第20話(二人の過去)
いつもより少し長めです。
凛と紅は一進一退の攻防を繰り広げていた。
紅が炎を出せばそれを風圧で消す。
凛が突きを放てば紅が持ち前の身体能力で躱す。
変ね……私の突きは見てから動いても避けられないはずなのだけれど。
このままだとまずいわね…。カラクリがバレたら殺られる……。
見てる側からすると五分五分に見える。凛とてお互いの攻撃が当たらないのだから五分五分だと思っているだろう。
しかし、紅だけは違っていた。
この状況は圧倒的不利だと。
彼女の突きは速すぎてほぼ見えていない。
それなら彼女の肩だけを見ればいい。
テレビで見たことがある。銃弾は見てからは普通躱すことができない。
だから銃口の向き、相手の目線などを読みあとは打つタイミングを予測して躱すと。
紅はそれと同じことをやっていた。
ボロボロになりながらも白雪を守りたい一心で、黒峰が来るまでは耐えると決めていた。
凛「そんなボロボロでよく動くわね。」
紅「ボロボロに見えるかしら?だとしたらあなたもまだまだね。」
凛「そうね…。信じたくないけれど、あなたが今やっていることに比べたらまだまだだわ。」
バレた……。
この読みは少しでも癖を直されたり、行動を変えられると当たらなくなる。
凛「こんなのはどうかしら?」
彼女は今まで通り同じ突きを繰り出す。
バレてないの……?同じパターンなら躱せるわっ!
……ポタッポタッ。
紅の腹から血が滴る。
躱したはずなのに……どうして…。
凛「私の剣って剣先が取れるのよ。それを飛ばしてみただけよ。」
まるで心の中を読まれたかのように説明をされた。
視界が暗くなってくる。
あぁ…また私は……。美鈴泣かないで。
美鈴泣かないで。
心配いらないわ。
私は強くなったもの。
あなたを守るから。
だから……。
もう人は殺しちゃだめ……っ!
凛「呆気なかったわね。青い炎とやらも突いて見たかったのに。」
白雪「うぅ……美佳ちゃん!返事をしてよ!」
凛「泣いてるところ悪いけど次はあなたの番よ。」
白雪「うぅ……。うぅ……。」
凛「せめて向かい合ってくれないかしら。ずっとそうしているのなら一瞬で殺してあげるけど。」
白雪「うぅ……。うぅ……。」
凛「イラッとするわね。とっとと死になさい。」
彼女の突きが白雪に向かって……
パキンッ!!
なんの音?私の剣はどこへ行ったの……?
私なんで空を見てるの?あれは……私の身体?
手は動く…顔を触って…あれ?顔がない?
あ、私死んだのね……。
彼女は首と胴体がバラバラになって死んでいた。
一瞬のことすぎて死んだことすら気づいていなかった。
???「凛のやつ死んだぜ。」
???「様子がおかしい。二人がかりで潰すぞ!」
残ったメンバー的に敵の一番目と三番目に強い者だろう。
それぞれが能力を使い白雪に攻撃する。
俺の能力は触れた物質の温度を上昇させる!
お前の温度を上げて沸騰して殺すこともできるのさっ!
俺は……!
パキン!
またこの音。二人がかりで襲いかかったにも関わらず結果は同じであった。
死体が二つ増えただけである。
あんなのどうしろっていうんだよ……これが絶望級か、、。
黒峰「着いたぞ。」
相川「疲れたぁ〜」
黒峰「紅!白雪!いるか?なんだこれは?」
公園はボロボロになっていた。
穴が空いている遊具、あちこちが焼け焦げており死体も転がっている。
なにより一番目を疑ったのは……
公園の一角が凍りついていた。
その近くに紅を抱き抱えて泣いている白雪がいた。
黒峰「大丈夫か?白雪」
白雪「うぅ……あなたもなの?」
黒峰「混乱しているようだな。」
相川「黒峰君危ない!」
パキン!
黒峰の先程までいた場所が凍りついていた。
黒峰「完全に我を失っているな。」
相川「殺しちゃう?」
黒峰「仲間だと言っている。俺がどうにかする方法を考えるから待て。」
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三歳の頃に紅と白雪は出会った。
活発な紅と大人しい白雪。
性格は反対だったが、仲良くなるのに時間はかからなかった。
美佳ちゃんはなんでもできて凄いね!私はダメダメだよ…。
そんなことないよ!美鈴だっていい所はあるよ!
毎日一緒に遊んでいた。
しかしある日白雪は見てはいけないものを見てしまう。
ウッ…グッ!!ウゥ……
紅は親に虐待を受けていた。
白雪にはどうしても隠したい事実であり、なんでもできる自分を慕ってくれている白雪だけにはどうしても見せたくなかった。
次の日。
美佳ちゃん大丈夫……?
なんのこと?
親にあんなこと……
見たの?!
ご、ごめんね…。でも私でよければ力になるよ!
関係ないでしょ!口出さないで!!
毎日遊んでいた二人が次の日から遊ばなくなった。
お前の友達えーと…美鈴ちゃんって言ったっけ?可愛いよなぁ。
美鈴がどうしたのよ!
今度のおもちゃにちょうどいいだろうと思ってな。
私はどれだけ痛めつけられても構わないから、美鈴にだけは手を出さないで!
どーしよっかなぁ~それじゃあ一つ頼みを聞いてもらおうか。そうしたらやめてやるよ。
約束よ!
ここだったわね…。
父親から言われた頼みは、町外れの古びた倉庫に火を付けてこいとの事だった。
なんでも見つかったらまずい資料を処分するらしい。
中に入り書類を探す。これね…!
あとは火を付けてここから逃げるだけ。
これで美鈴が守れるなら……!
ボッ!
メラメラメラメラ…。
勢いよく火が付き、書類は燃えていく。
あとはここから出て帰るだけ…!
ガチャ。ガチャガチャ。
あ、あれ?開かない!
ガチャガチャ。ガチャガチャ。
どうして!鍵なんてかけてないのに…!
外から鍵を掛けたのは父親だった。
資料ついでに娘も必要なくなり処分しようとしたのである。
ガチャガチャ。ドンドン!!
誰か!誰か助けて!!
どんどん火が強くなる。
書類から別の書類へ。そして倉庫全体へと火は広がっていく……。
ゴホッゴホッ。苦しい…。
美鈴あれから結局会えなかったな…。
ごめんね。また一緒に遊びたいよ…。
カチャ…ミ……ン!!
意識が朦朧として耳までおかしくなってきた……
目を覚ますと布団の中に紅はいた。
私はあの倉庫で死んだんじゃ…?
ふと近くのテーブルに手紙が置いてあるのに気がついた。
これは…?美鈴からだわ!
美佳ちゃんへ。
火傷の痕が残っちゃうかも…ごめんね。
もっと早く助けだせたらよかったのに……私ドジだから時間かかっちゃって。
美佳ちゃんのお父さんから私に話があるって呼ばれたから私行くね。
美鈴より。
私を助けてくれたのは美鈴だったのね…。
それよりもあいつのところに行ったらダメよ!!
助けに行かなきゃ……!痛っ!
よく見ると身体中に包帯が巻いてあり、全身火傷を負っているようだった。
動くたびに激痛が走る…。
美鈴…!美鈴……!
ただいまぁ。美佳ちゃん!起きたんだね!!
よかったぁ!!このまま起きないんじゃないかと思って心配したんだよ!!
美鈴!私よりもあなたこそ大丈夫なの?!
なんのこと?美佳ちゃんの火傷のほうが酷いんだから!安静にしてなくちゃダメ!
美鈴…その服って赤かったかしら……?
ううん?白かっ…いや赤かったよ……!
後日、紅は完治といかないまでも動けるようになった。恐る恐る家を覗きに行くとそこには警察が出入りしていた。
白雪家にも警察はやってきて、美鈴の親となにやら話をしていた。
多重人格ですか…。精神が不安定になると出てくると……。うちの娘がそんな、、。
精神科で検査してみないと詳しいことはわかりませんので、精密検査をしてみましょう。
お願いします。
話しが終わると美鈴は警察に連れられて行ってしまった。
幼い紅には分からない箇所が多く、なにを話しているのか理解できなかった。
でもわかったこともある。
私は美鈴に守られて美鈴はいなくなった。
私が弱いから。私が美鈴を守れなかったんだ。
今度は守れるように。美鈴がいなくならないように!
数年後美鈴は帰ってきた。最初は少し怯えていたが、私だと知ると嬉しそうに飛びついてきた。
歳を重ねるにつれて、あの日何があったのかを知った。
倉庫に父親が鍵をかけ閉じ込めたこと。
美鈴が倉庫から私を助け出したこと。
美鈴が私の父親に呼ばれ、父親を〇した事。
美鈴は極度の不安症であり、不安になりすぎるともう一つの人格が出てくること。
もう二度と美鈴に同じことはさせない。
私が頼られる存在になって安心させてあげるのよ。
高校からは東京の学校へ行く。
私と美鈴はルームシェアで一緒に暮らすことにした。
美鈴の親も「美佳ちゃんと一緒が一番あの子も安心するわ。」と言ってくれた。
高校生活初日。空にランキング表が浮かんでいた。
嘘だとは思うけど、万が一本当なら私が守らなきゃ!
こんな電子手帳あったかしら…?能力と順位?
美鈴も持ってるのね。ちょっと見せてくれるかしら?
これは……。何がなんでも能力は使わせちゃいけないわね。もう一つの人格がこれで暴れたら……
白雪美鈴 能力 『氷結』 全てのものを凍らせる
ランキング 5位
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ランキング表
1位 ???(→)
2位 ???(→)
3位 ???(→)
4位 ???(→)
5位 白雪美鈴(→)氷結
6位 風柳風太(→)風を操る。
7位 ???(→)
8位 岸島海斗(→)解体
9位 ???(→)
10位???(→)
90位高橋正(→)???
290位 影切千歳(→)影を奪って能力も奪う
350位 服部圭太はっとりけいた(→)重力を操る
8200位 凛(死亡)フェンシングの達人
8300位 紅美佳(↑)炎を操る。自らも燃えてしまうが青い炎も出せる。
9001位 浅蜊健(→)反発
11000位 研二(→)触れた敵からダメージを受けた時…
249万位 葵(→)全身から針を出せる
717万位 佐々木知優(→)一日三回まで全回復
参加人数890万人
戦わないものはサポーターになれる。
現在のTOP10の居場所
1位 新潟県
2位 北海道
3位 愛知県
4位 香川県
5位 愛知県
6位 沖縄県
7位 東京都
8位 青森県
9位 静岡県
10位 東京都
1から10は絶望級
11から100は怪物級
101から1000は化け物級
1001から10000は超人級




