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65.女神見習い、少女と買い物を楽しむ(2)


~黄金の羊亭~


 「おはようございます」

 「あら、エナちゃんいらっしゃい。いつもの持ち帰りの注文かい?」

 「ええ、それもあるんですが……」

 「おや……後ろの子は?」

 「えっと、一緒に暮らしてる子で……リディといいます」

 「はじめまして、リディちゃん」

 「……はじめまして、リディです」


 リディは緊張しつつもしっかり挨拶ができた。親父さんは奥の方からひょっこり頭だけが見えコクリと頷いた。生首かよっ。


 「あと……リディの肩に乗ってるのはキラーバードという魔物でブランといいます。ギルドで従魔登録はしてあります」

 「ほー、こりゃ珍しいね……久しぶりに従魔ってやつをみたよ。そこらの冒険者より身綺麗にしてるみたいだし、好きにしていいよ」


 2人ともブランを物珍しく見る目はあったけど、それも一瞬で……すんなり受け入れられてホッとひと安心。


 「ありがとうございます。あれ、ミーナちゃんは……」

 「ああ、今日は教会で勉強の日なんだよ。夕方には帰ってくると思うよ」

 「そうですか……」


 リディとミーナちゃんの初対面は今はお預けか……てか、親父さん今日はミーナちゃんについて行ってないんだね。やめたのかな?それともお迎えに行くのかな……

 

 「で、ですね……今日は親父さんにお願いがありまして」

 「なんだい?」

 「親父さん、美味しいパイをお願いします! ジャムは持参しましたのでっ」

 「お願いします……」

 

 ストレージからジャムの瓶を出し……


 「こちらはおすそ分けです。こっちの瓶の分でパイを。あっ、果物も置いていくので出来れば豪華なパイを希望します!」

 「それはいいけど、おすそ分けって……こんなにたくさんいいのかい?」

 「はい、いつもお世話になってるので……」


 親父さんを見ると親指を立てて頷いてくれたので


 「では、いつもと同じ量のお持ち帰りとパイをお願いします」

 「はいよー。夕方以降になるけど平気かい?」

 「はい、大丈夫です」

 「では、また後でね」

 「はい」


 ふぅ……親父さんに断られなくてよかったー。


 「リディもちゃんと挨拶できたね」

 「……ん」

 「じゃあ、次は買い物に行こう。お金を入れる巾着とかも見てみよっか」

 「ん」

 


 夕方まで時間が空いたので今日の目的でもある買い物へ……


 「まずは何を買いたい?」

 「ん……エナの服」


 そんなに私の服がないって心配してくれてるの? 結構、服持ってるんだけどな……


 「わかった。じゃあまずは『紫紺の猫商会』だね」

 「……紫紺の猫?」

 「ああ、お店の名前だよ。リディの黄色いワンピース買ったお店なんだ」

 「ん、わかった」



~紫紺の猫商会~


 「いらっしゃいませ」

 「こんにちはー。従魔もいるんですけど一緒でも大丈夫ですか?」

 「また、来てくれたのね。ええ、王都でも従魔を連れた人はたくさんいたから、大丈夫よ」

 「ありがとうございます」

 「ゆっくり見ていってね……何かあれば声をかけてくださいな」

 「はい」

 

 リディはお店に入るのもあまり経験がないらしく、キョロキョロと興味津々のようだ……わかるよ、私も初めてのお店はついキョロキョロしちゃうもん。


 「じゃ、早速選んでもらおうかな」

 「ん、わかった」


 リディは真剣に服を選んでくれている……ブランの羨ましそうな視線を感じつつ優越感に浸る。


 「ん、こっちかこっち……」

 「おおー」


 リディが選んでくれたのは、触っただけで上質だとわかるシンプルなAラインの白い長袖ワンピースとスカートの裾にレースのついたオフショルダーのワンピースだった。

 両方とも白なのは多分ブランの影響かな……汚れたら大変だけど、リディが選んでくれたんだから大切に着よう。

 ブランに自慢してやろーっと。あ、目はやめてっ! お願い、つつかないでっ……冗談はこれくらいにして。うん……結構いい値段するけど……私、稼いでるのでっ。ブルブル……


 「じゃあ、両方買っちゃおうかな……」

 「……でも」

 「それは、生地に魔物の素材が糸に組み込まれていて見た目に反してかなり強度があるんですよ。新品なら数倍はくだらないですね」

 「へーそうなんですか。せっかくリディが選んでくれたんだし。すいません、これ買います」

 「はい、ありがとうございます。包んでおきますのでごゆっくり」

 「はい。じゃあ、リディのバックと巾着も見てみようね」

 「ん」


 ショルダーバッグや巾着袋などの袋物のコーナーも可愛いものであふれていた。


 「これだけ沢山あると悩んじゃうよね……」

 「ん」

 「あ、私がプレゼントするんだから遠慮なく選んでね」

 「でも……」

 「だって、リディ今日も私に渡してくれたでしょ」

 「……ん、わかった」


 リディはショルダーバッグと巾着袋がセットになっているものに決めたようだ……なぜかブランが大喜びしている。


 「ん、これにする」

 「これ、鳥の刺繍が入ってるんだね……」


 それでブランは大喜びしてたのか……私はひと目惚れしたティーセットも思い切って購入してしまった。

 かなり悩んで……リディを待たせてしまったかと思ったけどリディも色々と見てたみたいで退屈はしてなかった。よかった。


 「これでお茶飲んだらそれだけで美味しそうだよね」

 「ん」

 

 お会計して、リディはそのまま身につけていくらしい……お金や袋を移し替えていた。


 「ありがとうごさいました……またお待ちしていますね」

 「はい、ありがとうございました」

 「……ありがとうございました」

 「ふふ、喜んでもらえるといいわね」

 「……ん」

 「ん? どうかした?」

 「……なんでもない」

 「そう……」


 お店を出てティーセットだけすぐにストレージへ入れた。せっかく買ったのに割れたりしたらショックだから。


 「次はどうしようか……」

 「ん……あそこに行きたい」

 「ん? あそこって……」

 

 ……なんの店だろう?



~ドーラの防具屋~


 [防具や革製品、日用使いから一張羅までなんでも承ります! お気軽にどうぞ! ドーラの防具屋]


 店先にはそんな文言が書かれたポスター? が貼ってある。やってるの?ってくらいひと気がないんだけど……表の看板が『open』てなってるからやってるはず。


 「いらっしゃいませー」

 「こんにちはー。従魔もいるんですけど一緒に入って大丈夫ですか?」

 「従魔っすか? どうぞ、どうぞっ!観察してもいいっすか?」


 少し埃っぽい店内には私とそう変わらない年の女の子がいた。おおー、ブランに興味津々ですね……


 「ん、いいよ」

 

 え、いいの? ブランも驚いてない?

 

 「だから、ブラン用のリュックを作って欲しい……」


 どうやらブランの背負う小さなリュックを作ってもらい、その中にお金を少し入れることにしたようだ。

 意外とすごいこと考えるなぁ……たしかにブランなら滅多なことではお金を取られないだろう……安全な飛ぶ金庫……

 

 「うわー、滾るっす……格安にしますんでぜひやらせて欲しいっす」

 「ん、お願い……」


 ブランも自分用のリュックとあっては仕方ねぇなって感じだけど、嬉しさが滲み出てるよね……てか、そんなうまいことリュック付けられるのかな? まぁ、相手はプロだから大丈夫なんだろう。


 「そうだ。リディの防具も買っておこうか?」

 「……エナの分は?」

 「あー……」


 ま、冒険者ならつけてて当たり前の装備なんだけど、今まですっかり忘れてたのね。


 「なら、こっちがオススメっす……自分が作ったんすけど、全然売れないんで投げ売りしてるやつっす」

 「へえ……」


 どうやらお父さんがギルド公認の職人さんで独立したものの、なかなか厳しくお父さんの下請けで生活しているとのこと。

 腕は父親に認められているけどデザインが奇抜だったり……やりたいって決めると店を閉めてまで熱中するからお客さんが寄り付かないらしい。


 なんで知ってるかって? ドーラさんさん……ずーっとマシンガントークしてるのよ。こんなに喋る人司祭さん以来だわ。


 「リディ、サイズが合うのこれしかないけど……どうする?」


 やはりちょっと奇抜なデザインだった。でも、革の割に防御力は高そう……

 投げ売りじゃなくデザインがシンプルなものと比べると値段が5倍くらい違う……シンプルな分素材にこだわったらしく、この値段だそう。

 奇抜なデザインのものは素材はそこまでじゃないがこの奇抜さゆえ各所に工夫が施してあり強度的にはシンプルなものと変わらないとか……


 「ん……」

 「よし、わかった。私も同じデザインのやつにするから」

 「ん、それなら……」


 ちょっと恥ずかしいけど……めちゃくちゃ安いし、作りはしっかりしてるから問題ない……デザイン以外は。


 「……ドーラさん……ブランのデザインはシンプルにして」

 「わ、わかったすっ。試作品を作るんで10日後以降に来てほしいいっす」

 「ん、わかった……エナいい?」

 「うん、いいよ」

 

 注文書を受け取り、奇抜なデザインの防具の調整をしてもらい料金を支払う。

 ブランの分はリディが払うことになった。これもリディが譲らなかった。

 まぁ、リュックはかなり格安になったみたいで手付金を払ってリュックと交換に残りを支払うらしい。


 「じゃ、丹精込めて作るっす!楽しみにしてくださいっ」

 「ん、よろしく」

 「じゃあ、また……」

 

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