テンプレキター!
トラックにひかれて意識を失っていた僕は急に目の前が明るくなったように感じた。
もしやと思い、辺りを見回す。
するとこの世の言葉では言い表せないほどの美しい女性がいた。
「ようこそコオスへ。」
その言葉を聞き、思わずよっしゃ!と叫びたくなる気持ちを抑えつつ聞いた。
「えっと、あなたは?僕は確かトラックにひかれて…」
「私はヤーと言います。あなたの住んでいる世界とは別の世界コオスを管理する神です。突然ですがお願いがあって死んだあなたを魂が回収される前に呼び出したのです。勇気ある行動を取ったあなたならきっと叶えてくれるはずだと思ったのです。」
「お願い?」
「はい、現在コオスは侵攻してきた邪神によって魔素が汚染され、文明が破壊され続けています。あなたには勇者となって転生していただき、他の勇者たちと共にコオスが壊れる5年以内に邪神を討伐していただきたいのです。」
予想通りよくある異世界転生のようだ。
正直女子高生を助けたのは善意とか助けて惚れられるとかを期待したからではなく、つまらない日常から転生して異世界に行けないかなと投げやりになった頭で考えたからで、ここまで望み通りの展開になるとは思っていなかった。
さすがに本気で異世界転生できるなんて思ってもいなかったし。
ただせっかく手に入れた異世界転生なので今度の人生は楽しんで生きていきたい。
そのためにもここでの話はとても大切だ。
今のところ邪神と他の勇者ってとこが気になるのと、チートをもらえるかどうかが重要そうだな。
敵は人間の文明を滅ぼす邪神のようだし、魔族との争いみたいなどっちが悪いかわからない戦いに巻き込まれることはなさそうだ。
いくつか質問してみるか。
「邪神はどんな存在なんですか?5年以内に倒せと言われてもあまり強いと難しいと思うんですが。それに僕は今まで戦ったこともありませんし…」
「邪神は確かにとても強いのですが、勇者からの攻撃なら大きなダメージを食らうことが確認されています。戦いには慣れてもらうしかありませんが、その代わりにあなたに合った異能とよばれる特別な能力を差し上げます。あと、勇者の肉体は強靭にできています。武術などの技術は身についておりませんが十分なほどの能力のはずです。」
「なるほど、他の勇者はどれぐらいいるんでしょうか?」
「今ある国につき一人ずつ勇者が召喚されています。今コオスには12か国存在するのであなたを含めて12人で討伐してもらうことになります。それで戦力的には十分なはずです。」
よし!余裕をもって倒せそうな戦力にしたのなら大丈夫だろう。
よくある異世界転生ものを基準にして考えると12人も勇者がいるなら過剰戦力にもなりそうな気がするし。
あとは何のチートをもらえるかだが…
「先ほど異能と言いましたが、どんなものですか?」
「それは転生後に確認できます。私は異能の素を与えるだけなので肉体を構成した後定着する能力がどのようなものになるかまでは分からないのです。転生した国に確認できるようになる装置があるので向こうで聞いてみると良いと思います。」
好きな能力とかをもらうことはできないのか。
まあどうせ元の世界では死んでしまったんだし今更拒否するなんて選択肢は無い。
もともと行けると思ってなかった異世界に行けるようになった以上、これよりさらに高望みするのも欲張りすぎだろう。
「分かりました。じゃあ転生して頑張ってみます。」
「そうですか!ありがとうございます。助かりました。それではこれからあなたの精神を送還し、肉体を構成します。どうかこの世界をお救いください。」
その言葉を聞くと、僕の視界は暗転した。
「まさか彼の因子が転生してくるとは思いませんでした。彼には存分に尽くしてもらいましたし、覚醒することはないでしょうが途中で死ぬことのないようせめて強めの権能をあげましょう。私の世界を横取りに来た邪神も万全に倒せることですし…」