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お姉さまの背中にGが居る!?~来栖 真理子の章~【1】

 お姉さまの背中にGが居る!?(https://ncode.syosetu.com/n6363fd/)のお姉さま側のザッピングシナリオです。

『カン カン カラン カラン……』


 目の前では、赤色の灯火踏切警報機がが交互に激しく点滅している。

 そして、その点滅に共鳴するかのように、踏切警報機の音が甲高い轟音を鳴り響かせていく。その音は、普通の人であれば【煩い】【騒がしい】そんなイメージなのかもしれない。

 しかし、そのメトロノームのような一定間隔で鳴り響く音は、私にとって心の傷を忘れさせてくれるような強く、優しいリズム音になっている気がしたのだった――。


 私の名前は『来栖 真理子』(くるす まりこ)

 この踏切の、少し先に建っている女子高に通う高校三年生。


 私の目の前の踏切は、通称【開かずの踏切】と呼ばれていて、この時間帯で踏切が閉じたら最後、三十分は開く事がない。でも、私がこうして踏切が開くのを待っているのは、別に寝坊などして開かずの踏切に捕まった訳ではないのだ。

 この甲高いリズム音を聞き続ける事で、過去に起きた失恋の思い出を忘れて新しい気持ちで今日を送れるような、そんな気持ちの切り替えができたからだ。

 それは、何時の頃からか日課となり、毎日三十分、こうしてこの踏切の前に立つことにしている。


 そんな、私にとっての忘れ去りたい出来事……。

 それは……数か月前の事だった。



*****



 何時からだろう……。

 私は、気が付いた時には女の子が好きになってしまってしまっていた。

 そして可愛いと感じるのは、今どきのアイドルのような創られた綺麗さや可愛さではなく、そう純粋で素朴、しいていえばちょっと芋っぽい、そんな女の子に好意を寄せるようになった。

 でも、そんな私の恋心は世間ではまだまだ理解され難く、私はこの思いをひっそりと胸の奥に隠し続けることにしていた。


 そんな、悶々とした日に終わりが来ようとは思いもよらなかった。


 ある日の放課後、午後の課外授業が終わり教室に戻ってくると、私の机の中に可愛い便箋の手紙が入っていた。自慢ではないが、容姿端麗な私はラブレターを貰うことは少なくはなかった。

 ただ、手紙の差出人は、どことなく優雅で気品のあるお嬢様ばかり……。私が心をときめかせるような方とは全くの無煙だった。

 今回は、どうだろうか? それでも少し期待しつつ、手紙の待ち合わせ場所に行くことにした。


 待ち合わせ場所に到着すると、一人の女子生徒が私を待っていた。その女子生徒は不安げな表情をしており、私が近づくと、たどたどしく話しかけてくる。


『…………?』


 少し様子が変だったのが気になり、辺りを注意深く観察する。すると、遠くから私たちの様子を伺っている何人かの気配が感じられた。


『(これって噂の……?)』


 学園で少しだけ小耳に挟んだことがあったが、この学園で【憧れの先輩に告白するゲーム】というものが流行っているという噂があった。目の前の女の子を見る限り、誰かにいわれて……といったところだろうか。

 本来ならダメ元告白で玉砕する姿を嘲笑う一種の罰ゲームのようなものらしく、悪趣味にも程があった。


 ……しかし、そんな罰ゲームにも誤算はありましてよ! 


 目の前の女の子は、背が小さく、めのツインテールが初々しい、顔がふっくらしている、ちょっと芋っぽい感じ。テレビや雑誌で取り上げるような、【すごく綺麗】でも【すごく可愛い】でもない。素朴な女の子。


 そう、それは、私の性癖にドストライクな女の子なのです!


 私はその女の子の告白にOKする。まさかの告白OKに、目の前の女の子は驚いた表情で泣き出してしまう。後で泣き出した理由を聞くと嬉し泣きだったとか……。

 遠くから見ていたギャラリーの方々も隠れるのを忘れ呆然として私たちを見ていたのは、少し気分が良かった気がした


 ……こうして、私とその女の子は付き合うことになった。彼女が私に心を開いてくれて、色々な事を沢山おしゃべりするような仲になるのに時間は余り掛からなかった。


 ――そんなある日、彼女が私に訪ねてきた。


『お姉さま……? 何か私にして欲しいことはありませんか?』


『え……? ええ、無い事は無いですけど……』


『ほ、本当ですか!? だったら、お姉さまのお願い事を教えて下さい! 私、お姉さまのお願いだったら何でも聞きますから!』


 ……いま、何でもって言いましたよね?

 私は、少し考える……。確かに叶えたい願いはある。でも、こんな、煩悩に満ちたお願いを彼女は聞いてくれるのか……。

 私も、当時はとてもピュアな心を持っていたと思う。

 彼女なら、それでも彼女なら、私のこんな儚い願いを聞いてくれるのかもしれない。

 ……そう思ってしまった。


 そして、私はうっかりその願望を彼女にこぼしてしまう。


『あ、あなたと、【監禁調教百合えっち】したい!!』


 …………と。


 その日、彼女は苦笑いをしてそそくさと帰っていってしまった。


 次の日、彼女は私の目の前に現れる事はなかった。


 その次の日も、彼女は私の目の前に現れはしなかった。


 その次の日の次の日も、彼女は私の目の前に現れることはなかったのだ。


 それから十日程経ち、流石に心配になった私は事前に調べた彼女の住所を訪ねると、既にそこは空き家になっていた。

 風の噂で聞いたのは、どうやら彼女は学園でとてもショックな出来事があり、ノイローゼになってしまったとか……。そのせいで学園に通うことができなくなり、今は何処か遠い静かな場所で治療に専念しているとか……。


 いやいやいや、ショックを受けたのは私の方ですわ!

 何でもお願い聞くからといったので、お願いしたらショックでノイローゼとか、ちょっと酷くありませんか!?

 むしろこっちが失恋ノイローゼになってしまったではありませんか!


 ……そんなこんなで、私の初めての彼女とは、こうして無様に破局してしまったのだ。



*****



 そんな、悲しい失恋の過去を忘れるために、私は学園の日直やクラブ活動の朝練が無い日は、毎日この【開かずの踏切】の前に立つようになった。

 でも、その甲斐あって、最近はもう一つ別の目的が私の中に芽生えていた。


 ……それは、私に気があるのでしょうか、私の背中に熱い視線をおくってくる一人の女子生徒の存在だった。悟られないように手鏡越しで見たその女子生徒は、前カノ以上に魅力的な芋っぽい女の子だったのだ! 念のため密かに調べ上げた所、彼女の名前は『河野 鈴絵』(かわの すずえ)、私より一つ年下の二年生だ。


 クラスメイトの印象は、【天然のドジっ子】 私的には、その話をお茶請けに5杯は飲めますわ。そして、私は決意したのです。もう、決してあの時のように同じ轍を踏まないと……!


 鈴絵はどうやら私に興味津々のようだったので、エサの前で『待て!』といわれた子犬のように、たっぷりと焦らすことにした。たっぷりと焦らした後は、さり気なくも衝撃な出会いで知り合い、そして! そして! ピュアな関係を保ちつつ好感度を上げていき、少しずつ焦らしながら私が居ないとダメな女の子にしてあげたい。

 じっくりと、蜘蛛が巣に掛かった獲物をじっくり捕らえるかのように、彼女を私の虜にしていって……。最終目標の【監禁調教百合えっち】も恥ずかしながらも承諾してくれる。そんなピュアな関係になりたい!


 私は、そんなことを妄想しながら、背後にいる鈴絵の姿を手鏡越しに確認するのだった。

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