第71話(見えない二人)
浅蜊「え……?!」
紅「この人って。」
黒峰「お前は……。」
白雪「……っ!」
相川「なんであんたがここに!!」
そこにいたのは何度も画面の中で見たであろう、また闘ったことがある者もいるよく知った人物だった。
零「……こんにちは?」
浅蜊「そうだね今はまだ暗くないし……ってそこじゃないわ!!」
零「……?」
浅蜊「妹ちゃん!ヘルプミー!!」
麗羽「見ての通りお友達の零ちゃんでーす!」
紅「信用できるわけないでしょ。絶望級五人でも敵わない相手と一緒にいられないわ。」
麗羽「味方になってくれるとしても?」
紅「……?!」
花蓮「詳しく聞かせて貰えないかしら?」
零「約束……したの。」
麗羽「この子はお姉ちゃんに会いたいだけ。ここにいれば会える可能性が他より高くなるよ!って思って連れてきたの。」
黒峰「どうしてそう思ったんだ?」
麗羽「だって『索敵』の花蓮さんがいるし、順位高い人たくさんいるし『不心』のお兄ちゃんもいるから。」
浅蜊「なるほどぉ!」
紅「ちょっと待って。」
麗羽「なにか変だった?」
花蓮「私も多分同じことを思ってる。」
紅「あなたが零に声をかけたのはここに来る前でしょう?なのに私達の能力を知っているのはおかしいわ。」
麗羽「うっ」
花蓮「順位高いのはまあわかるけれど『索敵』まで明確に知っているのはなぜ?」
麗羽「うーん……。仕方ないね。範囲指定オール。」
黒峰「何を……っ!」
麗羽「ということでよろしくね♪」
浅蜊「よろしく零ちゃん!」
紅「よろしく。」
花蓮「まあいいんじゃない?」
何が起きている?皆さっきまでと様子が違いすぎる。
黒峰「麗羽。何をした?」
麗羽「どうしたの?」
黒峰「……なんでもない。」
麗羽も様子がおかしい。おかしいフリをしているだけかもしれないが、、。
零「よろしくなの。」
黒峰「一つ聞いてもいいか?」
零「なに?」
黒峰「俺達はモニターからお前の試合を見ていたが、時々様子が変だった気がするのは気のせいか?」
零「……?」
麗羽「乙女には誰だって言いたくないことがあるの!お兄ちゃん察しなさいよ!」
黒峰「あ、ああ。すまない。」
これ以上聞くこともできなさそうなので、適当な理由をつけて部屋を出た。
麗羽「お兄ちゃん!」
黒峰「なんで付いてくる。」
麗羽「お兄ちゃんには話しておこうと思って。零のこと。」
黒峰「ほう?」
麗羽「あの子は行方不明のお姉ちゃんを探せる能力者と一緒にいたの。でも捜索は一日一回しかできない能力だった。」
黒峰「ずっと一緒にいればそのうち会えたんじゃないのか?」
麗羽「その能力者はそもそも探す気なんてなかった。能力を脅しにあの子に酷いことを沢山した。」
黒峰「だから連れてきたのか?」
麗羽「うん。花蓮さんの能力なら何度でも使えるし……。」
黒峰「麗羽。」
麗羽「どうしたの?」
黒峰「お前もしかして未来から来たのか?」
麗羽「?!」
黒峰「冗談だ。能力を知れる能力ってところだろう?」
麗羽「あ、うん。そーなんだー!」
黒峰「それなら納得がいく。零の姉探しはやっておこう。だがさっきお前に対して疑問を抱いていた連中が、急になにも聞かなくなったのはなぜだ?」
麗羽「なんで覚えてるの?」
黒峰「逆に俺以外が忘れているのが……」
麗羽「お兄ちゃん『不心』なんでしょ?端末見せて!」
返事をする前に端末を取られてしまう。
麗羽「ほーらやっぱりふしん……『不信』?!なにこれ?!」
黒峰「見ての通りだし能力で知っていたんだろう?」
麗羽「う、ううううん。ちなみにどんな能力なの?」
黒峰「それは誰にも教えていない。だから言えない。」
麗羽「そっかー……。私用事あるからそろそろ行くね!」
妹は小走りにいなくなってしまった。騒がしいやつだ。
今回はやはりおかしい。お兄ちゃんの能力が違う。知らない人が仲間にいる。私どうしたらいいの?健さん……。
話を終え一人になった俺は、特に予定もなくただ歩いていた。そんな時だった。
???「ねえ。おにーさん?」
黒峰「なんだ?」
思わず反応してしまう。知らない声だ。
???「え!反応してくれた人初めて!!」
黒峰「何当たり前のこと言ってるんだ?普段無視されているのか?」
???「まーそんな感じ。理由はわかってるんだけどね。」
黒峰「理由?」
???「能力のデメリットなの。」
黒峰「なんの能力を使えるんだ?」
???「あ、私の能力じゃなくて妹のなの。」
黒峰「なんで妹の能力のデメリットをお前が受けるんだ?」
???「妹の能力が強すぎるからじゃないのかなー?デメリットが自分の一番大切なものが……。」
黒峰「大切なものが姉だったわけか。」
???「そゆこと!もし妹に会ってもこの事内緒にしてね。」
黒峰「なぜだ?」
???「おにーさん以外に私見えないし話せないもの。きっと嘘だと馬鹿にされちゃうよ。」
黒峰「そうか。妹の名前はなんと言うんだ?」
???「零。私の名前は玲奈。」
黒峰「妹の名前もう一度聞いてもいいか?」
玲奈「零だよ。」
なんてこった……。探してる姉って今目の前にいるこいつか。
玲奈「おにーさん?」
黒峰「いやなんでもない。普段は妹と一緒にいるのか?姿が見えなくたってそばには居られるんだろう?」
玲奈「うん。今はたまたまお散歩に出ているだけ。なんか人が多くてみんな零と話したがっていたから。」
黒峰「そうか。また会うかもな……玲奈。」
玲奈「うん?楽しみにしてるね。」
思わぬ収穫だったな。零と玲奈か。デメリットで姉の姿が見えなくなる……坂本と似ている。
坂本か、今なら話しても問題ないかもな。
部屋に忘れ物を取りに来たと嘘をつき坂本を連れてまた外へ戻る。
坂本「俺の事見えるんだよな!!黒峰!!」
黒峰「ああ。」
坂本「みんな酷いんだよ!俺の事いないみたいに無視してさ!!泣いちゃうよ!?」
黒峰「いつからそうなった?」
坂本「えーと、、お前の妹が来てからかな。」
黒峰「麗羽になにかしたのか?」
坂本「いやー特には。あなた誰?とは言われたかな。」
黒峰「能力は話したのか?」
坂本「話してないよー。」
黒峰「メンテナンスが終わってから能力に変化はあったか?」
坂本「いやー特には無かったかな。」
黒峰「そうか。一つ疑問なんだが、例えば呪いを能力でかけられたとして自身を逆行すればその呪いは解けるのか?」
坂本「解けるけど三日前に戻したならその三日後結局呪いはかかっちゃうよ。」
黒峰「今自分に逆行はかけられるか?時間は麗羽が来る五分前。」
坂本「やってみるよ。……多分できた。」
黒峰「あの通行人に声をかけて十分間話してみてくれ。」
坂本「凄い無茶ぶりだね?!……わかったよ。」
十分間話しているのを遠目に眺めて推測が確信に変わる。
坂本「あの人途中から全く会話が噛み合わないというか話さなくなっちゃったんだけど?」
黒峰「いやそれでいい。お前は麗羽によって今の状態になっている。」
坂本「なんで?!」
黒峰「原因は俺のほうで探ってみる。自分自身に逆行をかけるのは俺が許可するまでやめておけ。」
坂本「えー!使えばみんなと話せるのに?」
黒峰「お前そんなキャラでもないだろ。それに今度麗羽に見つかったら殺されるかもしれないぞ?」
坂本「えっ。わ、わかった。大人しくしてる。」
坂本の件もそれとなくわかった。やることを頭の中でまとめておこう。
・坂本に対して麗羽が何をしたのか
・零の能力を聞き出す
とりあえずこの二つか。そろそろみんな零と一通り話したことだろう。
今後の方針を決めるため俺は皆がいる部屋へと足を進めた。




