仕事の依頼
帽子を目深にかぶったままなのを注意してやる。不自然な行動は避けるべきだ。
ご丁寧に色ガラスのついた眼鏡まで掛けている。
まだ子供だが、それ相応の態度はとるべきだろうと思う。
眼鏡をはずすことは相手が拒否した。眼鏡を軽く持ち上げれば、左右色違いの瞳が見えた。
この極め付きに目立つ特徴を隠すためらしい。
眼鏡をかけなおした相手をしげしげと見る。
はっきり言って瞳の特徴がなくても目立つ容姿だ。
際立って整った顔立ちに淡い金の髪。
美人というものはり醜女より人目をひくものなのだ。
唯一の条件は幼いということだろうか。幼さは無力の第一条件だ。
「用件は」
そう端的に尋ねた後、まったく口を利かない。
無口なのも考え物だと思う。
「彼女が待っている」
そう言えばこくりと少女は頷いた。
初対面の人間はとりあえず警戒する癖が狼羅にはついていた。
なにしろ、あまり安定した立場ではない。見方ですらいざという時には狼羅を犠牲にすることを選ぶかもしれない。
そんな状況で、だれかれとなく信用していたら命がいくつあっても足りない。
彼女と固有名詞を出されずに呼び出されたが、それも打ち合わせの一つだ。
栗色の髪を軽く垂らして、くつろいだ部屋着姿で彼女は狼羅を迎えた。
柔らかなタオル地の上着を着ている。
「久しぶりねえ」
そう言って狼羅の小さな体を抱きしめる。
「久しぶりだ、エレーン」
背中にまわした手で軽くその背中をたたく。
情報屋のエレーン様々な情報を網羅して、あっちこっちにばらまいて状況を操作する。その手腕は折り紙つきと言われている。
狼羅の頭ではどういう風に事態を動かしているのかさっぱり分からないが、大体エレーンの思ったとおりに転がるという。
「で、あたしに何の用?」
来てくれ手と言われて着た。だが何をさせられるのかまったく聞いていない。
「ああ、そんな大変なことを言うわけじゃないわ、ちょっと人を一人、自然死させてくれればいいのよ」
なんだかめちゃくちゃなことを言ってるな。と狼羅は思った。
「自然死は勝手に死ぬことだ、勝手に死ぬのにさせるも何もへったくれもないだろう」
「屋だ、言い回しに気づいてよ」
もちろん気づいていた。
「自然死に見せかけろってことよね、やっぱり空気注射かな、あんま




