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革命神話  作者: karon
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子供達 4

 ああ、まったくろくでもない。

 キャロットは呟く。

 何とか二人きりになれる場所。それはトイレの中だ。

 眼の見えない少女を案内してそれでだれにも目に入らない場所と言えば結局そこしかなかった。

 ミラーグラスを外してこきこきと肩を鳴らす少女は妙に婆くさい。

 ミラーグラスは中が機会なのでみっちりと思い。掛けていればそれは方も凝ろうというものだが。

「なるほど、そういう変装が必要なわけだ」

 ミラーグラスを外した少女の顔を覗き込んで、何でわざわざ面倒くさい変装をしたのか納得する。

 瞳の色が左右違う。

「お前こういう活動向いてねえぞ」

 はっきり言おう。ミラーグラスを外した少女は結構美少女だった。

 目立ちすぎる。

 一発で特徴が看破される。

「それはわかってるよ、本当は別の子が来るはずだったの」

 ミラーグラスを手で弄びながらぶーたれる。

「なんで今頃麻疹なんかになるのよ」

「おい、それ結構育った奴か、命にかかわるぞ」

 麻疹は成人男性がかかると命にかかわり、後遺症が残る。

 成人女性でも命にかかわるのは同じことだ。

「そうなの?」

 興味ないという顔で答えた。

「とはいえ、こんなところで二人で出てきたらどう思われるか、時間はない」

 少女はポケットから端末子機を取り出した。

「これ、連絡用」

「電波の問題は?」

「クリア済みだよ」

 そう答えた少女はやれやれと肩を落とす。

「次回からはお前どうするんだ?」

「あたしはあくまで臨時、これからは別の人が来るから」

「麻疹のやつか?」

「そう、死ななければね」

 そう言って少女はキャロットの前から立ち去る。

 潜んでいた場所が場所なので、キャロットは少し時間をあけて出た。

 

 狼羅は再びミラーグラスで視界を覆っていた。

 視覚障害者相手にこのミラーグラスを奪おうと考えるものはそういない。だから変装としては完璧なのだろうと思う。

 放送が聞こえてきた。教団の宣伝放送。

 何を売っているわけでもない。ただ慈愛を説いているだけ。その慈愛の陰で何をしているか。

 狼羅は唇をゆがめる。狼羅は子供だ。子供だから、小さいからという理由であっちこっちに潜り込まされた。そして悲惨なものをいやと言うほど見てきた。

 さっき会った少年は違法に手に入れた受精卵をいじられたあげく生まれてきた子供。

 教会にかかわるたびにいやなものを見る。

 それでも今見得ている光景は美しいのだろう。狼羅はこの変装に感謝した。偽りの美しさなど見たくもない。

 それはいままで見てきた醜さを引き立てるものだろうから。


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