二章 キャラ紹介 《セイレーン》
《セイレーン》
アルベローナ=アラベスク
属性:水
アーク:水仙(羽衣)
序列:一位
好きなもの:自分の美しい髪
上級貴族出身で高飛車な性格をしている。だが、人の話にはちゃんと耳を傾け、自分が悪いと思えば素直に謝る。軽く天然入っており、目の前のことに集中し過ぎる所がある。自分の髪型をバカにされると五秒でキレる。
ラピス=ラズリ
属性:水
アーク:リキュール(ライフル)
序列:二位
好きなもの:本
上級貴族出身で冷静沈着な性格をしている。冷淡眼鏡。《セイレーン》では暴走しがちなアルベローナに代わりクラスの指揮を執る。クロードと合わせてダブルドS眼鏡と呼ばれることを何より嫌がる。クロードとは馬が合わず、同族嫌悪に似た感情を持つ。
クロード=セルリアン
属性:水
アーク:時雨(トンファー)
序列:三位
好きなもの:雨
中級貴族出身で冷静な分析を得意とし、やや冷めきった感のある性格。冷酷眼鏡。ラピスと合わせてダブルドS眼鏡と呼ばれるが、最近相手にするのも馬鹿馬鹿しくなってきた。ラピスとは犬猿の仲だが、協力するとかなり強い。
エコー=アジュール
属性:水
アーク:ラブリミナル(杖)
序列:四位
好きなもの:自分
下級貴族出身でハチャメチャな性格。所謂トラブルメイカー。よく人を小バカにする。その度にクロードとラピスに叱られる。少々潔癖な所があり、主に後方支援を担当する。可愛らしい顔をしており、女子の制服を着てるが、正真正銘の男。
イルミナ=クルル
属性:水
アーク:アクアリウム(水晶)
二つ名:《泉の聖女》
好きなもの:天然水
ミスリル魔法学院の《セイレーン》クラスの代表講師。巨乳。とても穏和で優しい性格をしている。回復魔法を何より得意とし、生徒達からは聖女と呼ばれている。
キャサリンとは同期であり、ミスリル魔法学院出身でもある。当時の《セイレーン》で卒業するまで不動の序列一位だった。
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おまけ『《セイレーン》のとある日常』
「ねえねえ今どんな気持ち? どんな気持ちぃ~?」
「……激しくお前をぶち殺したい気分だ……」
「うっわ。こわっ! クロード君まじ怖い~!」
「やかましいっ! とっとと放せ!」
「やだよ。だって放したら殺しにくるんでしょ? 絶対やだよ!」
「何の騒ぎですの?」
ここは《セイレーン》の教室。朝のホームルーム前。アルベローナは何故今自分達の教室が騒がしいのか気になっていた。
しかし、教室に入ればその原因はすぐにわかった。やはりというかなんと言うか、騒ぎの中心にいたのはクラスメイトのエコーだった。
そしてもう一人、クロードもいたが、どういうわけか、彼は逆さまになっていた。
よく見ると足にヒモのようなものが絡まっており、天井から吊るされているようだ。そのヒモの先を目で追っていくと、エコーの右手に握られていた。
「……あぁ、またですの」
やれやれと頭を抱えながら、アルベローナは鞄を置いて二人の元へと赴く。
「あら? クロード。眼鏡はどうしたんですの?」
そして吊るされているクロードを見ると、彼のトレードマークである眼鏡がなくなっていた。
「……君の足元だ」
「え? ……あぁ、これですのね」
言われるがまま床を見ると眼鏡が落ちていた。恐らく、吊るされた時の衝撃で落としてしまったのだろう。アルベローナはその眼鏡を拾い上げながらエコーに話しかける。
「で、今日は何の遊びですの?」
「遊びじゃな──」
「よくぞ聞いてくれましたお嬢っ! これはね。お馬鹿なクロード君を引っかけるために作ったトラップなの。まさか一発でかかるとは思わなかったけどねっ」
クロードの言葉を遮りながらニヒヒ、と笑うエコーはまるで小悪魔のようだった。顔立ちはまんま女の子なのだが、これで性別は男だと言うのだから驚きだ。かくいうアルベローナも最初は勘違いをしていた。女子の制服を着ていると本当に見分けがつかない。
このことは他のクラスにはまだバレていないことだ。別段秘密にするほどのことでもないのだが、その方が面白いとは本人談。
そして、そのエコーの秘密に最初に気付いたクロードは色々とエコーにちょっかいをかけられるようになってしまった。
「おいアル。その阿呆を代わりに殴り飛ばしてくれ」
クロードは逆さのままアルベローナに頼み込む。しかしアルベローナはそれを断った。
「嫌ですわ。わたくしの手が怪我でもしたらどうしますの?」
「何を言っている。りんごを握力だけで潰せるだけの力はあるだろう」
「うふふ。この眼鏡がどうなってもよろしいのかしら?」
「やめろ。悪かった。謝る。だからその手を止めろ。メキメキいってる!」
まさか拾われた眼鏡を人質(?)に取られるとは。クロードは内心舌打ちする。
このクラス一の強さのアルベローナとクラス一の厄介者のエコーが組むと本当に手がつけられなくなる。
どうするべきかと逆さのまま悩んでいると、不意に気持ち悪い浮遊感を感じたかと思うと頭から床に落ちた。
どうやら何かでヒモを切られたようである。
クロードは激しく痛む頭を押さえながら視線をあげる。
「全く……。またくだらないことを」
「あらラピス。職員室での用事は終わったんですの?」
「ええ。滞りなく。で、これは何なのかしら? 変態」
「いい加減エコーのこと変態って呼ぶのやめてほしいなぁ~って思ったり」
クロードの足のヒモを切ったのは同じ眼鏡のラピスだった。
「てか、ラピスちゃん。教室で魔法使っちゃいけないんだゾ~。悪い子~」
エコーはわざと挑発するようにラピスに指を差す。だが確かにエコーの言う通り、教室内での魔法の使用は厳禁されている。それを散々チクチク言われたため、クロードはヒモを切るに切れないでいたのであった。だが──
「教室にトラップを仕掛ける貴様が言うか」
「何言ってるの? 校則には教室にトラップを仕掛けてはいけない、なんて書いてないでしょ?」
「この……ッ!」
まるで見下すかのようなエコーの表情を見て怒りに震えるクロードだったが、ラピスが溜め息を吐きながら、持っていた生徒手帳を開いた。
「確かに教室での魔法の使用は厳禁ですが、例外があります。見なさい。ここに、不審者の侵入、および非常事態においてのみ使用許可を得ずに使用できる、とあります」
「えっ、エコー不審者扱いっ!?」
「ええ、そこに転がってるのも含めて」
「何故僕まで不審者扱いだっ!?」
底冷えしそうな冷たい瞳で見下されたクロードはがばっと立ち上がりラピスを睨み返す。その時に合わせてアルベローナから眼鏡を取り返した。
「あら。不審者かと思えば眼鏡でしたか。失礼しました。そうとわかっていれば脳天狙いましたのに」
「待て。眼鏡は貴様もだろうが。というか、何だその物騒な発想はっ!?」
ラピスとクロードは、両方とも性格や容姿、眼鏡など共通点が多く、同族嫌悪に似た感情を互いに持っている。
協力すれば互いに阿吽の呼吸で戦闘を行えるのだが、いかんせん馬が合わず非常時以外は犬猿の仲なのだった。
「ほらほら。冷酷眼鏡と冷淡眼鏡の一騎討ちだよ。張った張った!」
「何を張るんですの? シール?」
そんな二人を尻目に、エコーが机の上に立って叫び、アルベローナはとんちんかんなことを言っていた。
今は、非常時だった。ラピスはすぐそこに置いてあった本をエコーめがけて投げる。
「あぶしっ!?」
その本は顔面に見事命中し、床に落ちるエコーをクロードが踏みつける。
「誰が冷淡眼鏡ですか、変態」
「誰が冷酷眼鏡だ、おい」
「ダ、ダブルドS眼鏡……ってぇえ!? 痛い痛い痛いっ!」
クロードは無言でエコーの背中を踏みにじる。
「痛い、痛いよクロード君っ!? 駄目これ以上は、いっちゃうからっ。目覚めちゃうからぁっ!? ほんと、らめ、らめえええええっ!」
「キモいっ!」
「うべぶっ!?」
とどめはラピスの本による脳天チョップだった。
「ラピス。エコーはどこへいくんですの? 目は覚めてるはずですのに目覚めるとはどういうことですの?」
「アル……。そんなことよそで絶対に聞かないでくださいよ? そして私にも聞かないでください……」
盛大に溜め息を吐きながらラピスは自分の席に戻った。その瞬間、ラピスは強い衝撃と嫌な浮遊感を感じた。
「…………えっ?! …………ッッ!?」
それはまるでクロードの時と全く同じで、ラピスは天井から逆さに吊るされた。
「あっ、もう一個仕掛けてたの忘れてた」
いつの間にか復活していたエコーがそのようなことを呟いたが、ラピスにはその声は届かない。何故なら、制服はスカート。現在のラピスは逆さ吊り状態だからだ。
「「「ぶふっ!?」」」
教室にいた男子全員が一斉に吹き出した。
訂正、エコー以外の男子全員が一斉に吹き出した。
「──~~~ッ!?」
声にならない悲鳴を上げたラピスは即座に魔法でヒモを切り、着地する。
その顔は湯気が出るのではないかと思うくらい真っ赤で、ずれた眼鏡を直しながら半泣きで告げた。
「…………とりあえず、男子全員記憶飛ぶまで殴ります……。安心してください。記憶が飛んだあとには回復しますから証拠は残りません」
それはこちらにとって、何一つ安心出来ることではない、と思った男子一同であった。
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「あらぁ? 男の子達、どうしちゃったのかしら」
「知りません。男子だけで夜更かしでもしたのではないでしょうか」
「そうなの? 夜更かしはいけないわよ。あら、クロード君まで。一体何をやっていたのかしら」
教室にやってきたイルミナは男子が全員机に突っ伏しているのに疑問を抱いたが、優等生のラピスがさりげなくその方面へと話を持っていき、あの事実は《セイレーン》の女子、主に彼女によって揉み消されたのだが、それはまた別のお話。