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革命神話  作者: karon
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遠い場所

 窓から見える地球を眺めると話に眺める浪蓮はどこか物憂げに見えた。

「宇宙から見る地球は変わらないわね」

 最初の大気圏離脱からはや数世紀、数限りなく撮られ続けていた地球の映像はずっと変わらないままだ。

「下に降りればだいぶ変わっているんだけどね」

 浪蓮は高速で移動して行く地球を眺めながら呟く。

 地球が高速で移動しているわけではない。浪蓮のいる月面基地はベルト状の形態をしており、月面を常に高速で移動しているのだ。

 それによって、地球上と同じ重力を保っている。

 移動エネルギーは基地の上部に取り付けられた太陽光発電機で賄っている。

 基地内にいる限りは周囲が高速で回転しているように見える。

 基地内に降りるときはちょっとしたスリルが味わえるようになっている。

 高速回転する基地とまったく同じスピードで走行する船から基地へと降りるのだ。

 その瞬間だけは基地のスピードが実感できる。

 窓枠に肘をついて、ぼんやりと地球を眺めている。

 先ほどまでごたついていた仕事がようやく終わったところだ。

 太陽系内の資源開発が今浪蓮に課せられた任務だった。

 金属資源の枯渇は一世紀ほど前から盛んに問題視されていた。その資源を求めての宇宙開発だった。

 大柄な薄い金髪の男が浪蓮に声をかける。

「少佐、お食事です」

 地球を見ると話に眺めていた浪蓮は振り返ると、小さく頷いた。

「ここは地球と同じ重力設定にしてありますからね、栽培植物も地球と同じですよ」

「地球と違うものなんかあるのか?」

 浪蓮が怪訝そうな顔をする。

 目の前の男は宇宙開発担当噛んで、太陽系の隅々まで行って歩いている。

「低重力化では、わざと巨大化させることもありますよ、少々大味になりますが」

 それが冗談であるのか、浪蓮には判断がつかなかった。

「まあ、重力が地球と同じなのはありがたいのだがな」

 宇宙開発で、無重力下で退化する筋肉をどうするかというのが、最大の課題だったという昔話を思えばたぶんありがたいことなのだろう。

「まあ、そうですね、私も月に着た途端体が重くて、一番地球から近いのは月ですし、この程度のぜいたくはやむを得ないのでしょうね」

 

 月面基地は閑散としている。今この程度の人間のため人口重力を使用するのはエネルギーの無駄遣いに思えるが、停止させるのにも巨大な労力がかかるためよほどのことがない限り停止させることはない。

 それにオートメーション化が進んでいるので、人口が少なくてもさほど困らない。

 食堂は地球と違い士官と下士官に分かれていない。

 人数が少ないのと、敷地面積が少ないことがその理由だ。

 殺風景な一面艶消しの金属の壁で覆われたそこにそういう気遣いは求めても無駄だと浪蓮は悟っていた。

 当たり前のように男と向き合って食事をとる。

 浪蓮は高名な学校を飛び級で進級し、士官となったエリート。そして男は宇宙の端に存在するブルーカラー。

 普通は一緒に食事をとることはない。

 しかし浪蓮は普段と違う階級の男と知り合うことに興味を持っていた。

「そう言えば名簿を見たのですが、お名前の後に妙な模様があるようですが」

「それも名前よ、漢字で書かれているの」

「漢字」

 国家間の文字はすべてアルファベットで書かれている。しかし、下に向かえば昔ながらの文字はいまだ使われているのだ。

「私には東洋系の血が流れているの。だから、名前を東洋表示してあるのよ」

 人種差別は表面上ない。だからわずかながら東洋人だと名乗ってもそれに対する弊害はない。とされている。

 切り分けられたポテトを口にしながら、さてどんな反応を示すか。男の様子を観察した。


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