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これからの「魔素」の話をしよう

 王都の郊外にある王立魔素研究所。

 魔法の仕組みの理解には必要不可欠である魔素がどのようなものか解明する研究は無くてはならないものとされ、重要な基礎研究の一つとして位置づけられていた。

 各国は莫大な予算を投じてこの研究を奨励し、魔法研究職を志す者たちはこぞって魔素研究へと志願してその地位を争った。

 魔法と座学の才能にあふれたウィズはその争いの中でも常にトップを走り続け、当然のように魔素研究への道と進んだ。


 魔素研究は様々なデータの比較によって行われる。

 空気中に含まれる魔法に影響を及ぼすらしきものを魔素と名付けたものの、根本の魔素が何かということが判明していないので比較による推測とその検証によって少しずつ解き明かそうということだ。

 比較されるデータは魔法の種類、強度、射程等に及ぼす影響や場所や天候などの周囲の環境の違いによる影響等多岐にわたる。


 その中でウィズは地形の環境の違いによる魔素の影響についての研究を行っていた。

 かねてより分かっていた水源や火山近くでの魔素の影響が大きくなることに着目したウィズは地下から魔素が運ばれてきているのではないかとの推論を立て、既にその研究チーム内で一定の評価を得ていた。



 「うーん、何が違うのかな。」


 昨日取れたデータとにらめっこする。

 明らかに異質な結果を残したそれは邪神が居座っている場所にほど近いところからとれた魔素のデータだ。


 数か月前、火山が近い地域からとれた空気を使って前に建てた推論の検証実験を行っていた中で上手く魔法が発動しないデータが取れて推論に不備があったのか悩んでいたところ、邪神の存在を知らされてどうやらそのデータの魔素は邪神が影響しているらしいということが判明し、研究所内で瞬く間に邪神周辺からとれた魔素の比較実験が優先されるようになった。

 僕も自分の実験から始まったことなので他に譲るものかとひたすらに実験を繰り返していた。


 昨日取れたデータは魔法が発動した直後の空気の密度が通常と比べて濃いというものだった。

 これは普通ではありえないことだ。

 

 魔法が発動すると何か空気中のものが変化して魔法で出来上がるものになるらしいということが確認されている。

 つまり空気の密度は普通では変わらないはずだ。

 なのに密度が濃くなっているということは何かが加わっているということになる。

 どうやらそこに邪神に対する理解と魔素の構造を解き明かすヒントがありそうだ。


 「長いこと悩んでいますね。そんなに難しいデータでもとれたんですか?」


 後ろから話しかけられ振り返ると後輩のルミナがいた。

 彼女は僕と同じく王立学院を首席で卒業し、うちの研究チームへとやってきた。

 権勢を誇るアウロラ家の長女であり眉目秀麗かつ優秀な彼女は学生時代からひたすらにモテ続けている。

 僕も実際何人もの男が交際を申し込んでいっては玉砕していったのを見た。

 彼女の弁によるとどうやら今はどこかに嫁ぐだとかは興味が無いらしい。


 「ちょっと気になるデータが取れてね。」


 「へー、どんなのですか?」


 「邪神の周辺からとれた空気中で魔法を使ったんだけど、空気の密度が濃くなってるんだ。」


 「そうなんですか!気づきませんでした。何で密度が濃くなったんでしょう。」


 「おそらく物質が変換されたのではなく生成されたんじゃないかと思う。」


 「生成ですか?」


 「そう。邪神周辺の魔素を使って魔法を発動させると上手くいかないのは良く分かっていることだと思うけどそれは逆に発動しないわけじゃないということなんだ。」


 「………!!」


 「ということは何が原因で発動しにくいかということについて考えないといけなくなる。じゃあ魔法が上手く機能する条件とは何だろう?」 


 「今のところ、空気中に含まれる魔素の十分な量そして魔法を使う者の技量と言われていますね。」


 「そうだね。ここで僕たちは空気中の魔素に何か変化が起こったのだろうと推測を立てる。だがもうちょっとその前に深く考えてみてほしい。魔法を使う者の技量って何?」


 「詠唱時は言葉による定義づけ、そして無詠唱の際には使い手の現象に対する理解と想像力が肝になってくると認知されています。」


 「その通り。じゃあここでさっきの密度が濃くなっとことと絡めて疑問に思うことはないかい?」


 「…魔法を使用した結果が想像と一致していない。」


 「さすがだね。つまり我々は当たり前のように魔法は空気中の物質を変化させて行うものだと経験で知っている。しかしそれが変化させるのではない、もしくは変化させるだけではないとなったときに想像したものとの差異が生まれてくる。これが原因じゃないかと思うんだ。」


 「…はあ、さすがですね。私は当たり前のように魔素の変化にしか着目していませんでした。でもじゃあ一体何が加わって密度を濃くしているんでしょう?」


 「それが分からなくて今困っているんだ。そもそも僕たちはまだ魔法が空気中の物質を変換していることは知っていても何が変換されているのかまでははっきりと知らないじゃないか。」


 「そうですね。でもこの謎が解ければ空気中の変換される物質も何か分かるということじゃないですか!!!」


 「…調子が良いね。でも君の言う通りこれはチャンスでもある。幸いまだ思いついて確認できていない実験もあるから一緒に見ていこうか。」


 「はい!!」


説明回でした。矛盾しないようにするの難しい…

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