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この世界のどこかで誰かは生きている  作者: 黒炎ジャーナリスト
第1章 黒炎
7/15

隠し事

最近、体が不自由になってきた。

何をするにしても腰が痛くて、前のように走ることができなくなり外での農作業が難しくなってきた。

それに最近は、病気で寝込んでばかり。

せめて、業と三葉が成長するまでと思ったけれどもこれじゃあ逆に生きてる方が迷惑をかけてしまっている。

もし、私の親が衰えて行った時、私は業と三葉と同じ苦痛を感じていたのだろうか。

私に親はいない。

私は生まれた時から孤児だった。

何処かの橋の下で泣いていたらしい。

それを誰かが拾って孤児院に連れて行ったそうだ。

そこから成長し身に覚えがあるのは、小学校に入学する時だ。

あの日、私は年上の使い古しの入学式に着ていく服を着てウキウキした気分で学校に向かった。

使い古しのピンク色のランドセルには『EXO kids』が入っており孤児院から歩いて10分程度の距離だった。

そして。その道中に出会った子みんなが私を遠ざけた。

その理由は。

私は酸素マスクをしていたからだ。

昔は酸素ボンベから酸素を送っていたらしいが、私は口に常にマウスピースをして息を吸うたびに空気から酸素濃度を高めた空気を吸っていて、それが普通の子たちからすればおかしかったのだろう。

そしてマスクをしていても息苦しいくらいなのに私はなんとか学校に着いた。

その間に私に対しての誹謗中傷は6年間一切止むことはなかった。

生まれた時から私の運命は決まっていたのだと思う。

それでも抗い続けて今こうしてお風呂に入っているのだろう。

どんな誹謗中傷を浴びても私は抗い続けた。

いつかきっと私を認めてくれる人に出会えると信じて。

________________________________________


私には、最愛の夫がいた。

子供たちに話した馴れ初めとは違うお話。

あれは、とある夫婦のお話。

私と夫の馴れ初めはまだ誰にも話したことがない。

何故ならそのお話は残酷で醜くそして信実の愛だから。

私の中学、高校時代も酸素マスクが取れることがなかった。

みんなは理解してくれてはいるのだが、

それでも、みんなの輪に入ることができなかった。

運動もできない。

友達もできない。

そんな日々を毎日毎日繰り返していたのだと思う。

残された道は勉強のみ。

仕方なく勉強に励み、そこそこ良い理系の大学に入った。何故なら理系大に入れば認めてもらえるという僅かな希望からだった。

だがその希望も破れてしまったが。

私は孤児院を追い出されて安い賃貸物件を借りた。

埼玉県の山奥で一軒家だけどボロボロで虫が出るのだって日常茶飯事だった。

私はそこから毎日自転車で大学に通い、病院に通い、イラストレーターとして頑張った。

私のごく僅かな才能の中に絵が得意だった。

美術の授業で描いた絵が表彰されたこともあった。

先生にも美大に行くことを勧められたが将来の可能性としては低いので希望のあった理系大に入った。

それでも絵を描くことが生きがいでもあった私はイラストレーターを始めてネットに投稿していると、数年後、出版社からのオファーが来て誰かの出版する本のイラストを描くようにと頼まれた。

実際、私はその本を読んで楽しめたので絵はスラスラ描けた。

実際に出版社へは赴かずネット経由で絵を送っていた。

すると、ある日突然、担当の人が『出版するために会議をするために来て頂けませんか』というメールが来た。

私はもちろん断ったが、どうしてもと言われて

『避けないでください』とだけメールを送った。

私は今の今まで出版社には赴かずに仕事をしていたが、この時私は初めて出版社に行った。

もちろん私のことをみんな白い目で見て来た。

担当の人も驚愕していた。

だけど1人だけ違った。

私が楽しんで読めたあの作家の松田まつだ 秀雄ひでおさんだけは。

普通に接して、普通に会議をして、『普通に飲みに行きませんか』と誘ってくれた。

私は何よりそれが嬉しかった。

小学校の時から信じていた人に出会えたからだ。

認めてもらえる。

私という存在がいることを認めてくれている。

否定され続けられた私の人生にようやく陽の光が見えたから。

そして私は、松田さんと飲みに行き病気のことや今までのこと全て話した。

すると、『あなたが死んだら悲しむ人が必ずこの世界のどこかで必ずいるから。だから僕にできることがあればなんでも言って。』

私はその言葉に涙を流していた。


そしてある日。

私の家に一本の電話が入った。

今すぐ病院に来るようにと連絡が。

私は病院に行くと、すぐに面談室のようなところに通された。

「大変申しにくいことですが、あなたは肺がんです。あなたの病気と深く関わるもので、今すぐにも治療を施したいのですが。残念ながらお金の工面やあなたの親族などからの署名などを頂きたいのですが。両親は不明であるのであればどうすればいいのかさっぱりなのです。今すぐ細胞を取り除けばなんとかなるのかもしれませんが、今の状態では•••。」

「お金と署名があればいいのですか?」

「まぁ。はい。」

「どれくらい、待ってくれますか。」

「いくらでも待ちますが、出来れば1週間以内にしてくれないと、病気の進行が•••。」

「わかりました。」

私はある決意をした。

経済的余裕が無いため借金も出来ない。

親は探せば、いるのかもしれないが期待できない。

私に残された道は1つ。

私はエクゾを取り出してある人に連絡した。

電話が繋がると、

「結婚して!」

私は必死に言った。


「そうだったんですか。だからあの時。」

今はまた病院の面談室。

今度は松田さんを連れて。

「事情はわかりました。弥恵さん。弥恵さんが死んだら悲しむ人が必ずこの世界のどこかで必ずいるから。その悲しむ人は、案外近くにいたりするんですよ。」

「そうだと良いですね。」

私達は婚姻届にサインしてそれを届けた。

________________________________________


時代は進化していく。

それは、どの分野でもだ。特に医療の分野の技術は発達していき、30歳にしてようやくマウスピースが取れて手術によって改善の兆しが見えた。

「よく頑張ったね。」

「ありがとう。あなた。」

私達は手を取り合う。

今も私達はイラストレーターとして、作家としてタッグを組んで楽しく毎日を過ごしていた。

外を出歩くと、今までの景色が変わって見えた。

人の目線が無い。

『なにあれ。』『キモ』だとかの陰口も無くなった。

私が初めて楽しいと思った人生。

縛られずに生きていける。

私達は、あの山奥の一軒家を購入し、修繕してまた住み始めている。昔の趣をそのままでそして虫がいない生活を彼は望んでいた。だから竃もそのまま。目の前には畑があり園芸を営むには広すぎるくらいだった。

________________________________________


だけど、お別れは突然来るものだ。

彼が死んだ。

私は彼の言葉を思い出す。

『あなたが死んだら悲しむ人が必ずこの世界のどこかで必ずいるから。』

その言葉を思い出すと余計に泣いてしまう。

お葬式には彼の親族が来るが、私の親族は誰1人としていない。

今まであったことのない彼の親族から罵声を浴びせられて、やっぱり私は縛られていると感じた。

そこから私はあの家で1人、遺産を受け継いでも印税が入ってきても私はただ貯めるばかりだ。

呆然となにも考えずに私の得意な絵も描く気にはならなかった。

そんな中、あの夫婦と知り合った。仲のいい夫婦だ。

私達もこんな2人のような笑顔で溢れる生活がもっとしたかった。

そして、その夫婦の紹介で品種改良の研究の仕事に就いた。

私があの理系大に通っていて唯一役に立った仕事だった。

あの夫婦から元気を貰い今日もまた頑張ろうと自分を励み生きていたのに。

終わった。

日本という国が無くなってしまった。

そして、あの夫婦は私にこの子たちを預けて•••

___________________________________________


私は縛られている。

今も、こんな黒炎になってしまったのも私が縛られているから。

私はどれだけ辛い思いをすれば幸せになれるの?

私はどれだけ悲しい思いをすれば楽になれるの?

今のこの幸せもきっといつか終わってしまう。

私が縛られているから。


私はお風呂から上がり着替えて居間に行くが。

明かりが灯っていない。

いつもはろうそくや竃の火が照らしているのだけど。

まさか!

私は急いで2人の元へ行こうとするが、見えない。

全く前が見えない。

すると、

「「ハッピースペシャルデー‼︎」」

フワッとロウソクに火が灯る。

「よかった。」

「どうした?弥恵?」

「うんん。なんでもない。」


私はホッとして幸せと感じて、美しく倒れた。

「「弥恵‼︎」」

そんな声が聞こえて来た。

多分、今回結構長い話だったと思います。

隠し事だらけのこのお話の終着点は一体どこなのか。

それと弥恵の容体も•••


次回は、パーティの準備を業目線からです。


それでは読んで頂きありがとうございました

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