妹の恋愛事情
「私は転生悪役令嬢のようですが、本当の敵はヒロインではありません」の妹の裏側です。
「ボクは王国一の魔導師になる。…だからずっと一緒にいて。
」
レティシア・ラルフォードとシンク・トゥーリが出会ってから半月程たった頃、ラルフォード家の庭園でシンクはレティシアにそう告げた。
「は、はいっ…」
それに頬を真っ赤に染めて嬉しそうにレティシアが頷くと、シンクはその表情を感じ取れない顔に微かに嬉しそうな笑みを浮かべる。
お互いがひとめぼれ。
そんな2人を木の影から微笑ましそうに見つめるのはお互いの家の使用人達。
何人かは館の主人と、トゥーリ家に報告に走っている。
「…これ。」
「?これは?」
シンクのまだまだ小さな手にも収まる小箱をレティシアに渡すと、シンクはぷいと顔を反らす。
首を傾げながらその小箱を開けるとそこには石がついたリングが入っていた。
その石はとても小さいが七色にきらきらと輝いている。
「きれい…」
「…ボクの魔力を固めた魔石。」
「え?そんなだいじなもの私がもらっていいのですか?」
「…いい。ボクが側にいれない時もあんた守るから。」
「…はいっ。ありがとうございます!」
魔石。
それは魔力を固めた石。
といえば簡単なようだが、それを作り出せる物はごく少数だ。
その効力は、例えば所持者に危険が迫った時結界を張ったり、作った者が望めばその魔石の魔力を使用する事も出来る。
とても貴重な物。
「わたしも…わたしもたくさん勉強して、シンクさまに魔石わたします!」
「…ん。待ってる。」
きらきらとした目を向けてくるレティが可愛くてその髪をさらっと撫でると、頬を真っ赤に染めながらも嬉しそうにふにゃっと笑う。
子供ながらにその笑顔を守りたいと誓ったシンクだっだ。
その後で、シンクとレティは正式に婚約を結ぶことになるのだが、微笑ましそうに見つめる両親達より、笑顔だが目が笑っていない姉のキャシリアを見たシンクは、背筋に寒気を覚えたのだった。