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私立探偵は異世界を嫌う  作者: 藤木智
21/25

死体発見

階段は塔の壁を沿う形の螺旋状になっているため目が回りそうだ。


「あの爺さんはこれを上ってるのかよ……」


気だるく階段を上りながら楡木は愚痴る。


「まあどうでも良いが……ん?」


 独り言に気だるさを紛らわしながら階段を上っていると、上からガチャガチャと鉄を踏み鳴らすような

音が聞こえて来た。


「爺さんか?」


 騎士が履く鉄製のブーツの音だとすぐに分かった楡木は、セシルが下りて来たとばかり思った。

 しかしそれは違うとすぐ分かる。

 

螺旋階段を勢いよく下ってきたのは、宮廷警護隊の鎧で全身を固めた騎士だった。


「何だ?」


「!?」


 楡木の存在に驚いた騎士は声になっていない声を上げる。


 そして楡木を壁際に突き飛ばし、そのままに階段を駆け下りて行った。


「いってえ……あぶねえじゃねーか!」


 ぶつかって謝りもしない騎士を怒鳴り付けるが、楡木は騎士を追いかける気にはなれなかった。

 追いついた所で何か得られる訳では無いのだから。

 精々文句の一つを言って謝罪の言葉を貰える程度だ。

 そんな事の為に今までの塔に登った苦労を水泡に帰したくない。


「全く……」


 騎士に鬱憤を感じながらも楡木はノソノソと階段を上る。


 そして十分弱の時間をかけ楡木は超常の部屋に辿り着いた。


「やっと着いた……」


 労いに冷えた水でも御馳走して欲しい。

 そう思いながら楡木は扉を開けた。すると、


「うっ!」


 鼻に強烈な発酵臭が襲い、不快な声を上げながら一歩後ずさってしまう。


「何だよこの臭い……」


 悪臭に怯みながらも楡木は部屋へと足を踏み入れる。

 それなりの広さがある部屋は、酷く散らかっていた。


 木製の床にはワインのシミや割れたグラス、書類が散乱し、テーブルも汚れた食器類が支配している。


「アイツどんだけ騒いだんだよ……」


 部屋の荒れ具合がヴェロニカの酒癖の悪さを表していると思い、楡木は呆れてしまう。

 

 そしてヴェロニカと共に酒盛りをしていた老騎士は、部屋の隅に置かれたベッドで横たわっていた。

 

 昼間見た猛り狂う頑固と打って変わり、今は安らかな顔で眠りについている。

 鎧も脱がず、剥き出しの剣がベッドの傍に立て掛けてあるのは用心深さの表れか。将又ただの横着か。


「おーい爺さん。来たけど?」


 楡木は控えめな声でセシルを起こしてみる。だが返事は無い。


「セシルさん……起きてください」


 今度は声を少し大にして、ついでに体も揺さぶってみる。しかしまだ起きそうに無い。


「おい!起きろよ!」


 一層声を荒げ、揺さぶる強さも一段と激しくしてみる。しかしまだ目を覚まさない。


「人を呼び出しておいて寝落ちしてるんじゃねー!」


 苦労して塔まで登って来たのに、それに対する仕打ちが寝落ちとは……

 余りにもやるせない仕打ちに、楡木は不満を爆発させた。


「起きろよ!」


 楡木は舌打ちをして、怒鳴りながらベッドの足を強く蹴りつける。

 すると寝ていたセシルはゴロリと転がり、ガシャンと言う鎧の音と共に床へと落下した。


「……じいさん?」


 覚醒どころか呻き声一つ上げないセシルを不審に思った楡木はセシルに近づき首元に指を添える。


「……え?」

 脈が無かった。首には何の反応も無い。


「マジかよ……」


 次に口元に耳を近づかせ、呼吸の確認をする。

 だがこちらも、息をする音が聞こえなかった。


 脈が無く息もしていない。鎧が邪魔で心音の確認は出来ないが、おそらく死んでいる。


「参ったな……」

 

殺人捜査の経験ゼロの素人探偵によるミステリー劇場が始まろうとしていた。

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