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第105話 特訓の成果②


「よろしく頼む」


 ネルフィーに関しては、訓練開始時は正直一番苦労すると思っておった。ネルフィーだけがバフスキルの段階が一つ下だったというのが理由じゃ。

 しかし、実は一番成長率が高かったのがネルフィーじゃった。最初の3日でバフスキルを一段階向上させ、さらにそこから障壁を習得するまでの期間は一番早かったのだ。さらにこやつの凄いところは“教えられ慣れている”というところ。複数の師に師事してきたと言っておったが、それでもこれだけ吸収力がある者は過去にもなかなかおらんかった。


 結局ネルフィーは最初の2週間で魔法障壁の基礎を習得。その後は応用の訓練をしておった。


「さて、障壁を張るのじゃ」


「もう張り終えている」


 その直後、儂の後ろに障壁を張ったネルフィーが現れた。そして先程まで見ていたネルフィーの身体が揺らめき、フワッと消えていった。


「……ほぉ、なるほどのぉ。まさかその技術に辿り着くとは……」


「昔、里の長に指南してもらった技術も組み合わせてみた。

 正直、私の障壁はそこまで防御力を上げる事ができなかったから、別の方向に応用をしてみたのだが……ダメだったか?」


「いや、ダメではないぞ? 基本も間違いなくできておる。じゃなければ、この応用はできぬからのぉ」


「ネルフィー、どうなってんだ? 近くで見てたのに全く分からなかったんだが……」


 別角度から見ていた阿吽も分からないレベルとは……

 ネルフィーは暗殺者としてのセンスが振り切っておるな。正直、一番敵に回したくないタイプじゃわぃ。


「全身に障壁を張りつつ、樹属性魔法で自分の分身を作り上げて相手に誤認させたんだ。そうすれば【隠密】の効果が最大限に発揮できると考えた。

 一度相手に認識されてしまうと【隠密】は効果が大きく減退するが、誤認させてしまえば最大限の効果を発揮させることができるスキルだからな。実はまだ分身を作るのにかなり時間がかかる。だからシンクが合否判定してもらっている時から障壁は発動させていた。

 そういう意味では戦闘中はなかなか使えないが、基本的な障壁は一応できるからパーティーで戦闘するならば問題ないようにしてある。

 まぁ今のは暗殺や密偵用だ」


「分身!? やっべぇ……何かめっちゃ憧れる響きだな……」


「和の国の『しのび』といわれる工作員がこの技術を得意としておったのぉ……儂の友でもある【暗殺王】と呼ばれておったダークエルフもこの技術が上手かったわぃ。昔はソレでよく揶揄からかわれておった……懐かしいのぉ……」


「これは私の故郷の里長が代々受け継いでいた技術を掛け合わせたものだ……その【暗殺王】は、もしかしたら私の故郷を作った祖先の方かもしれない」


「フォッフォッフォ。その技術をこの時代まで受け継がせるとは、誠にヤツらしい……

 うむ。ネルフィーも合格じゃ!」


 こやつらを見ておると、本当に昔の事を思い出させられる。あの時の儂らの選択は間違っていなかったとも……

 おっと、いかんいかん。まだ試験の途中じゃったな。


「次は阿吽じゃ。阿吽は見ておったが、少し特殊じゃからのぉ……3つの攻撃を同時にするから、全て打ち消してみせるのじゃ」


「っし、分かった!」


 そう言うと阿吽も障壁を発動させた。これは“攻撃型魔法障壁”と呼ばれる技術。とにかく攻撃的な阿吽の魔法とは相性が非常に良いものじゃな。


 儂は氷の槍を3本生成し、阿吽へ向けて放った。

 単純にドレイク達に向けて放ったものの3倍。普通の障壁なら余裕で破壊できる威力じゃが、阿吽の障壁へとぶつかると、儂の放った氷魔法だけが弾けるように消失した。


「俺の障壁で防御すると、こんな感じになるんだな……」


「うむ。完璧じゃったよ。今ので魔力消費はどれくらいじゃ?」


「そうだな……全体の1割ってとこかな」


「まぁ合格じゃろ。じゃが、魔力消費はもっと抑えることができる。精進を怠るでないぞ?」


「おう! ありがとな!」


「フォッフォッフォ。良いのじゃよ。

 さて、最後はキヌじゃな。キヌは魔法障壁の試験は既に終わっておるからのぉ。今回は儂の防御障壁を崩す事ができたら合格としよう」


「ん。分かった……師匠に教えてもらった事、全部出す」


 うむ。良い目じゃ……この娘は本当に素直じゃな。


 儂は魔法障壁を発動させた。魔力の消費量はかなり大きいが、その硬さは氷竜の試練の時と同等レベルにしてある。

 キヌは儂の方へ左手を伸ばすと障壁を構築している魔力に変化が起きてくる。じゃが、ここで簡単に破られてしまわぬよう、乱される魔力の流れを再び安定させようと試みる。

 すると、魔力の属性が無理やり光属性に変換させられていった。


「ぬぉ!? こんな技術まだ教えておらぬぞ!?」


「内緒で……頑張った。ビックリさせたかったから」


 そこからは全く抵抗することも出来ず、儂の障壁は一気に消失していった。本当に恐ろしいほどの魔法のセンス。障壁の構築阻害だけでなく、相手の魔力に干渉し己の属性へと変化させてしまうとは……


「こんな障壁の破られ方したのは初めてじゃぞ?」


「ヒーリングとかキュアで治療する時の感覚でやってみた。多分、私が一番得意な阻害方法」


「本当におぬしらには驚かされっぱなしじゃよ……

 まだまだ攻撃魔法に関しては教えられることもあるのじゃが、ひとまず今回の特訓は終了としようかのぉ」


「おう! 本当にクエレブレのお陰だ。明日からまたアークキメラにリベンジしに行ってくるよ」


「うむ。頑張ってくるのじゃよ」


 5人は口々に礼の言葉を伝えてくれる。本当に素直で可愛い弟子達じゃて。

 弟子の成長をみるのは、こんなにも嬉しい事なのじゃな。本当に阿吽達に出会えてよかったわぃ。




次話は7/12(火)に投稿予定です♪

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― 新着の感想 ―
[一言] ほぉ~それぞれ個性があるのは良いですねぇ!
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