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私立探偵は異世界を嫌う  作者: 藤木智
6/25

50:50

 コスプレメイドに担がれながらも、連れてこられたのは先程脱出した洋館だった。

 

そして玄関で出迎えたのは別のコスプレメイド。

 

冷めたような無感情に感じる目付きが特徴的な美人だったが、ボブヘアーの黒髪から覗くヘッドドレスとピンと立った猫耳が最高に似合っていない。


自分を担いできたコスプレメイドと同じ型のメイド服を着ているが、コスプレメイドとは違う次元で似

合っていなかった。


しかも後からは長細いく垂れた尻尾と矢が詰まった矢筒とクロスボウが覗いている。そして左手の指には鋭く切れ味が有りそうな付け爪。


メイド服とは対照的なオプションパーツから、何かのコスプレだと予測するのは容易な事だった。


つまりコスプレメイドその二の登場である。


否、クロスボウを背負っているからクロスボウメイドと呼ぶべきだろう。そうなると

担いできたコスプレメイドその一は凶暴そうな悪人面だから凶悪メイドで決定だ。


「コレット……おかえり……」


「ああただいま。みつけて来たぜ!」


「ぐえっ!」


 凶悪メイドは絨毯が敷かれた床に楡木を勢いよく落とす。

 

まるで土袋を下ろす様な雑な扱いに、楡木は思わず苦痛の声を挙げてしまう。


「コレット……まだ生きてるんだから……もう少し丁寧に扱って……」


「あ、悪い」


 楡木を覗き込み、適当な謝罪をする凶悪メイドに楡木は殺意が沸いた。


「それよりポーラ。薬は?」


「ある……」


 ポーラと呼ばれたクロスボウメイドはエプロンをゴソゴソと漁り、小さな魔法瓶を取り出す。


「これを飲ませれば大丈夫……」


「本当か?」


 凶悪メイドは訝しげな声をあげながら魔法瓶を取り上げた。


「以前俺が風邪を拗らせた時に、解熱剤と間違えて、語尾が『もやし』になる薬を処方しただろ?」


「今度は大丈夫……けど酔い止めと同じ色の瓶にカンタレラを入れたから……これが酔い止めかカンタレラか分からない……」


「だから?」


「フィフティーフィフティーの確率で死ぬ……」

「五分五分でデッド・オア・アライブかよ」

 

 凶悪メイドは額を抑え、大袈裟に天井を仰ぐ。そして恐ろしい事を言い出した。


「まあとりあえず飲ませてみるか」


「どちらにせよ苦しみは取れる……」


 凶悪メイドは首を掴み、手に持った瓶の中身を楡木に飲ませよとする。

 

楡木はカンタレラとい言う薬物に覚えがあった。

確か昔、要人暗殺によく使われた毒薬だった筈……


文字通り、死ぬ気で薬を飲まされるのを抵抗した。

しかしここに連れて来られるまでの間に体力を消耗仕切ってしまい、体が殆ど動かせない。


「さあグイっといけよ!」


 抵抗の意志を見せる間もなく凶悪メイドは謎の薬品を楡木の口に無理矢理流し込む。

 

温い咳止めシロップの味がした液体が口を、喉を、食道を通って行った。 


「よし全部入った!!」


 魔法瓶の中身が空になるのを確認した凶悪メイドは、首を掴んでいた手を離し、楡木から半歩ほど離れる。


「おーい。死んだか?」


「酔い止めかカンタレラ……どっち?」


 悪気も罪の意識も感じさせない女の声が響くのを感じ、楡木は飛び起きる。そして、


「ふざけんじゃねーぞ!」


 拷問を仕掛けた二人のメイドを力一杯怒鳴りつけた。


「お!無事生還」


「フィフティーフィフティーで元気になった……」


「賭けに勝ったな!」


「勝利のハイタッチ……しとく?」


 クロスボウメイドは楡木に近づき、手の平を突き出す。しかし、


「うるせー!」

 クロスボウメイドの手を払い、怒り心頭になった楡木は不満を露わにした。


「人が抵抗できない事を良い事に、訳分からねえ薬飲ませるんじゃねえ!」


「まあまあ運が良かったから良しとしようぜ!」


「何一つ良くねーよ!」

 

大笑いをする凶悪メイドに対し、本気で殺意が沸いて来た。


「所で気分はどう……?」


「どうって……」


 クロスボウメイドの言っている事が一瞬理解できなかった。


「今は怒りに満ち満ちているよ!」


「そうじゃなくて……体調は?気持ち悪くない……?」


「体調?」


 詳細に訊かれた楡木は今更気付く。

 吐き気や頭痛といった二日酔いの症状が一切無くなって居るだけでなく、消耗しきった体力も回復している事に。


「悪くないと思う……」


「じゃあこっちに来て……」


「急げ急げ」


 二人のメイドは楡木を起き上がらせると、扉が並ぶ廊下の先へと誘っていく。

「おい、ちょっと……」


楡木は流されるがままに奥へと通されていった。


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