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第99話 亡者の支配者


 5階層は大きな部屋型のフロアになっていた。

 部屋は一瞬“湧き部屋”かと思うくらいには大量の魔物が中央付近に固まっている。

 スケルトンの上位種でDランクである『スケルトンソルジャー、アーチャー、メイジ』と、さらに上位でCランクの『スケルトンウォーリア、スケルトンホース、スケルトンマジシャン』やAランクの『ボーンジェネラル、ガーディアンスケルトン、ボーンビショップ』も混じっている。

 

 これだけで見ても一般の冒険者からしたらかなり極悪なフロアになっている。

 単純に量が多すぎるというだけでも十分危険。それに加えこの部屋は、魔物のランクがA〜Dまでの差がある。混戦の中で瞬間的に敵のランクを判断しそれに見合った防御策や攻撃策を取らなければならないというのは、精神的にかなり疲労するだろう。だが、真に恐ろしいのはその最後列に位置した存在……


≪気を付けろ、一番後ろにSランク下位のリッチが居るぞ≫


≪厄介だな。確かリッチはスケルトン系の魔物を新しく生み出せると聞いたことがある≫


≪あぁ、ネルフィーの言う通りだ。モタモタしているとこのスケルトンの量はもっと増える可能性もある≫


≪兄貴、作戦どうするっすか?≫


≪うーん。初めてのダンジョンだからな……一応安全策を取ろう。

 この部屋を縦に4分割してネルフィー以外の四人で足並みを揃えながら範囲魔法で殲滅だ。

 ネルフィーは遊撃としてAランクの魔物を優先して、生き残っている魔物を魔法矢で追撃していってほしい≫


≪阿吽様、私の範囲魔法では撃ち漏らしが多くなってしまいそうなのですが、いかがいたしましょう?≫


≪ん。なら私がシンクの隣になる≫


≪そうだな、キヌが隣に居れば問題ないだろ。

 リッチだけになったら全員で総攻撃だ。新たに生み出された魔物は基本的にネルフィーが対応してくれ≫


≪了解した≫


 ぶっちゃけ力押しの作戦。他の冒険者達には真似できない芸当だろうが、俺達に限れば範囲魔法もある程度扱えるメンバーばかりであり、大量の魔物を殲滅するにはこの方法が一番手っ取り早いだろう。

 さらにこの部屋、箱型のフロアに関しても普通なら物量で押しつぶされる危険性があるのだが、殲滅力が勝っていれば俺達に有利に働く環境だ。


 作戦会議をしている間にもスケルトンたちは徐々に俺達に距離を詰めてきており、最後方のリッチもどんどん新しいスケルトンを量産していっている。

 さて、大掃除の時間だ。


≪っし! 全員散開しつつ殲滅していくぞ!≫


≪≪≪≪了解≫≫≫≫


 俺が号令を出すと、全員が範囲魔法での殲滅を開始しながら、両サイドをシンクとドレイクが担うように陣形を広げていく。

 数分でこちらの陣形は完成し、範囲魔法でCランク以下の魔物は何もできず倒れていく。

 Aランクである『ボーンジェネラル、ガーディアンスケルトン、ボーンビショップ』はなかなか魔法だけでは倒す事はできず、ビショップに関しては魔法を相殺しようとしてくる。

 しかし、ネルフィーがビショップへ的確に狙いを定め魔法矢を連射することでそれを対応。

 この作戦の要は、間違いなくネルフィーの遊撃としての判断力と射撃の正確性と言えるだろう。


 そして戦闘開始から10分程度経過すると、敵の総数は開始時の3割ほどになった。

 俺達の魔力も半分くらいまで減っているが、よほどのことが無い限り殲滅しきる事ができそうだ。


 リッチの魔力が尽き、新しい魔物が生み出されなくなってからは、すぐにスケルトン軍団の処理が終わり、残すはリッチのみとなった。


「さて、残るはリッチだけだな!」


「もうMPも残ってなさそうっすね、全員で叩いて殺っちゃいましょうか」


 心なしかリッチが怯えているような気がするが、MPを回復されても困る。それに、リッチの後ろに見えてる扉はボス部屋の扉だろう。

 こっちも結構魔力を消耗しているし、さっさと倒してもう一度休憩をとりたい。

 

『ここまで……力の差が……』


「え? 今、リッチ喋ったっすか?」


「プレンヌヴェルトのヤオウも最初から喋れたからな。ランクが高くて知能が高い魔物の中には人の言葉も喋れるヤツもいるんだろ」


『我は、もう何もできぬ……早く殺せ……』


「まぁ、倒さないと次の扉も開かないだろうし……恨むなよ」


『だが、たとえ我が倒……「攻撃開始」うぐぁぁぁ!!』


 俺の指示に即座に反応した4人が喋っている途中のリッチに向かって攻撃を仕掛けた。

 どうせ碌なことを話さないだろうし、本命はこの先に居るボスだ。

 MPの尽きているリッチは大した抵抗もできず、その身を焼かれ、矢に撃ち抜かれ、岩に潰され、その上から赤鬼の金棒で叩き潰され、最後に俺の刀で真っ二つに斬り裂かれてダンジョンに吸収されていった。


 他のダンジョンで言えばボスクラス、それもかなり難易度の高いボスであっただろうリッチ。だが、このダンジョンでは中ボス的な扱いだ。この先のボスがどんな魔物なのか、かなり注意をした方が良さそうだ。

 そんな事を考えていると赤色の宝箱が床から出現してきた。


「うおぉぉ! 赤い宝箱っす! これかなりレアなんっすよね!?」


「だな! これ、誰が開ける?」


「観察眼で確認したが、罠の類は無いな。この場合、幸運値が最も高い阿吽が開けるのが良いのではないか?」


「毎回俺が開けさせてもらってるんだが、良いのか?」


 そう言いながら周囲を見渡すが、全員が頷いてくれている。


「んなら、お言葉に甘えて……御開帳!」


≪魔導弓【月桜】:攻撃力5〜18、千年桜という非常に魔力を通しやすい樹を素材として制作された一品。扱いはとても難しいが、使用者次第でその真価が発揮されると言われている≫


「レアリティー赤! 大当たりだ!

 ん? だが、これはまた扱いにくそうな弓だな……使えるとしたらネルフィーだけなんだが、使えそうか?」


そう言ってネルフィーに魔導弓【月桜】を渡すと、ネルフィーの目が見開かれた。


「なかなかのじゃじゃ馬だな……命中率が落ちる事はなさそうだが、魔力の操作がかなり難しそうだ。だが、必ず使いこなしてみせる! ただ、良いのか? 売ったらかなりの額になるが……」


「仲間の強化が最優先に決まってるだろ? 頑張って使いこなしてくれ」


 相当扱いが難しそうではあるが、ネルフィーほどの弓の使い手であれば必ず使いこなしてくれるだろう。それに、今のリッチ戦に関してはネルフィーの活躍は目を見張るものだった。

 あの範囲魔法攻撃の中で大量の敵の中からボーンビショップを見つけ出し、確実に打ち抜いて見せていた。その視野の広さと戦闘の中での判断力の速さ、弓の腕前は他者には真似できるものではない。

 ネルフィーはいつも謙遜しているが、間違いなく天才と呼ばれる者の一人だろう。


「さて、この扉からすると、次の部屋はボス部屋になっていそうだ。

 今のリッチ戦でかなり魔力を消費したから、全員が回復するまでここで再度休憩を取ろうと思う。

 この部屋で敵が再び出現することはないと思うが、もしもの時の為に気は抜かないようにだけしておこう」


「了解しました。今は変則的な闘い方でしたが、ボス戦はさっきの作戦通りに私が最前線でヘイトを稼がせてもらいます」


「そうだな。さっきセーフティーエリアで立てた作戦通りに行こう。

 戦闘中の指示も念話でするようにするよ。今の戦闘は途中から喋っちまったからな。気を引き締める」


 そうして全員の魔力が回復した後、ボスの部屋の前に並び立つとゆっくりと扉が開かれていく。

 扉が開ききるのを確認した俺達は、シンクを先頭に扉の中へと歩みを進めるのだった。



次話は6/28投稿予定です!


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[一言] このリッチ君はこれから何度殺されるのか(合掌) 100話おめでとうございます!!
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