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この世界のどこかで誰かは生きている  作者: 黒炎ジャーナリスト
第1章 黒炎
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伝統工芸品

朝目覚めるといつもと同じルーチンで午前中が終わった。

午後からはいつもと違い、山を登り作業する人達の前を通り過ぎて昨日行った鉱山の前に行く。

そこには、指揮をとっている俊一郎さんの元へ行く。

「こんにちは。俊一郎しゅんいちろうさん。」

「あぁ、かるま。こんにちは。」

養鶏の仕事を俊一郎さんの奥さんに任せて俊一郎さんは朝からこの鉱山で指揮をとっており、そのせいかなんだか若返っているような気がしなくもない。

とは言っても肌が綺麗という訳ではなく、声が前のヨボヨボではないというような小さな変化だが。

「で、どうしたのじゃ?」

「そうだ、おりが見つけた鉱山だけど、硫黄と酸化鉄だと思うんだがどうだろうか?」

「ワシに聞かれてもさっぱりじゃがアイツに聞いたらどうじゃ?」

「アイツって?」

「昔、この辺りの“伝統工芸品”を作ってた人がおって、そいつの弟子がまだ生きておる。だからそいつに聞けば何かわかるかも知れんぞ。」

「どうしてわかるんだ?」

「その“伝統工芸品”ってヤツにたしか金属が含まれておったはずじゃからこの辺の“伝統”ならば鉱石も何かわかるはずじゃ。名前は芳司ほうしじゃ。村の公民館から南南西にある廃屋みたいなところに住んでおる。会った時にワシから『よろしく』とでも言っておいて欲しい。」

「わかった。ありがとう、俊一郎さん。南南西の廃屋だな。行ってみるよ。」

俺は後ろを向いて歩き始める。

「あっ、待て業。これを渡してくれ。」

俊一郎さんが少し声を上げて言う。

俺は後ろを振り返り小走りで俊一郎さんに近づいていく。

「これをもって行かないとどんな鉱石かわからないからな。」

そう言って小さな麻袋を俺に渡す。

中身は檻の言っていた黄色い石やオレンジ色の石が入っていた。

「ありがとう。じゃあ。」

俺は今度こそ後ろを振り返り、下山する。

取り敢えず俺は自治会館を目指して歩いていく。

南南西がどちらかわからないので自治会館に行けばコンパスくらいあるはずなので、コンパスとついでに何か交換出来るものがないかを探しに自治会館を目指した。


下山し自治会館へ行くといつも通りに取引や井戸端会議が行われていた。

俺は自治会館の2階へ上がりコンパスが入っているであろう錆びれたロッカーを開ける。

『ギギギ』という音が耳に障る。

ロッカーの中には、コンパスはなく代わりにこのあたりの周辺の地図を発見した。

かなり古そうな地図で“国道299号線”がかなり地図の端のほうに書いてある。

『国』という言葉から察するにこれはこんな世界になる前の地図だと俺は理解した。

そしてどうやらここの村の名前は、楠郷村なんごうむらというらしい。正直15年間生きてきて、この村の名前なんて気にしてこなかったので、知ったところでどうでもいいというのが感想だ。

だが、この地図にはこのあたりの道なども記載されているため拝借することにした。決して盗んだ訳ではない。

コンパス探しに再び戻った俺は次にロッカーの隣のキャビネットに注目した。

書類のような現在では全く意味をなさない紙類が入ったキャビネットを俺は中を探した。

こんな紙切れを荒らしても、このご時世誰も文句を言わないのがある意味いいところなのかもしれない。

すると奥のほうに固形物を見つけ取り出してみると、コンパスだった。

「こんなところに誰が入れるんだよ。」

思わず発してしまったが本当にここを探してよかったと思った。


自治会館を出て俺は先ほど拝借した地図とコンパスを照らし合わせてみる。

どうやらこの地図は最新版らしい。

道路のアスファルトはひび割れて、整備が行き届いていないが、地図が示す方向であれば南南西はこの道路を進むらしい。

俺は歩き出し、周りを見渡す。

昔、三葉と弥恵でこの道を通ったのか、何となくだが見覚えのある景色が続く。

南南西の廃屋。そう頭に言い聞かせ廃屋らしきものを探す。

すると突然、開けていた道が木々の茂る林のようなところにたどり着いた。だが道はまだ続き廃屋らしきものもまだ見て今いので先を進むことにした。

木は奥に行くに連れて密度が高くなり道幅は狭くなって、やがてアスファルトの道路は途絶え獣道と化してしまった。それでも俺は進み続けて、一件の家にたどり着いた。

見た目は腐った木で出来た掘っ建て小屋。これが俊一郎さんが言っていた“廃屋”だと確信した。

俺はまた地図とコンパスを照らし合わせて現在地を確認する。

今までずっと一本道だったのでどの道なのかはわかるが、周りに目印となるところがなかったので現在地まではわからなかった。


俺は少し緊張したが、ゆっくりと近づいて木の扉の前に立ち、一度深呼吸してからノックする。

『•••』

木が古すぎて強く叩かないとならなかったので俺は壊さない程度に、

『ゴンゴン』

先程まで物音ひとつしなかった掘っ建て小屋が、急に『ドタバタ』と木材の『ギィー』と悲鳴を上げる音がした。

そしてその音はどんどん大きくなり扉の前で1度物音が無くなったがすぐに、今度は扉をガタガタと動かす音。

ガタガタしていると、徐々に扉が開いていきお爺さんが現れる。

髪は白髪で全くといいほど整えておられず、顔は皺だらけで服も麻袋ではないかと疑うほど質素なものだった。

するとお爺さんは俺をみるなり皺を寄せて

「何か用か?」

お爺さんが低い声でそう聞く。

「えっと、この辺りの伝統工芸品について聞きたいことがあって俊一郎さんに聞いてここまでやって来たんだが。」

「俊一郎の奴、なんでこんな小僧を寄越したんだ。で、伝統工芸品っていかづちのことか?」

「雷?」

「あぁ、500年以上前に使われたのが最後だが、それがどうかしたのか?」

「それに使われる鉱石って何かを聞きたくて。」

「鉄に硫黄に硝酸カリウムだが。」

「袋に入ってる鉱物はそれと同じものか?」

俺は袋を取り出しお爺さんに渡す。

お爺さんはそれをよく見て1分もかからないうちに、

「これは、酸化鉄とだな。硫化鉄だな。」

「じゃあ還元すれば良い訳だな。」

「おい、何をするつもりなんだ。」

「前に投票しただろう。慶三を迎え撃つって。」

「あぁ。そんなことやっていたな。」

「時間がないんだよ。だからとっとと溶解炉を修繕しなきゃなんない。」

「それで?」

「出来れば、あなたにも手伝って貰いたい。」

「破壊兵器を作るつもりか?」

「えっ?破壊兵器ってなんだ?」

「雷を何か知らないのか?」

「あぁ。伝統工芸品なんだろ?」

「勝手に皆が言ってるだけで、伝統ではない。」

「じゃあなんだよ?」

「取り敢えず、俺も作業に同行する。雷を作るつもりなら取り扱いに注意しなけりゃならん。」

「そうか。因みに俺は業。」

「あぁ、名前をまだ言ってなかったな。俺ははぜだ。よろしく。」


お久しぶりです。

去年の9月に投稿して音沙汰なしでしたが、諦めた訳ではありませんよ。

ただ個人的にこの話『某の刃』に似ていると思い(弥恵の若い頃のマウスピースが『某子』の加えている竹が自分の想像と同じ)、スマホの代わりのようなEXOエクゾですが、ネットで調べてみると韓国のグループだったりと、被りが連発して大丈夫なのかと怯えていました。

実際は面倒–––––


さて、今までの不投稿の言い訳をしたところで次回も未定ですので悪しからず。


ではまたいつか。

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