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革命神話  作者: karon
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か細い絆

 狼羅は端末を取り出す。

 銃と端末それだけが狼羅の私物だ。

 端末の履歴は毎日消す。それは誰からもくどいくらい念を押されていい聞かされた。

 だから、ナンバーを登録することも許されていない。誰かから連絡したりされたりは暗記したナンバーが頼りだ。

 忘れてしまってはどうしようもないから必死に暗記する。

 メモに残すことも許されていない。

 語呂合わせというもので狼羅は覚えていた。

 狼羅の母語、日本語での表記だ。数字の読みが二つないし三つあるからできることだが、おかげで忘れたことはない。

 語呂合わせをひらがなで書いておけばばれないのではと思うが、書いた瞬間に安心して忘れてしまいそうで、そうしたら無くした時困るといまだ実行していない。

 一人だけ、一番頻繁に連絡を取る相手、この相手に限っては手が番号を覚えているから、なくしてしまう心配はない。

 端末だけが同士と狼羅をつなぐ糸のようなものだ。

 狼羅はニュース映像を探す。

 宇宙開発が最大のトピックスのようだ。

 宇宙開発の船は最近は大型化しているらしい。

 長距離化が始まったせいだろう。

 木星までは数カ月かかる。その間それなりに快適な暮らしが必要と言うことだ。

 地球資源の枯渇は狼羅が生まれるずっと前から言われてきた。そのための宇宙開発なのだが、それだけの距離の燃料代が本当に稼げるのかは知らない。

 教団は宇宙開発に反発している。

 地球環境をよりよくというのが教団のお題目で、環境破壊の根絶や自然資源の増加などいろいろとやっているらしい。

 絶滅危惧種ならびに絶滅種の復活なども行っているが、今の地球にそんな生き物が生き残れる自然は存在しない。

 野生動物など、どこにいるというのだ。

 端末が小さくオルゴールの音で鳴った。

 小さな画面に小さな顔が映る。

 オルゴールの呼び出し音を指定したのは彼女のほうだった。

「元気?」

 そう言って小さく笑う。背景は室内だ、彼女が今どこにいるかわからない。

 栗色の髪をまとめて栗色の瞳はどこか疲れた色を表している。

 年のころは狼羅より少し年上、しかし今狼羅より年下の人間のほうが珍しいので、それは当り前か。

「今どこにいるの」

 それに相手は緯度と経度で教えてくれた。

 南半球だ。

 今、狼羅がいるのはアジアなので、ずいぶんとく離れている。

「いつそこまで行ったの?」

 彼女は狼羅と違って目立たない顔をしているのでいつでも仕事が詰まっている。

 その仕事の資金を出すのが誰か狼羅は知らない。

 生きていく上の報酬はいくらあっても困らないから狼羅もそれは考えないようにしていた。

「私が今いる場所に、陸はないわ、今海中の施設にいるの、それで、後しばらくしたら迎えが来るから、一度来てくれる?」

 呼びかけだが、それは断ることを許されない命令に等しい。

「しばらくって、どのくらい?」

「今日中」

 端的に答える。どの道、荷物など着替え程度だ。携帯食物を持ち歩くことができればいいのだが、今はない。

「わかった」

 そう言えば端末は切れる。狼羅は即その連絡の履歴を消した。


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