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第100話 アークキメラ①


 ボス部屋に入るとそこは夜の平原だった。

 空を見上げると雲に覆われていた月がゆっくりと顔を覗かせ、徐々に平原全体が月明りに照らされていく。

 そして、それと同時に遠くからでも分かるくらいの巨大な影がゆっくりと立ち上がるのが見える。


 作戦通りシンクが最前衛へと動き、続いてドレイク、俺とキヌが中衛、後衛にネルフィーという陣形をとる。


≪みんな気を付けろ。こいつは見たことが無い魔物だ。多分魔物図鑑にも載っていない変異種だと思う……近付きながら鑑定をしてみる≫


 ゆっくりと距離を縮めながら鑑定を行と、『アークキメラ』という魔物のようだ。『キメラ』はBランクの魔物であり、獅子とヤギの頭、蛇の尻尾を持つ四足歩行型の魔獣だが、サイズとしては大きくても全長3mくらいのものだ。

 しかしこの魔物の全長は10mを越え、立ち上がった頭の高さはレッドオーガをも超えるサイズとなっている。しかも属性は、雷と地という2属性持ち。

 今まで雷の属性を持つ魔物とは対峙したことはなく、俺が特別かとも思っていたほどだったが、どうもそんな事はないようだ。それに雷属性の代名詞である俊敏さと攻撃力に加え、防御に特化した地属性という組み合わせは、かなり厄介な敵でありそうだ。


≪一部鑑定できた。アークキメラという魔物でキメラの変異種だと思う。属性は雷と地の2属性、Sランクの上位か、それ以上の可能性が高い≫


≪了解しました。まずはわたくしが注意をひきます!≫


 そう言いながらシンクは【勇猛果敢】のバフで攻撃力と防御力を底上げすると【挑発】でヘイトを稼ぐ。

 シンクへとアークキメラの2頭の視線が向いたタイミングを見計らい、ドレイクが左足に向かって駆け赤鬼の金棒を振りかぶっている。

 俺とキヌは移動をしつつ魔法攻撃を当て、ネルフィーも遠距離からの魔法矢で攻撃し、決して少なくないダメージを与えた感触があった。

 だが、アークキメラは2歩ほど後退したものの、思ったほどのダメージが与えられている感じではない。


≪思ったより硬いぞ。どうなってんだ?≫


≪阿吽様、これと似たような現象が、ゾアという魔族と戦っている時にありました≫


≪たしかに。硬い膜に弾かれる感じ≫


 イブルディア帝国の魔導飛空戦艇の魔導障壁みたいなものを魔法で作り出しているのか?

 であれば、この魔物とここで戦えたことは俺たちにとってチャンスだ。


≪どんな原理でアークキメラがその膜を張っているのかを見てみたい。キヌとネルフィーは大変になるが俺も前衛で戦うからサポートをしてくれ≫


≪ん。分かった≫ ≪了解した≫


 その後俺も前衛に加わり攻撃を仕掛けていくが、白鵺丸でさえ普通に斬っただけでは弾かれるような感覚があった。

 敵の攻撃はシンクが上手くヘイトを取り、受けきってくれているため分析できるだけの余裕はあるが、コイツを倒しきろうと思ったらこの障壁のような膜を何とかしなければならない。

 ネルフィーの矢に関しても通常の矢や魔法で作った矢の両方を弾いている。だが、通常の矢にエンチャントしたものに関しては、威力が弱まっているが、貫通しアークキメラの身体に刺さっているのが分かった。


≪ネルフィー、矢にエンチャントして放ったものは貫通している。出来るだけその方法で射てくれ≫


≪そのようだな。分かった≫


 試しに俺も白鵺丸に魔力を通し斬ってみると膜の部分で抵抗を感じ威力を弱められているようだが、ダメージは蓄積できそうであった。


 ちょっと活路が見いだせてきたかと思ったが、アークキメラの身体に黄色い電流のようなオーラが迸り、攻撃や移動の速度が大きく向上し、防御を取っていたシンクを大きく弾き飛ばした。

 そしてシンクへのヘイトが切れたことにより、攻撃しようとしていた俺にアークキメラの尻尾部分となっている大蛇が迫り、背後から鞭のような攻撃を受けてしまう。

 咄嗟に飛び退いた俺への追撃はドレイクが金棒で弾き、着地と同時にキヌから回復魔法がくる。

 

≪すまん、助かった。シンクも大丈夫か?≫


≪はい、ガードはできましたが、弾き飛ばされてしまいました。申し訳ありません≫


≪大丈夫だ。それよりもアークキメラはバフまで使ってくるのか≫


≪兄貴、このままだと厳しいっすね。どうします?≫


≪そうだな。あの障壁が剥がれればダメージを稼げそうではあるが……≫


≪近くで見ていて分かったのですが、アークキメラの障壁はゴムのように衝撃を吸収しているようでございます。

 ゾアの障壁は、透明なガラスに弾かれるようになっており、性質は違うのかもしれませんが、一定以上の攻撃力で割ることができました≫


≪なら、一度俺とドレイクで全力の攻撃をしてみよう。シンクは引き続きヘイトを稼いでほしいが行けるか?≫


≪もちろんです≫


 俺とドレイクがバフを二重にかけたのを確認すると、シンクは最前線へと突っ込んでいき、変形巨斧でアークキメラの爪攻撃をガードインパクトで弾き返す。

 その隙に合わせ、俺とドレイクは攻撃を与えていく。

 数秒間連撃を仕掛けていくと突如として障壁の膜が弾けたように消え、攻撃時に感じていた抵抗感がなくなるのがわかった。


≪障壁が消えた! キヌ、ネルフィーも攻撃に参加だ≫


 その指示に合わせて魔法と矢の攻撃も飛んでくるが、大きくバックステップを取ったアークキメラは一瞬のスキを突きドレイクへ突進攻撃と尻尾での噛みつき攻撃を仕掛けた。

 ドレイクは突進を何とか両手でガードする事はできたが、肩口を尻尾の大蛇に噛みつかれている。


 何とか倒れ込まず持ちこたえているドレイクに回復魔法が飛び、尻尾へ向けて放たれた矢が刺さると、アークキメラは大きく飛び退き、体勢を立て直しながらこちらを睨みつけてくる。


≪キヌねぇさん、毒の状態異常を食らったっぽいっす。解毒もお願いして良いっすか≫


≪ん。すぐに手当てする≫


 ドレイクを鑑定すると状態異常に【毒】とあり、HPも1割ほど減っている。さっきキヌに回復をしてもらっていた事を考えると一撃で3割ほどのダメージを受けたことになる。

 やはりアークキメラは攻撃力や防御力、敏捷性も兼ね備えた魔物であるようだ。

 今のところは遠距離攻撃を行ってはおらず、近接戦闘に特化したタイプであることも分かってきた。だが、ヤギの首はほとんど攻撃に参加していないようにも感じる……


 さて、どうしたものか……


100話記念ゲリラ投稿だぁぁ!!


次話は予定通り6/28に更新します♪

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― 新着の感想 ―
[一言] あ、こっちだった。。 祝100話!!
[気になる点] そういえば、属性っていくつあるのかな? 四大元素に光と闇、あとは雷、樹、氷 使えそうなのは既に出尽くした気がする
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