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革命神話  作者: karon
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見知らぬ花

 標的に狼羅は少し近づいてみた。

 軽く微笑んで見せる。

 脂ぎったおっさんだった。

 狼羅は内心の吐き気を抑えて、笑顔を作り続ける。

 唇の端が少し引きつっていたがそれは御愛嬌だ。

 狼羅は基本的に銃を使う。そしてどうしてそれが自然死に見せかけるために必要なのかよくわかった。

 この男、ロリコンなのだ。

 おそらく死因は腹上死を装わせるつもりだろう。年端もいかない少女とそう言うことをしようとして、逝っちゃった。おそらく検死をあっちのほうで拒否するだろう。

 狼羅は掛けていた色眼鏡を外して見せた。珍しい色違いの瞳を見てさらに相好をゆがめて相手は笑う。

 狼羅は無言でただにこにこしていた。

 さて、どういう経緯をとるか。

 お付きの人が何人かついている。背後のがタイのいいのはたぶん護衛だろう。そういう連中が、いきなり見ず知らずの少女を密室に連れ込もうとするのを許すかどうか。

 あああ、思いっきり胡乱なまなざしで見ている。

 おそらくこの男の変態性はこの連中は熟知しているのだろう。とすればどの程度ゆるいんだろうと狼羅は考えていた。

 さっさと二人っきりになって、最小の傷であの世に行ってもらいたいもんだと。

 何故殺さねばならないかはたった一つの理由で十分だった。

 この男は教団の幹部だ。

 それだけで狼羅にとって、他の抹殺する百の理由に足る。

 このキャンドルタワーも設計に教団が大きくかかわっているらしい。

 この海中から突き出す巨大なビルがどのような意図で作られたのか、それを探り出す過程で、この男の抹殺が決まったらしい。

 キャンドルタワーの設立理由はあまりに重大だからと聞かされはしなかった。

 まあいい、教団関係ならどうせ碌でもないことだ。

 狼羅はそう決めつけた。数々の過去の実績に裏打ちされた経験からの決め付けだった。


 シャワーを浴びて、香料入りの洗浄剤を使う。

 自然の洗浄剤に天然の植物のエッセンシャルオイルを使ったそれは本来なら狼羅の手に入るような安物ではない。

 それを送り付けてきた相手の意図を考えると笑えてくる。だいぶ歪んだ笑みだったが。

 肩までで切りそろえた髪を軽く絞る。

 細くまっすぐな金髪はすぐに傷むのでこまめに切りそろえるようにしている。

 海の中なので、水源は豊かだ。濾過装置さえ壊れなければ。

 狼羅は自分の身体を見下ろして少し笑う。

 この身体を見てあの男はどう思うだろうかと。

 胸から下に切られた跡がある。

 腰のところにも幅広い皮膚のはがれた跡が。

 訓練で受けた傷、実戦で喰らった傷。大小様々な傷が狼羅の身体を彩っていた。

 無論、簡単な手術で消すこともできるが、あえて狼羅はしていない。そんな暇はないと思っている。

 それに、軽くはだけたくらいで始末する予定なので、そのころも気にしていない。

 思ったよりも緩いみたいでずいぶん楽だ。

 まだ濡れた髪から狼羅の知らない花の香りがした。


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