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~第二の錦織圭たちに贈る言葉(番外)~ 『2018全仏オープン決勝戦の戦略・戦術を分析する』

作者: 目賀見勝利

           〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(番外)〜

        『2018全仏オープン決勝戦の戦略・戦術を分析する』


1. まえがき;

2018年6月パリの全仏オープン決勝戦はナダル選手とティエム選手の対戦であった。結果は6−4、6−3、6−2でナダル選手の勝利に終わった。

テニス技術の違いとふたりの戦略・戦術の違いが勝利を分けたと思われる。

今回は二人の戦略・戦術を分析する。


2. 贈る言葉;

2018年5月のマドリッド・オープンの準々決勝ではティエム選手が7−5、6−3でナダル選手を破っている。

この時のナダル選手の戦略はベースライン後方1m〜2mを基本的返球準備位置にして、ストローク戦を行うことであったと思う。特にネットダッシュを積極的に行う事も無かった。戦術(技術)はトップスピンストロークであるが、ネットより高い打点のトップスピンとネットより低い打点のトップスピンの打ち方は異なっている。

一方、ティエム選手の戦略はベースライン後方1m以内を事本的返球準備位置としていた。サーブレシーブの待機位置もベースライン付近であった。戦術(技術)はナダル選手と同じであった。

戦略の違いが勝敗を分けたことになる。(技術力の差は勝ち負けに無関係であった。)


※注記1.ネットより高い打点のトップスピン;

 ラケットを水平方向に強く打ち出し、インパクトの瞬間にボールの背面から上方にラケット面をかぶせるように振る。インパクトの瞬間は0.003秒くらいであり、この瞬間の手ごたえを的確に感じ取ってラケットを被せるように水平に振り抜く技術。

打つ時の感覚としては、丸いボール表面を背面から上面かけて、丸く舐める様なつもりで振り抜く。実際には、ガット面でボールは扁平(茶碗形の半球)に変形しており、扁平なボールの上端に力が加わることによりトップスピンの回転がボールに与えられる。


※注記2.ネットより低い打点のトップスピン;

 ボールの背面にラケットを下方から上方に打ちあげながら前方にラケットを振り抜く技術。水平に振り抜く場合より球速は落ちるので相手コート深く、ベースライン付近を狙って打ち返すことを基本とするが、ネットプレーに対してはネット際に落とす場合、パッシングショットにする場合もある。

(ナダル選手の場合、最高平均で毎秒56回転(毎分3360回転)程度のトップスピンボールを放っている。)

(ティエム選手の場合、最高平均で毎秒49回転(毎分2940回転)程度である。)

(ズべレフ選手の場合、最高平均で毎秒52回転(毎分3120回転)程度である。)

(錦織選手の場合、最高平均で毎秒49回転(毎分2940回転)程度である。)

(ジョコビッチ選手の場合、最高平均で毎秒47回転(毎分2820回転)程度である。)



マドリッド・オープンでの敗因を分析したナダル選手はパリ全仏オープンでは戦略を変えていた。

基本的返球準備位置をベースライン付近とし、甘い返球にはアプローチショットを放ち、積極的にネットダッシュしていた。また、ベースライン内の打点となる浅い返球に対してはトップスピンショットを逆クロスのサービスライン内側1m〜2mに打ち込むエースショットを決めていた。戦術地域をベースラインとサービスライン近くに選択にすることでエースショットを容易に放つことが出来ていた。

一方、ティエム選手の戦略地域はマドリッドと同じで、ベースライン後方1m以内であった。

ナダル選手が戦略地域をベースラインとしたので、技術の(戦術)差が勝敗に影響していた。それは、ナダル選手のフォロースルーは小さく、ティエム選手のそれは大きいことである。この差は返球準備位置へ戻るためのスタートがティエム選手より0.1秒〜0.2秒程度ナダル選手の方が早いことである。また、ナダル選手は低い打点のストロークをオープンスタンスで打っていることで返球準備位置への戻りを素早く行えていた。ティエム選手は低い打点ではクローズドスタンスで打つことが多かった。

ナダル選手から返球が早く到達するため、返球準備が遅れることで無理な打点となったティエム選手は甘い返球やミスショットが多くなっていた。

昔は速く強い球を打つためにインパクトで強く速くラケットを押し出しフォロースルーは大きく取れと教えられたが、現在のような強打高速ストロークボールの時代では、フォロースルーを小さくする事は重要な要素となる。ナダル選手のフォロースルーは腕を首に巻き込むような動作である。



3. あとがき;

 マドリッド、パリ共に赤土のコートであったが、ウィンブルドンなどの芝生コートでは球質が変わってくる。赤土では、踏み固められた地盤のためボールは高く弾みやすい。また、摩擦力が大きいためバウンド後の球速は遅く成る。フラットショットでザラメ砂の上を滑ってくるボールでもそれほど速くなく打ち難くはない。しかし、芝草は摩擦力が少なく、土中に張った弾力のない芝根に落下力を奪われたボールは高速に低く滑って来る。早くテークバックがとれるかが戦術のポイントになる。

6月中旬〜下旬にかけてドイツのハレで行われたATPゲーリーウェーバーオープン(芝コート)では、錦織、ティエム、ズべレフの各選手は1回戦で敗退していた。錦織選手はスウェーバックしながらストロークをしている場面が多くみられた。テークバックが遅れたり、ラケットの振り出しが遅れるのである。4月から6月にかけて球速の遅い赤土コートになじんでいた選手は芝コートでのボールの速さ・低さに感覚がなじんでいないためである。芝コートに適した戦略・戦術をどうするかである。


  

          『諸君の健闘を祈る』

        目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ

           2018年6月24日

         

参考文献;無し


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