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この世の中で  作者: ib
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第61話(怠け)


前回同様転送されると右トーナメントの者達は控え室へと飛ばされた。


黒峰「まずは武道だな。」


相川「興味ないからお話して待ってない?」


白雪「……。」


黒峰「一応画面だけは見ておけ。雑談でいつも通りの調子でいられるなら三人で話すことにしよう。」



三人で。この言葉に不満を持つ者と微笑む者。


黒峰「始まる。」




武道「よろしく頼む。」


毎回毎回挨拶をするのが彼なりの礼儀なのだろう。真正面からぶつかりそれでいて全て勝ってきているのだから凄いことだ。


???「……よろしくね〜。」


なんとも眠そうな、だるそうな声で挨拶を返す対戦相手。とてもこれから闘う心構えには見えないが……能力と関係あるのかもしれない。


武道「俺は武道と言う。良ければ名前を聞かせてくれ。」


???「……あ、ぼくー?……ぼくはね〜……緩浅(ゆるあさ)って名前だよ〜。」


武道「ありがとう。どちらが勝っても負けてもいい試合をしよう。」



浅蜊「話すのがワンテンポ遅い系男子かぁ。クラスに1人くらいはいるやつだね〜」


紅「私は少しイラッとするわ。」


影切「ご、ごめんなさい……。」


紅「あ、そんなつもりじゃなかったのよ。あいつに言ってるだけだから気にしないでね。」


影切「よかった……でも気をつけないと。」


モニター組では賛否両論の印象だが、仲間になると決まっているわけではないし気にする必要もないだろう。



武道「では行くぞ!」


本人は小手調べのつもりだが常人が貰えば一発で気絶は逃れられない左足の蹴り。


緩浅はその蹴りを……避けることなく右手で受け止めた。


決して武道は手を抜いてはいないし、目で追えない者のほうが多かったであろう蹴りを止めて見せた。


武道「ほう。やるではないか。」


緩浅「……んー?」


しかし彼が素早く動いて止めたようには見えない。寝癖も直さずパジャマのままここへ来ているその見た目のせいでそう見えないだけ?


雑談をしながら画面を見ていた黒峰と白雪も思わず画面に釘付けになっていた。もう一人は愛する彼の横顔に釘付けだが……。



ふぅーーー……。大きく息を吐き次の攻撃へと移る。


丸太の様な右足で今度は相手の足首の辺りへ足払い……ではなくフェイントを入れて本命は左腕中段突き。


この動作がわかるということはすなわち人間の領域ではない。武道という男はもはや人間が到達できないところまで極めてしまっている。


気絶などという甘えでは済まさない命を脅かす中断突き。


彼はその攻撃をまともに……受けず避けず、またもや受け止めて見せた。



浅蜊「どういうこと?!俺まったく見えなかったんだけど?!」


花蓮「心配しなくても貴方だけではないわ。」


舞花「あたしにも見えてない。見えたやつはほんのひと握りじゃないか?」



あまりの攻撃速度に見えていたのは黒峰グループの中では二人だけだろう。


それなのにどう見ても闘う気0の彼は止めている。



武道「今目で追っていなかったようだが……。」


緩浅「……んー?……見えるわけないじゃん。……ぼく人間だしー?」


どういうことだ?俺の攻撃を止めているのに本人にその自覚がない……。


武道「ここまでどうやって勝ち上がってきたのか聞いてもいいか?」


緩浅「……んー?……サドンデスがどうこう言ってたね〜。……ぼく覚える気がないから聞いてなかったけど。」



俺も細かいルールは覚えてない。だが、これを聞いている花蓮ならば答えを導いてくれるだろう。


武道「感謝する。では続きと行くぞ!」



再び人間の領域を超えた攻撃を繰り出す。数百のフェイントを入れながら数千もの拳と蹴りが襲いかかる。


しかし一発たりとも気だるい男には当たることなく全て受け止められた。


一時間もするとさすがに武道の息が少しばかり上がり始める。対して彼のダメージは0。体力の減りもほぼ無いように見える。



武道「そろそろどうだ?花蓮。」


モニターで見ていた優秀な参謀へと声をかける。


花蓮「少なくとも彼には()()()()()し、()()()()()()。」


浅蜊「ますますわけわかんないじゃん!」


花蓮「でも武道より強いことは()()()()()。」


浅蜊「なぞなぞじゃないんだから……これじゃあわかんないんじゃないの?」


武道「……ありえない、か。俺の動きが変に見えたか?」


花蓮「いいえ。武道はいつも通りよ。私には何も見えないもの。」


武道「わかった。」



この二人は一緒にいた時間が長いこともあり、お互いを信頼しているようだ。

何を言っているのかまったくわからない他のメンバー(とくに浅蜊)を置いて結論は出たようだ。



武道「会話している間待っていてくれるとは……感謝する。」


緩浅「……んー?……動くのがめんどくさかっただけ。……気にしないでー。」


今ので確信に変わった。能力『怠け』とはどういうものなのか。


武道「決着を付けさせてもらう。」


緩浅「……無理だと思うけどなぁ。」



一言告げてから再び目に見えない速度で動き始める武道。

これでは先程と何も変わることなく受け止められるが……?


変わったことはあった。フェイントは先程と同じ全力だが、本命の攻撃が……亀のように遅い。


浅蜊「え?」


紅「……。」



今までの攻撃に比べれば手抜きもいいところだ。これなら幼稚園にすら躱せてしまう。


そのパンチを武道は全力で……亀の速度で放っている。


たった一突きだが彼に届くまで五分かかった。

だが、この五分が勝敗を決めた五分になった。


目に見えない攻撃を止めていた男はこの亀並の遅さの攻撃をまともに受けて倒れたのであった。




勝者 武道。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


浅蜊「結局どういうことだったの?俺未だにわからなくて頭モヤモヤしてんだけど!」


紅「私も気になるわ。」


謎がわからないメンバーは次々と戻ってきた武道に疑問を投げかけた。


武道「それについては花蓮のほうが上手く説明できるだろう。」


花蓮「丸投げなのね……まあいいわ。『怠け』ってどんな能力だと思う?」


浅蜊「相手を怠けさせて戦闘力を削ぐみたいなイメージかなぁ。」


花蓮「私も最初はそう思ってた。でも武道は手加減できないやつなのは皆も知っての通りよ。いつも通り見えていないのなら尚更武道は怠けてなんかいない。」


雷電「てことはあいつ元々あんなやつじゃなくて能力で怠けてるってことか?」


花蓮「そうなるわ。『怠け』は自身が怠ける能力だと推測したのよ。」


舞花「でもそれじゃあ信玄の攻撃を止める理由にならない。」


花蓮「そこが一番の謎だったから一時間考えたわ。デメリットだけの能力ならここまで勝ち進めるわけがない。そこで彼の言葉に着目してみたわ。」


黄泉「サドンデスが……って言ってましたね。」


花蓮「サドンデスはお互いが一度も攻撃を当てない限り起こらない。ということはどんな能力でも彼にはダメージを与えられていないということになる。」


紅「それはわかるわ。」


花蓮「それが変なのよ。」


浅蜊「頭こんがらがってきた……。」


花蓮「彼は攻撃を避けていないのよ。受け止めているのにダメージは0。受け止めているなら少しばかり腕に衝撃が残ると思わない?ましてや武道の攻撃なら折れてもおかしくないわ。」


雷電「たしかに……。」


花蓮「だから『怠け』は自身も怠けるし相手も怠けるのよ。」


影切「矛盾してませんか……?」


静かにしていた彼女も声をあげるほど花蓮の説明は矛盾していた。


花蓮「つまり。武道と攻撃は止められていないし当たっていない。」


浅蜊「どういうこと??さっぱりわかんないよ!」


花蓮「受け止めたら衝撃でサドンデスにはなるわけない。だから受け止めているように見えるのよ。」


紅「でも武道の様子だと攻撃は受け止められているとハッキリ認識しているようだったわ。」


武道「その通りだ。俺は攻撃を受け止められている。」


浅蜊「え?ん?え?????」


花蓮「実際は攻撃が当たっていないのに武道の体は当たっていると錯覚しているのよ。『怠け』が発動しているのは攻撃している体の部位に対して。()()()()()()()()()()という感覚を怠けさせているの。」


雷電 浅蜊「????」


紅「なるほど……。馬鹿二人には難しいわね。」


武道「????」


紅「あなたもなのね……。だから指示を聞いただけってことかしら。」


花蓮「その通りよ。このカラクリがわかったから私は武道にいつもと違う行動をさせた。」


紅「わかりやすい例を挙げるなら……そうね。お風呂で頭を洗って髪についた泡を流す。当たり前のことよね?」


浅蜊「うん。」


紅「でもその日は頭を洗っていないのに髪を流しているの。ただ髪を濡らしただけね。」


浅蜊「なんで頭洗ってないの?」


紅「それが『怠け』によって怠けているからよ。」


浅蜊「頭洗うのを忘れてるってこと?」


紅「いいえ。頭は洗ったと思っているのよ。洗っていないのに。これが感覚の怠けという現象よ。」


浅蜊「つまり寝ることを怠けさせられたら寝てないのに寝たと思っちゃうってこと?」


紅「ええ。次の日体調不良でもちゃんと寝たのにどうして?と思うでしょうね。」


浅蜊「……!!わかった!!」


雷電「俺も!!」


紅「続けて構わないわ。馬鹿二人に説明はついたから。」


花蓮「ありがとう。感覚の怠けによって武道の攻撃は寸止めなのに受け止められていると思いこんでいる。これは普段通りの感覚であればあるほど勘違いが起きやすくなる。」


一呼吸間を置き彼女は続けて話す。


花蓮「サドンデスになる連中は自分の感覚を信じてやまない。だって一番信用できるのは自分自信に決まっているもの。だから自分を信用したら『怠け』には絶対勝てない。」


武道「俺はその事を聞き花蓮に全てを(ゆだ)ねた。」


花蓮「勝つためには普段絶対しないことをして感覚を怠けさせないこと。尚且つ自分を信じないこと。」


その答えが亀の速度で放つ攻撃という。


花蓮「武道を常人未満の存在にして、攻撃が当たったと思っても止めずに振り切ること。この二つを実行させた。」


紅「それであの結果になったわけね。」


幸運「一つ質問いいですか?」


花蓮「どうぞ。」


幸運「今の聞いてる限りサドンデスになっても決着つかないように思えるんですけど……。」


花蓮「それは簡単な話よ。攻撃し続ければもちろん精神面、体力面どちらも消耗する。何せ攻撃は全て当たったと思っているのだから。だから降参や疲労から転ぶなどの自滅してもおかしくないわ。」


幸運「なるほど……!」


服部「ナマケモノは一日の大半寝て過ごすっていうもんな!」


浅蜊「だから緩浅が自滅することはないのかな?ほとんど動いてなかったし。」


紅「そうでしょうね。食料や水が無くてもしばらくはあの調子でしょうね。」


花蓮「カラクリはこんなところよ。長々話してるうちに左トーナメントが終わったみたいよ。」



主に浅蜊と雷電の二人が理解するのに時間を要し、六時間ほど経過していた。



黒峰「そろそろだ。行くぞ。」


相川「うーん!眠たくなって来てたからよかった!さっさと殺して黒峰君のことみよーっと!」


白雪「頑張らなきゃ……っ!」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


いやいやこれまた頭がよく回ること!

(それがし)びっくり仰天して思わず聞き入ってしまった!


能力を知っててぇ?隠すのは楽しいから?これからも黙っていることにしようかなぁー??ええ。ええ!



お兄ちゃん……。麗羽(れいは)のこと忘れてないよね?あの約束覚えててくれてるよね?


やっと。やっと会える。『不信』なんてお兄ちゃん以外にいないもんね……!











┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ランキング表

1位 零(→)

2位 ???(→)

3位 相川モルテ(→)愛の死神

4位 白雪美鈴(→)氷結

5位 牙王(→)不死身

6位 岸島海斗(→)解体

7位 武道信玄(→)成長期

8位 黒峰蓮太(→)不信

9位 墓守(→)墓荒らし

10位???(→)災害

11位???(→)透過

12位???(→)

13位 南雲砕月(→)好きな鳥と同じ能力を得る

14位坂本輪廻(→)リバース

15位???(→)

16位 紅神威(→)実体そのものが炎

17位 緩浅眠(→)怠け

18位 雷電電二(→)実体そのものが雷

19位 ???(→)殺戮者

20位 ???(→)

21位 ???(→)

22位 ???(→)

23位 ???(→)耐性

24位 ???(→)予知

25位 ???(→)

26位 舞花咲夜(→)ガンマン

27位 ???(→)

28位 ???(→)芸術

29位 ???(→)



32位 ???(→)豪運


34位 ???(→)


36位 ???(→)





42位 幸運有(→)少しの幸運を


45位 ???(→)


59位 ???(→)


215位 影切千歳(→)影を奪って能力も奪う


415位 浅蜊健(→)反発


500位 服部圭太(→)重力を操る


1500位高橋隼人(→)離脱


4000位 紅美佳(→)炎を操る。自らも燃えてしまうが青い炎も出せる。




10500位 伊藤研二(→)触れた敵からダメージを受けた時…



102万位 雨水花蓮(→)索敵


239万位 葵(→)全身から針を出せる


312万位 佐々木知優(→)一日三回まで全回復

313万位 黄泉雫(→)死者蘇生


582万位 四辻(→)特定の空間からの移動を禁止する。


800万位 ???(→)調査


参加人数840万人


戦わないものはサポーターになれる。


現在のTOP10の居場所

1位 新潟県

2位 北海道

3位 東京都

4位 東京都

5位 沖縄県

6位 沖縄県

7位 東京都

8位 青森県

9位 静岡県

10位 東京都


1から10は絶望級

11から100は怪物級

101から1000は化け物級

1001から10000は超人級

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