Clab Magic Knight
ビルの窓から発せられる電気とケバケバしいネオンの光に包まれた夜の繁華街。
飲み会に行く大学生。オトナの遊びに行く派手な女性。仕事の疲れを癒すために彷徨い歩くよれよれスーツのサラリーマン。それらをカモにしようとする呼び込みのアルバイター。それらが闊歩する夜の街で、楡木豊は遊びに行く店を物色していた。
遊び慣れない人間のようにキョロキョロしたつもりは無かったが、呼び込みのアルバイター達はそうは思わなかったらしい。
「安いですよ」「可愛い子居ますよ」近づいてきたハイエナ達は引っ切り無しに誘い文句を歌ってくる。
そしてその度に愛想笑いを浮かべながらこう返す。
「連れを待たせているので」
このセリフを聞いた瞬間、奴らは次の獲物を探しに退散して行く。
無論約束も泣ければ連れもいない。
自分が自由に動き回る為の嘘だ。
自分が入る店位、自分で決めたい。
楡木はそう決めていたからだ。
しかし肝心なピンとくる店が中々見つからない。
もう前に行った店に行こうか……
そう考え、諦めたその時、青白いネオンに包まれた店の看板に目を奪われる。
『Clab Magic Knight』
派手すぎず地味すぎず、店の名前も特徴的で無い。至って普通のキャバクラ。
そんな普通のキャバクラに、何故か楡木は魔法をかけられたように足を運んでいた。
そして心が騒ぎ立てる。
『行かなければならない』『行かないと大勢の人が困る』そんな意味不明な使命を心の中に住み着く天使(?)が幕し立てている。しかしその一方で『入ったら引き返さない』『絶対後悔するぞ』といった悪魔(?)が大声で叫んでいた。
どっちが天使の助言で、どっちが悪魔の囁きか分からない。
「そもそもキャバクラ勧める天使って何だよ」
葛藤に対して文句を言いながら、楡木は店に足を踏み入れた。




