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5月序盤、真夏日

 御堂先輩はノートパソコンを取る。姫泉先輩はカバンから小さな長方形のケースを取り出す。彼女の長い髪をかき分けて眼鏡を掛けてやる。ついでに滲んでいる汗を拭く。小さく礼をする。御堂先輩は彼女に微笑みを送り、みんなに声をかける。

「ちょっと手続きが変わったみたいで、申請に時間がかかりそうなのよ。だからまだみんなで喋っててくれる?」

 姫泉先輩は言う。

「そうだねー。結局一つの話題しか回してないし、丁度良いんじゃないかなー?」

 栗栖先輩が咄嗟に、小さく手を挙げて言う。

「趣味ぐらい知っておいたほうがいいと思うんだけど、聞いてもいいかしら?」

 私は笑って頷く。隣でコウちゃんが呟く。

「わたしが聞こうとしてたのに」

 彼女の声はみんなの耳に届き、苦笑を誘う。私は彼女の頭を撫でる。それから先程の質問に答える。

「趣味と言えるほどのものは無いんですけどね。朝、コウちゃんに付き合ってランニングするのは楽しいです。朝方はまだ涼しいから走るのも辛くないし、それに植物の変化を見られるのも素敵で! あと何度も顔を合わせる人と話してみたり、たまには目標を決めて走ってみたりするのも面白いんですよ! ね、コウちゃん?」

 私の問い掛けにコウちゃんは何度も頷く。彼女はスマートフォンを操作し、みんなに画面を見せつける。ジャージを着た私と彼女が花々の前で屈み、満面の笑みとピースを送っている。栗栖先輩がため息をつきながら言う。

「あんたの画像フォルダには希望ちゃんとのツーショットしかないわけ?」

 コウちゃんは首を傾げる。またスマートフォンを操作して画面を見せる。読書に夢中になっている栗栖先輩の画像だ。それを見た彼女は頬を赤らめる。また別の画像を見せる。今度は口元にお米粒を付けた鈴木先輩が映っている。鈴木先輩も顔を真っ赤にする。二人は一斉に彼女に詰め寄る。どちらも大声でお互いのことを気にせずに喋っているので、何を言っているのか聞き取れない。その勢いのせいで二人はあっという間に汗だくになり、彼女から離れて席に着く。しかしその目はまだ彼女を睨み付けている。彼女自身はそれを気にせぬ素振りで、ただし目は細めながら別の画像を私だけに見せる。椅子に掛けたまま寝ている栗栖先輩に、鈴木先輩が寄りかかって画面に笑顔を向けている。私は思わず笑顔を漏らす。栗栖先輩がぐったりとしながら言う。

「なんか不名誉な画像を晒されている気がするんだけど」

 コウちゃんはあえてマスクを外し、その笑顔を彼女に見せつける。彼女はそれを鼻で笑う。姫泉先輩がこちら側に身を寄せながら言う。

「ねえねえ! わたしの写真は無いの?」

 コウちゃんはじっと彼女を見る。視線に圧された彼女は少しだけ身を退く。コウちゃんは彼女と御堂先輩が密着して笑いあっている画像を見せつける。姫泉先輩は笑みを漏らして言う。

「なーんだ、おどかさないでよ。意味有りげにこっち見るから怯えちゃったじゃん」

 私はコウちゃんに言う。

「へー、こんなにたくさん撮ってたんだね。見せてくれないから知らなかったよ」

 コウちゃんは慌てて捲くし立てる。

「意地悪で見せなかったんじゃないの。のぞちゃんといるときはのぞちゃんの話しかしたくなくて」

 私は笑って彼女の頭を軽く叩き、撫で、抱き寄せる。鈴木先輩が叫ぶ。

「わわっ! ほ、ホントにこんな大胆なことするんですね!」

 私は赤面する彼女に言う。

「鈴木先輩はこういうことはしない人ですか?」

「う、うん。あんまりくっつくのは恥ずかしいかなあ」

「好きって言い合ったりは?」

 彼女と、隣で本を読んでいた栗栖先輩が吹き出す。姫泉先輩がすかさず追及しようとするが、その前に栗栖先輩が投げた本の角が眉間に突き刺さる。彼女はその痛みから絶叫する。ふと御堂先輩が立ち上がる。歩きながら言う。

「ちょっと息抜きしなきゃ。みんなアイス食べるわよね?」

 姫泉先輩も立ち上がり、彼女を座らせる。先程のやり取りが無かったように元気に言う。

「わたし二つもらっちゃお!」

 彼女は真っ白で大きな冷蔵庫の冷凍庫スペースから、棒アイスの箱を出してテーブルの上に置く。みんなが一つずつ取ると、三つのアイスが残る。彼女はそれらを手に笑顔を浮かべる。袋を開けながら御堂先輩に言う。

「そんなに面倒な作業なら、私がやろうか?」

 同じくアイスの袋を開けながら御堂先輩は言う。

「雪ちゃんだってお疲れなんだから、仕事はわたしに任せて。それにわたし以外の人がやったことがバレたりしたら大変だもの」

 そしてアイスを咥えて彼女は作業に戻る。みんなもそれを舐めるなかで姫泉先輩だけが一心不乱にアイスを噛み砕いている。私は姫泉先輩に問おうとして、思い留まってコウちゃんに問う。

「いつもこんな感じなの?」

 彼女はアイスを咥えたまま考える。それを口から引き抜いて言う。

「そうでもない。けど、アイスのときだけは別」

 鈴木先輩と栗栖先輩も話に乗ってくる。

「他のお菓子なんかだと譲ってくれるぐらいなんですけどね」

「それにしたって、新しく入ってきた後輩に了解を取らない意地汚さはどうかと思うけどね」

 その言葉を聞いた姫泉先輩が跳ね上がる。私のほうを向いて何事か言っているが、アイスを咥えたままなので何を言っているのかまるで分からない。御堂先輩はため息をつき、彼女の肩を叩く。振り向いた彼女の口元を指差す。姫泉先輩は手を叩き、アイスを自分の口から引き抜く。それを私に差し出して言う。

「いっ、要りますか?」

 私は吹き出しそうになり、その寸前で口元を手で隠す。笑いながら言う。

「結構ですよ、ふふふ。そんなに必死になるぐらい好きなもの貰えませんから」

 コウちゃんが口を挟んでくる。

「後輩に気を遣わせた」

 私に許可を貰って口の中に戻ろうとしていたアイスが、その言葉で行き場を失う。あたふたする彼女を見てまた少し笑ってからコウちゃんに言う。

「もう、あんまり意地悪言っちゃダメだよ」

 コウちゃんは目を細めて言う。

「ゴメン、つい」

 私も微笑みながら言う。

「ついじゃありません」

 コウちゃんが私に抱き着いてくる。たとえアイスを食べようと、当然のことながら部屋の中は暑い。しかし私はそれを受け入れる。鈴木先輩が息をのみ、栗栖先輩がため息をつく。私は三年生たちに視線を向ける。御堂先輩はパソコンと向き合い、姫泉先輩は夢中でアイスを頬張っている。二人の金髪と銀髪が強い日差しの対としての濃い陰影、その中にあってなお輝くのを見て、私は二年生たちに問う。

「三年生のお二人って、やっぱり外国の血が混じっているんですか?」

 彼女たちは目を合わせる。すぐに他の二人から注目されてしまった鈴木先輩が、慌てて答える。

「ええっとですね。白雪先輩は純正の外国人で、栄先輩は逆に純正の日本人なんですよ」

「はい?」

 私は御堂先輩に目を向ける。まず銀色に輝く長髪が目につく。そして赤い双眸がこちらを見る。それらに慣れると今度は高い鼻と真っ赤な唇、掘りの深い顔立ちに気が付く。そこに、東洋人が明るい髪色にした場合に特有の不自然さは無い。呆然とする私に彼女がウィンクする。私は彼女に問う。

「本当に純日本人なんですか?」

 彼女はパソコンに視線を戻しながら答える。

「ええ。父も母も日本生まれの日本育ちよ、私もね。まあ、たまにはこんな日本人だって生まれるわよ」

 みんなも私に向かって頷いてみせる。私は薄く笑いながら言う。

「二代遡ると外国人とか、そういうオチじゃないですよね~?」

 御堂先輩は苦笑しながら言う。

「もう、そんなんじゃないわよ。たしかに家系全体として日本人ぽくはないけどね~」

 いつの間にかアイスを食べ終わっていた姫泉先輩も話に混ざってくる。

「日本人らしい日本人といえば御当主ぐらいだよね」

 彼女の言葉に御堂先輩は曖昧に相槌を打ち、私は絶句する。感心して彼女に言う。

「御当主とはまた仰々しい言い方ですね」

「あはは、まあそれなりの理由はあるんだよ」

 姫泉先輩はそう言ってまた笑う。横目で私にウィンクする。私が首を傾げると、二人は顔を見合わせて笑う。コウちゃんはそれを鼻で笑う。彼女たちに言う。

「大した理由でもないくせに」

 二人は肩を竦める。コウちゃんは彼女たちを睨み付ける。みんな黙り込んでしまう。キーボードを叩く音だけがする。やはり話しもせず、聞きもしないでいると熱気や流れる汗に意識が向いてしまう。ふと思いついたことを言う。

「野球のルールって考えておいたほうがいいんじゃないんですか?」

 みんなは張りの無い声を漏らす。姫泉先輩が手を叩く。私を指差して言う。

「それだよ希望ちゃん! それだ! ようし、後輩に負けてられないぞみんな!」

 鈴木先輩の声と、キーボードを打つ音だけが彼女の後に続く。彼女はもう一度声を上げる。コウちゃんと栗栖先輩が極短い返事をする。姫泉先輩は御堂先輩に泣きつく。キーボードを叩く手が止まる。御堂先輩は、密着しているようでおっぱいが触れないように距離を取る彼女にため息をつく。それから二人に言う。

「あんまり雪ちゃんをいじめないであげて。どちらかといえば、花ちゃんのためにだけど」

 私が向かい側に座っている鈴木先輩に目を向けると、彼女は二人を交互に見ては忙しなく手を動かし、口を開き、冷や汗を流している。二人は彼女を見て吹き出し、謝ってまた吹き出す。彼女はテーブルを思い切り叩いて叫ぶ。

「ひどいよ二人とも! 白雪さんが盛り上げようとしてるのに素っ気なくして! あとなんで笑ってるの!?」

 栗栖先輩が笑いを堪えながら言う。

「ほら、花が怒ってるわよ。謝りなさいよ部長」

「えっ、わたし!?」

 驚く姫泉先輩にコウちゃんが追い打ちをかける。

「そうだそうだー」

 彼女らの横暴を受けて怒るのは、やはり姫泉先輩よりも鈴木先輩だ。彼女は栗栖先輩の肩を掴んで揺さぶる。栗栖先輩はその腕を抑えながら姫泉先輩を見る。姫泉先輩は少しだけ笑いを漏らして、彼女に言う。

「ごめん花ちゃん! わたしが悪かったから許して!」

 そう言われると、鈴木先輩は慌てて縮こまってしまう。御堂先輩が声を低くして言う。

「ちょっとみんな? おふざけが過ぎるんじゃなくて?」

 三人が気の抜けた返事を返す。それから未だに作業中の御堂先輩を除いたみんなで野球のルールを考え始める。栗栖先輩と鈴木先輩は野球のルールを知らないそうだが、そのことは気にせずに意見を出してもらう。むしろ、途中から作業を終えて混ざってきた御堂先輩も含め、ルールを知らない人たちに中心になって考えてもらう。粗方のことを決め、みんな揃って部室を出る。昇降口を抜けて青空の下に出ると、強い日差しに肌を焼かれる。わたしはコウちゃんに聞く。

「今日って真夏日だったっけ?」

 コウちゃんは頷く。私は笑顔を作って言う。

「暑いわけだよね」


 私たちは校舎から少し離れた建物に向かっている。元は野球部の部室だった場所だ。今は使われていないが、私たちが使えるように定期的に整備されているらしい。

 グラウンドを通り過ぎる。何人かの男子がサッカーをしている。同じクラスの男子がいたので手を振る。彼もこちらに手を振り返してくれる。彼に向けて送られたボールが当てもなく転がっていく。

 建物の中に入る。たしかに道具類は整頓され、綺麗に保たれている。埃はそこそこに積もっているところを見ると、それほど頻繁には整備をしていないのだろう。私は布巾が無いか確認する。私が見つける前に姫泉先輩がそれを取り、銀色のいかにも安っぽい机を拭く。みんなはそこに鞄を置く。私もそれに倣う。三年生の二人がみんなに野球のユニフォームを渡す。ファッション店のように、狭い代わりに複数ある更衣スペースを使って着替える。私が着替え終わってそこを出ると、既に姫泉先輩とコウちゃんがバットやボールを準備している。コウちゃんは運動に備えてマスクを外している。リップを塗ったように赤い唇が露わになっている。

 姫泉先輩は御堂先輩が呼ぶ声に応じて彼女の下へ行ってしまう。入れ替わりで私と、着替えを済ませたらしい栗栖先輩が準備を手伝う。用具を取り出す際に、御堂先輩が着替えているスペースの前を通り過ぎる。微かに話し声が聞こえてくる。

「ねえ、着替えを手伝ってくれるだけでいいのよ雪ちゃん」

「根本的に解決しなきゃダメだよ。大丈夫、わたしからするから」

 御堂先輩の声は震え、掠れている。対する姫泉先輩の声は平坦だ。私は漏れてくる声に気を向ける。拒否する声だけが断続的に聞こえてくる。私は唾を飲み込む。御堂先輩は切羽詰まった様子で彼女に訴える。

「ああダメ、ダメよ雪ちゃん。こんなところで」

「キスするぐらいなにさ、他の子には」

 気密性の高い建物は窓を開けても熱気が籠もる。そのくせ日の光は差して、益々室温を高める。こんなことを考えるのは、中から何も聞こえてこなくなってしまったせいで、熱気にばかり意識が向くからだ。コウちゃんたちの会話、鳥の鳴き声、稀に吹く強風やその他の音が遠ざかっていく。ふと甲高い叫び声が室内に響く。

「ムカデ! ムカデ! ムカデ!」

 鈴木先輩が飛び出すのを見る。私は跳ね上がった心臓が今も強く鼓動しているのを抑えようと、胸に手を当てる。ややの間を置いて、私と同じ姿勢を取った御堂先輩と姫泉先輩が並んで出てくる。彼女たちと目が合いそうになり、視線を逸らす。栗栖先輩が言う。

「あんた虫苦手だったっけ? あとブラ外すのに手間取って着替え遅くなるの止めてもらっていいかな」

 鈴木先輩はまた叫ぶ。

「ムカデは例外中の例外なの! それになんでそんなこと分かるの!?」

「レイガイチュウのガイチュウはきっと害虫って書くのよね!」

「心底どうでもいいよ!」

 コウちゃんが会話に混ざっていく。

「ムカデ人間は3作目まで作られてるらしい」

 やはり鈴木先輩は叫ぶ。

「心底どうでもいいよ!」

「おお、持ちネタが増えたわね」

「目指せ、ツッコミ界の死兆星」

「そんな称号要らないもん!」

 コウちゃんと栗栖先輩は既に準備を終え、机の周りに椅子を並べて座っている。私は手に持っている空のカゴとカラーバットを用具が纏められている場所に置き、コウちゃんの傍に立つ。栗栖先輩がこちらをじっと見る。私は彼女に問う。

「どうかしましたか?」

 彼女は自分の胸に手を当てながら言う。

「いや、彼我の戦力差はこれほどのものかと」

 私は彼女のおっぱいと自分のおっぱいを見比べる。納得して手を打つ。こちらを見る目が細められる。私は慌てて手を隠す。彼女は低く唸る。コウちゃんが彼女に言う。

「寄せて上げもしないクセに、恨み言だけ言うのは違う気がする」

 栗栖先輩は頬を赤らめて吠える。

「うっ、うるさいわね! そんなことしたら負けた気になるじゃない!」

「既に劣等感まみれのクセに」

 栗栖先輩は拳を震わせながらコウちゃんを睨み付ける。鈴木先輩がその拳を自らの掌で包み込む。彼女と目を合わせて言う。

「大丈夫だよ栗栖ちゃん! 胸が無くたって栗栖ちゃんはすごく、すっごく可愛いもん!」

 鈴木先輩の激励を受けた栗栖先輩は一瞬だけ笑顔を浮かべる。それから目の前の非常に背の低い少女に付いた、それなりに大きなおっぱいに目を向ける。私やコウちゃんに向けたそれよりも一層厳しい視線で彼女を見る。彼女の肩を掴んで叫ぶ。

「あんたに言われても! 何の! 慰めにもならないのよ!」

「ふええええええ!?」

 彼女は叫ぶことしかできず、されるがままに揺さぶられる。騒ぐ二人を中心にみんなが笑い声を上げる。栗栖先輩が突然姫泉先輩を指差す。またしても吠えるように叫ぶ。

「ちょっと! あんたもなんか言ってやりなさいよ!」

 壁に寄りかかっている姫泉先輩は、苦笑しながら言う。

「わたしは意図的に絞ってる人だからなあ。寧ろ油断すると大きくなっちゃうのが悩みっていうか」

 栗栖先輩は先程までとはうってかわって、今度はまったくの真顔になる。平坦な調子で言う。

「はい、準備は済ませといたから。行きましょ」

 彼女はカラーボールの入ったカゴとカラーバットを持って外に出ていく。鈴木先輩が慌てて彼女を追いかける。姫泉先輩が叫ぶ。

「あれーっ!? ツッコミ待ちだったんだけどなー! おかしーなー!」

 私は声を上げて笑ってしまう。隣でコウちゃんが微笑んでいる。私が見ていることに気付いて、こちらにその微笑みを向ける。私は言う。

「みんな、仲良いね」

 姫泉先輩が左手で予備のカラーバットを持ち、右手で御堂先輩の手を取って外に出る。コウちゃんは遠くなっていく二人の背中に視線を移す。私もそうする。日が傾き、外は少しだけ暗くなっている。この身に纏わりつく熱気も少しは和らいでいる。彼女の微笑みが一瞬薄れ、それから、彼女は声を上げて笑う。私に抱き着いて言う。

「まあ、どうぞ、よろしく」

 私と彼女の目が合う。私は私にできる一番の笑みを、彼女に送る。私の腕に縋る彼女に言う。

「こちらこそ!」

 二人で外に出る。日差しと風を感じる。日光がユニフォーム越しに体を熱する。脚に砂利が吹き付けてくる。コウちゃんと並んで駆け出し、空いているほうの手を大きく振る。少し離れたところで私たちを待つみんなに、喉が痛くなるぐらい大きな声で言う。

「みなさ~ん! よろしくおねがいしま~す!」

 みんながこちらを見る。笑顔で手を振り返してくれる。

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