聖女がどうしてこうなった
どうしてこうなった
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途中分かりにくい部分があったので若干変更を加えましました。
内容そのものへの影響はないです。
この世界には聖女が実在する。
だが聖女とはなんだろう?
心清らかな純血の乙女だろうか?それとも人々を正しく導く神の使いだろうか?いずれにしろ聖女と聞いて思い浮かべるのはおそらくそういった「聖なるナニカ」だろう。
だがこの世界の聖女はそうではない。
聖女とは大地の底、昏い穴の果て、地獄の業火より生まれる悪鬼共を封じるための人類全体の生贄である。聖なるナニカなどとは程遠い、人間の業が集まった汚点そのもの、人の罪の結晶、それが聖女。
そしてまた一人の少女が聖女という名の生贄として捧げられようとしていた。
少女は何の変哲もない小さな小さな、それこそあまりの無害さに大国に見向きもされないような小国の姫であった。しかしその美しさは比類なく、その身に宿る魔力も人知を超えるものだった。誰もがその少女を欲したが、それ以上に世界に満ちる人の業は少女を聖女へと奉り上げた。
ある勇者は言った。
「私がきっと地獄の悪鬼共を悉く滅ぼして見せる!だからどうか行かないでくれ!」
ある王子が言った。
「世界がどれほどあなたを聖女に求めようと、その全てから私が守って見せる!」
ある悪魔が言った。
「貴女を愚昧共のための生贄にするなど勿体無い。美しき者よ私のものになりなさい。」
ある少年が言った。
「どうしてお前がこんな目に合わなきゃいけないんだ!こんなの絶対間違ってる!」
ある術士が言った。
「生贄を必要としない結界を構築して見せる。だからどうか思いとどまってほしい。」
少女は答える。
「否。私の使命はただ一人あの場所を守り続けること。」
そうして少女は地獄へ続く深い穴へと消え、ほどなくして何者をも近づけない虹色の結界がその場を包み込んだ。
少女には他にも無数の選択肢が用意されていたにもかかわらず、どうして聖女となる道を選んだのだろうか。少女を引き留めた者たちは自らの至らなさを悔い、聖女を望んだ者たちはそれが定めなのだと己の罪に目を瞑った。しかし誰もが心の中で少女が聖女となったのは自分のせいだと感じていた。
だが本当にそうなのだろうか?
少女が聖女として生贄に捧げられる前、清めの儀式としてとある教会で過ごした時期がある。そこには少女の残した日記が残っており、しばらく閲覧すら許されないほど厳重に保管されていたのだが、つい最近になってそれが公開されたのだ。
そしてその最後のページにはきわめて複雑な記号の羅列がある。
「美少女転生して百合ハーレムキタコレ!って思ってたのにまさかのTS逆ハー鬱展開とかマジお断りだし。俺は一生ボッチで自宅警備をすることにした!」
専門家によると何か法則性のある言語らしいのだが、あまりにサンプルが少なくいまだ我々には解読することができないでいる。一体少女が何を語ったのか、諸説ある中で私は神の啓示ではないかと考えている。
そうこれは神の言葉であり、少女は神によって定められた聖女だったのだ。
その証拠に虹色の結界は千年後の今もまだ存在し続けており、少女はまさしく聖女として世界を救うために神によって選ばれた本当の聖女だったのだ!
さらに少女自身自らを「ニホンジン」と呼称しており、これはおそらく神の言葉で「救世主」を示す言葉に他ならない。
これが神に選ばれたニホンジンの少女が聖女に至った話の全貌である。
ちゃんと世界守ってるし……。
〝自分の〝世界を守る(警備する)物語じゃないし……。(錯乱)