっているが、まぁその気持ちはわかる。

 他の皆も()()と言われているにもかかわらず俺達のワクワクした雰囲気が伝わっているのだろう、不安そうな表情の者はいない。


「まぁ、問題の解決は簡単だ。入口を開けちまえばいい」


「それだとフォレノワールの“安全な拠点”ってコンセプトが崩れちゃわないっすか?」


「そうだな。でも、入口の場所をちょっと工夫することで安全性も担保できるんじゃないかと思ったんだ。そこで、プレンヌヴェルトダンジョンの()()()にフォレノワールの入口を作ることにした」


「え!? ダンジョンの中にダンジョンの入口って……そんなこと可能なんっすか!?」


「あぁ、実は昨日アルスやイルスと試してみたんだけど問題なく設置可能だった。しかも、入口を開けた事でダンジョンポイントが大きく増加に転じたよ」


「おぉ! それならプレンヌヴェルトを強化していくことで安全な拠点ってのは確保できそうっすね!!」


「あぁ。でも、これも問題点があってな……。フォレノワールのある“常闇の森”から魔素を吸収するためだと思うんだけど、フォレノワールダンジョンの本体はそのまま常闇の森にあるんだよ。しかも今あるフォレノワールの入口を入ったらプレンヌヴェルトの1階層である街部分に転移しちまう謎仕様のおまけ付きでな」


 うん、今の説明では混乱している者がほとんどだな。

 かく言う俺も、この数日で色々と検証したが、ダンジョンの仕様が不明瞭すぎて感覚的にしか分かっていない。

 現時点で分っている事をまとめると……


1.フォレノワールの入口を閉じている状態が継続すると、魔素の吸収量が激減しダンジョンとして存続できなくなる可能性がある。

2.フォレノワールの入口をプレンヌヴェルトの最上階層に設置するのは可能。

3.その際、外との繋がりが直接的にできないため、常闇の森にも入口ができてしまう。

4.常闇の森の入口を潜るとプレンヌヴェルトの1階層である街部分に転移されてしまう。

5.フォレノワールの外観を弄れば、それは外からでも確認できる。

(仮にダンジョンの外装を神殿のように変更した場合、突如常闇の森に神殿が出現してしまう)


 と、こんな感じだ。

 やはりダンジョンは、人を招き入れて戦闘行為を行わせることで魔素の吸収量を確保するという特性上、入口を閉じ続けるというのは困難であったようだ。それでも今まで問題となっていなかったのは入口を閉じてから数か月という短い期間であったことと、フォレノワールの改装に相当量のダンジョンポイントを継続的に使用し続けていたからだろう。


「阿吽、それはかなりまずくないか? ダンジョンを研究している学者たちならフォレノワールとプレンヌヴェルトの繋がりから同じダンジョンマスターが管理しているという考察に至るには十分すぎる情報になる。しかも、プレンヌベルトの街がダンジョンの1階層になっているのもバレてしまいそうだが……」


「あぁ、ネルフィーの言う通りだな。だが、転移先も俺が支配しているダンジョンだから隠す方法はある。単に転移した先をプレンヌベルト街だと思わせなきゃいいんだ。幸い街は相当大きくなってるから、隠し部屋を作って2階層への入口を設置すればいいだけで隠蔽できるしな」


「要するに、プレンヌベルトダンジョンの2階層への入口が2つになるという事か? それでもプレンヌヴェルトとフォレノワールに何かしらの関係があることは分かりそうなものだが……」


「それなんだが、俺達が一番バレたくないのはプレンヌヴェルト街がダンジョンの1階層っていう点だ。ダンジョンマスターの存在自体はある程度認知されてるみたいだし、ダンジョンマスターが俺だっていう事が分らなければ実質的な問題はない」


「たしかに……」


「あと、この二つのダンジョンの繋がりは敢えてこっちからバラしてやろうかと思ってな。隠し部屋にでも立札を置いて、『この先に立ち入れるのは、蒼緑の迷宮を踏破した者のみ』とか書いておけば、その先がプレンヌヴェルトの街だとは思われないだろ。要するに、ある程度秘密を明かす事で、逆にバレたくない事は隠しやすくなるわけだ」


「理解しました。さすが阿吽様です」


「ってことは、プレンヌヴェルトのダンジョンを強化すれば安全性は確保できるわけなんで、これからもやる事は変わらないんじゃないっすか? 俺達はなにを協力すればいいんっす?」


「フッフッフ……、強化するダンジョンはプレンヌヴェルトだけじゃないって事だ」


「え、それってフォレノワールも強化するってことっすか?」


「あぁ。というわけでここからが本題だ……。題して『フォレノワール()()()()()()化計画』!!」


今話から『第8章 迷宮改造編』スタートです!

ちょっと設定がややこしいですが、簡単に言うとプレンヌヴェルトダンジョンの最上階にフォレノワールダンジョンの本当の入口を作ったよ!ってことです♪ このあたりの設定は今後読んでいくごとに分かってくると思うので、今はスルーでオッケーっす!!笑


ってことで、第8章も引き続き楽しんで頂けたら幸いです♪

次話は1/27(金)投稿予定です★

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[気になる点] 「最強のクラン」を作るって序盤で言ってたと思うんだけど、クラン全体の強化はしないんですか?
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