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私立探偵は異世界を嫌う  作者: 藤木智
25/25

号令

「じゃあその騎士が犯人なんだね」[


「確率が高いと言うだけの話だ」


 リーデルに知る限りの情報を与えながら、二人は証人を探しす為、訓練場に歩を進めていた。


「その騎士って何者なんだろうね?」


「それを知る為にあの兵士を探してるんだよ」


「何所に居るんだろうね……」


「すぐ見つかる筈だ」


 サリエスが連れて来た兵士の中から見覚えのある顔を探す。


 楡木が探している証人。それは塔の入り口で見張りをしていた警備兵だった


「あの兵士なら塔に入った人間と滞在時間。それに騎士の正体も知ってるかもしれない」


「じゃあ何としても見つけないとね」


「簡単に言うなよ」


 見た限り今庭園には二三十人位の兵士が居る。しかもその中に例の警備兵が居るとも限らない。


「見つけるだけでも時間が掛りそうだな……」


「何で?簡単じゃん」


「……は?」

 何言ってるんだコイツは、と言う思いを込めて睨みつけた楡木を無視し、リーデルは大きく息を吸い込んだ。そして、


「整列!」


 突然大声を張りあげる。するとそれを合図と言わんばかりに、兵士たちがリーデルの前に集まり、全員背筋を立てて一列に並んだ。


「この中に塔の警備をしていた人は前に出て!」 


 その一声に反応した兵士が一人列からか出て、こちらに駆けつけて来た。


 背格好や顔に目立った特徴こそ無い。しかし出てきた兵士は間違いなく塔の警備をしていた兵士だった。


「皇帝陛下!私が今夜塔の警備をしていたレイス・プルート上等兵であります!」


「正直に名乗り出てくれてありがとう」


 満足顔でうんうんと頷くリーデル。


 リーデルは皇帝で、国で逆らう人間が居ない存在だった事を思い出させてくれる光景だった。


「じゃあ他の人は解散。おつかれ」


 軽く手を振ると、兵士たちは蜘蛛の子を散らすように退散して行った。最も訓練場から離れる兵士は一人もいない。数人のグループに別れ、お喋りに花を咲かせている。


「ニレどうしたの?」


「いや……皇帝の前だっていうのにみんなリラックスしてるなと思って」


「一々通る度に頭下げたり敬礼されるの鬱陶しかったから、命令しない限りそう言う事はしない様にって言う法律作ったんだよ。昔」


「もし破れば一週間の排泄宣言刑に処されます」


「……なんて?」

 兵士が告げた聞きなれない刑に、楡木は思わず聞き返してしまう。


「排泄宣言刑。トイレに行く時必ず大声で宣言しなければならない刑です」


「小学生かよ……」


 思った以上に下らない刑を聞き、思わず脱力してしまう。


 そもそもそんな刑を守る奴なんか居ないだろ。


「ちなみに女性でこの刑を受けた者は泣き叫び、全力で刑から逃れようとします」


「セクハラだもんな……」


「それで皇帝陛下はそんな女性を遠くから笑いながら眺めます」


「お前最低だな!」


 リーデルは頭を掻きながら照れ笑いを浮かべる。


 褒めてないのにこの反応はオカシイだろ。


「ところでニレ。情事聴取はしないの」


「事情聴取な」


 話が脱線してしまったが、リーデルが無理矢理本題に移してくれた。


「じゃあ話を聞かせて貰おうか。ええっと……」


「レイス・プルート上等兵です」


「略してレイプ上等兵だね」


「その略し方は止めてやれ!」


 リーデルの壊滅的と言うか犯罪めいたネーミングセンスが炸裂する。


「そもそも略さなくても名前の文字数同じだろ!」


「じゃあレイスって呼んだら良いの?」


「そうしてやれ、この人の為にも」


「分かった」


 リーデルは、自らのネーミングで人が傷着いている事を自覚した方が良い。後でキツク言い聞かせてやろうと楡木は思った。


「取りあえずレイスさん。アンタには訊きたい事が幾つかある」


「私に答えられる物なら包み隠さず正直にお答えします。賢者殿」


「嘘ついたらトイレ掃除の刑だからね」


 刺す意味があるのか分からない釘をリーデルが刺し、事情聴取が開始した。


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