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問題児達の稀少魔術《プレミアム・レア》  作者: いけがみいるか
五章 ティターニア・ファミリア
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絡み合う奇妙な縁 2

「──?」


 聞き覚えのない破砕音。いつまで待っても訪れない衝撃。ティアラは一体何が起きたのかを確かめるためにうっすらと目を見開くと、目の前には灰色の魔導書がまるでティアラを守るかのように浮かんでおり、事実ティアラの体には傷ひとつ付いていなかった。


「こ、これはいったい……?」


 まるで状況が飲み込めないでいるティアラだが、ミスリルの生徒達はティアラ以上に困惑したように周囲を見渡す。


「ど、どういうことよ!? あれってたしか、彼のアークでしょ? なのに何で敵を守ってるの!?」

「わかんねえよ! おいっ! 出てこい! 近くにいるんだろ問題児!」


 彼らの言う問題児とは一体誰のことを指しているのかわからなかったが、ティアラはその魔導書からあの時と──ミュウとはじめて出会った時と同じ奇妙な感覚を覚えた。


「くそ! どこに──があぁあっ!?」

「えっ? なに!? どうし──きゃあああ!?」


 ティアラの気がわずかに逸れていた間に、ミスリルの生徒二人が突如上空から凄まじい勢いで落ちた白雷の直撃を受け卒倒する。


「今の攻撃……エルシア=セレナイトか!? おい! 上から来るぞ! 気を付け、ぐぅおっ!?」

「しまった! 影──うわぁああっ!?」


 不意の上空からの奇襲によって仲間二人が戦線離脱したことにより冷静さを欠いた残りの二人は、上空ばかりを警戒していたため、自分達の影から飛び出した闇の斬撃をまともに食らい、先の者達同様その場に倒れ伏した。


「これ、は……」


 今彼らを倒したのは紛れもなく光魔法と闇魔法だ。そしてその魔法の使い手達をティアラは彼らの他に知らない。

 すると森の奥から三人の生徒が姿を現す。


「危ねぇ危ねぇ。ここでティアラが倒されたら何もかもが台無しになるとこだった」

「でもそのせいで無駄に四人も倒しちゃったわね」

「別に構いやしねえよ。どうせ遅かれ早かれだろ」


 グレイ達は魔法が飛び交う戦場と化した森の中を、まるで散歩でもしているかのような軽い足取りで、いつも通りの軽口を叩きあいながらティアラの元へ近寄り、


「アシュラ。頼む」

「へいへいっと」


 グレイに頼まれアシュラはこの場にいる四人全員を影のドームで覆い隠し、周囲と隔絶させる。

 中は真っ暗で外の様子を確認することはできず、音も全く聞こえない。そんな一寸先すら見えないほどの暗闇の中にエルシアが放ったであろう小さな光球がドーム内を照らす。


 気が付けばティアラは本来ならば敵であるはずの《プレミアム》三人に救われ、そして取り囲まれるという、何とも不可解な状況に陥っていた。

 先程からどうにも状況を理解できずに混乱しているティアラにグレイはティアラと目線を合わせつつどこか優しげな笑みでこう切り出した。


「こうやって直接会うのは二度目だな。知ってはいると思うが一応、改めて自己紹介するぜ。俺の名前はグレイ=ノーヴァス。お前の友達、ミュウ=ノーヴァスの兄貴だ。よろしくなティアラ」


~~~


 ──サムスにある競技場ではいくつもの巨大スクリーンに各主力生徒達の白熱する戦闘の様子が映し出されており、観客達は大いに沸き立っている。

 だがリールリッドとゴルドフは先程から動きのない《プレミアム》達がいると思われる影のドームの様子をずっと窺っていた。


 だがそれも無理はない。なんせグレイ達はどういうわけか仲間であるはずのミスリルの生徒を倒し、敵であるはずのティアラと共にドームの中に身を隠したのだ。気にするなという方が無理な話である。

 一体何を企んでいるのか知る由もないがいつものことながら好き勝手してくれるなとリールリッドは深く嘆息する。


「やれやれ。今度は何を考えているんだ、あの問題児共は」

「全くじゃ。うちの《プレミアム》を閉じ込めて何のつもりじゃ? まさかあの中でうちの子を三人がかりで……」

「いや。彼らはそんなことする子達ではないさ。それだけは私が保証しよう。が、恐らくとびきり面倒なことか、もしくはとびきり馬鹿げたことを考えているのだろう」


 いつもの彼らの問題行動を思い出し、思わず苦笑をこぼすリールリッドに、ゴルドフは怪訝な視線を送る。


「随分と信用しているようじゃな。やはり我が子同然の生徒らは可愛いと見える」

「当然だ。ミスリルの全ては私の宝なのだからな」

「はっはっ。あの自己中心的な生意気娘も今では立派な親バカ講師か。傑作じゃの」

「親バカはそっちも同じだろ。あのティアラという子を護るために、色々と手を回していたようだしな」


 リールリッドはあえて皮肉を込めてそう言い返す。普段なら負けじと更に言い返してくるゴルドフだが、しかし今回は珍しく口をつぐむ。


「…………いや。儂は親バカなどではなく、ただの愚か者じゃよ。無駄に長く生きておきながら全くもって滑稽な話じゃ。あの子の身の安全ばかりを考え、世間に知られぬよう方々に手を回し、厳しく情報規制を行い、生徒らにもそれを強要した。そのせいで他の生徒らとの間に溝ができ、軋轢が生じても、あの子は特殊な生い立ちをしているから仕方がないと割りきった。こうすることこそが正しいのだと勝手に思い込んでな」


 ゴルドフは本気で悔やんでいるようで、その顔には自分に対して怒りを覚えているようにも見えた。


「そんな頃にミスリルにも《プレミアム》がおると知り、一度彼らを見に行ったことがあった。その時の彼らの逞しい表情を見て、儂は己の愚かさを思い知らされた。ただ単に身の安全を守るばかりではなく、どんな運命を背負っていてもさっかりとそれに立ち向かえる強い人間に育てることこそがあの子のためになるのだと。だから儂はあの子を同じ運命を背負う彼らに会わせてみたいと思うたのじゃよ。お前さんが見事に育て上げた彼らなら、あの子にとって良い影響があるかもしれんと思っての」


 だがこれはある意味賭けだった。この世で唯一の同類プレミアムに拒絶されれば、今度こそティアラ=レインフォードという少女は絶望の底から這い上がることができなくなるだろう。

 現に今朝は酷く沈んだ表情をしており、戦闘中は自棄にでもなったかのような、自分の身を省みない無茶な戦い方をしていた。

 今はグレイ達と共に影のドームに閉じ籠もり、中の様子は窺い知れず不安にもなる。


 そんな孫を心配するような表情をするゴルドフにリールリッドは苦い顔をしながら、


「持ち上げてくれるのはありがたいが、それを言うなら私も同じさ。そっちは過保護なまでに彼女を特別扱いしたが、逆に私は特別な権利も与えず古びた旧校舎へ押し込んだだけだ。そのせいで彼らは落ちこぼれだの問題児だのと言われることになったのだが、それでも彼らがこうして好ましい方向に成長してくれたのは、同じ悩みを共有出来る仲間がいて、なんだかんだ言いながらも面倒見の良い担任に恵まれたからだ。私のやり方が必ずしも正しかったというわけじゃない。少し違っていれば私も同じように間違えていたかもしれないのさ。いやはや。情けないことこの上ないな」


 同じ教育者からの遠回しの励ましを受け、ゴルドフもゆっくりと頷く。


「全くもってその通りじゃ。互いに猛省せねばならん」

「あぁそうだな。特に老い先短い貴様は、早々に改善すべきだ」

「抜かしよるわ、この生意気魔女めが」


 ようやくいつもの調子に戻り互いを罵りあっていると、サァッと影が消えて四人の姿が現れる。

 その四人の表情を見て、リールリッドは微笑しながら溜め息を吐いた。


「やれやれ。あれは……馬鹿げたことを考えている時の顔だな」


~~~


 時は少し遡り、アシュラの影のドームの中に閉じ込められたティアラは四体の眷獣と共にグレイ達から距離を取る。


 ドームはさほど広くなく、魔力量や質から見ても強度はほとんど無さそうなので、いざとなったら突き破って脱出できそうなので、閉じ込めることを目的としていないようだ。


「こんなことをして何が目的だお主ら。何故味方を討ち取り、妾をこんなところに閉じ込める? 一騎討ちでも望んでおるのか?」

「はっ。そいつも悪くねえ話だが、今は別にそんなつもりはねえよ」

「ちょっと! 話がややこしくなるからあんたは黙ってなさいよ」

「へいへい。じゃエリーも余計なことせず黙ってろよ偽善者様」

「わかってるわよ! しつこいわね!」


 エルシアとアシュラは言い争いをしながら後ろに下がり成り行きを見守る姿勢だ。だがグレイは一歩前に出てアーク《空虚なる魔導書エンプティ・グリモワール》を手に取り話し出す。


「目的ってのは他でもない。お前とこうしてゆっくり話をする場を作るためだ」

「……妾は別に貴様と話すことなど何もないが?」

「あぁ。ぶっちゃけ俺にもない。が、こいつとなら話すことあるんじゃないかと思ってな」

「こいつ…………?」


 そう言うとグレイはポンポンと魔導書を優しく叩く。ティアラは最初、こいつは何を言っているのかとグレイの正気を疑ったが、いきなり魔導書が不思議な光を放ち出したかと思うと、その光はどんどんと人の形へ変化し、思考全てが驚愕で真っ白になった。


「会えて良かった、です。ティアラさん」


 光の中から現れたのは先日喧嘩別れをしたミュウだったからだ。


「えっ…………。ど、どういうことだ?! ミュウ……? お主いったいどこから出てきたのだ? それにどうしてここに!? 確かあなたは道化師の妹ではあってもミスリルの生徒じゃないんじゃ……? 何? 何がどうなって……あれ? 私? 私がおかしいの?」


 グレイはパニックで素に戻ったティアラの口調に少々驚かされながらも、ミュウの背を優しく押す。


「ほれミュウ」

「……はい」


 ミュウはこくんと頷き、状況が一切わからず混乱するティアラにゆっくりと近寄る。


「みゅ、ミュウ……。あなた、一体何者なの……?」

「はい。わたしも改めて、名乗ります。わたしはマスター、グレイ=ノーヴァスのアーク《空虚なる魔導書エンプティ・グリモワール》第(ゼロ)項。無限目録のミュウ、です」

「えっ? ア、アーク……? 無限目録……? 何を言っているの……? 人の形をした、それも生きたアークだなんて、聞いたこと……」

「おいおい。四体もの眷獣を従えし前代未聞のお前が今更常識を語るなよ」


 それは……とティアラは口ごもる。確かに自分もまた《プレミアム》で、他者から理解を越えた能力を持っている。

 とはいえ、そんな話はすぐ信じられないというのが正直な感想だが、同時にこんな馬鹿げた嘘を吐く理由も思い付かない。吐くならもっとマシな嘘がいくらでもある。

 そんな何が真実かわからない中、ただ一つだけハッキリとしているのは、ミュウはグレイの、つまりミスリル側の人間であるということだけ。

 つまり大事なところは何も変わっていない。


「そう……。それで仮にその話が本当だとして、私に近付いた理由は変わらないんじゃない? あなたは道化師から、お兄さんから私達の内情を探ってこいとでも言われていたんじゃないの?!」

「ティアラさん。聞いて、ください……。わたしは確かに、マスターのアークです。ですが、そんな命令はされてませんし、ティアラさんを騙すつもりも、全くありませんでした……」

「それを信じろって? 無理だよ。だってあなたの心の内は私にはわからないもの! これも全部演技なんじゃないの!? 本当に私やブリードの情報を盗もうとしていなかったと証明できるの!? むしろアークなんだとしたら主に命令されたら絶対順守するものなんじゃないの!?」


 ティアラはもう言い訳なんか聞きたくないと言わんばかりに耳を塞ぎ、ブンブンと首を振る。


 ティアラにとって他者とは自分の心を傷付けるだけの外敵でしかなかった。

 ずっと嫌みを言われ続けてきた。罵倒されてきた。謂れのない批難を浴びせられてきた。もうそんなのは嫌だ。

 だからいつも心の内に閉じ籠もり、強い口調を使い偽りの自分を演じて他者を遠ざけ、唯一信頼出来る四体の眷獣と身を守ってきた。

 だから他者を信じることが出来ないのである。


 膝を折って踞り、いやいやと首を振るティアラを見て、どうすればいいのかわからずオロオロと困惑するミュウ。

 そんな二人を見かねたグレイは、最後に少しだけお節介を焼くことにした。


「とうっ」

「──あいたっ!?」

「マスター!?」


 踞るティアラの頭に軽く手刀を叩き込むとその行いにミュウが珍しく目を丸くして批難するように睨み、ティアラの眷獣達も怒りをあらわにして今にも飛びかかってきそうな雰囲気だ。

 でもグレイは周囲には全く気に留めずティアラの瞳をまっすぐに見る。


「なぁティアラ。もしもの話として聞いて欲しいんだが、もしミュウが本当にアークだとして、それが世間にバレるとどうなると思う?」

「えっ……?」


 生きたアークなど前例がない。ティアラの四体同時契約と同等かそれ以上の存在だ。そんなものが世間にバレたらどうなるかなど火を見るよりも明らかだ。


「大騒ぎに、なる……?」

「あぁ、そうだな。そして良からぬことを考える奴等がミュウを付け狙うだろうな。何せ正体不明の無属性、加えて正真正銘生きているアークだ。一体どんな身体の構造をしているのか、生死の概念はどうなっているのか、その能力はどれほどのものなのか、謎は数え出したらキリがない」


 今例に上げたものはマスターであるグレイ自身が一番謎に思っている疑問で、


「そんなミュウがもし良からぬ者に捕まればどうなるか……お前にも予想できるだろう?」


 そしてこれはミュウだけでなく、ここにいる彼ら《プレミアム》全員が常に考えていなければならない危険でもあった。


 百年に一人現れるかどうか。それほどの稀少度レアリティの彼らは魔法の研究をしている者達からしてみれば喉から手が出るほど欲しい研究材料だ。最悪、生死は問わずその肉体だけでも、と考える者達も少なからずいるだろう。

 ティアラはとても口には出せないような悲惨な光景を想像し、青い顔をしながら頷く。


「ならそんな自分の命に関わるほどの大切な話をお前にした理由は、何だかわかるか?」

「私に、話した理由…………?」


 何故ミュウは、こんな自分にそれほどまでの重大な秘密を打ち明けたのか。

 他者との関わりを拒絶し、また拒絶されてきたティアラはこんな簡単なことにもすぐ気付けない。だが必死に考えて、考えて、考えて。

 そして、ひとつの結論に達した。


「私が……友達、だか、ら……?」


 涙目になりながらビクビクと不安そうに尋ねるティアラ。もし違っていればとんだ赤っ恥だし、何より友達じゃないと言われるのが辛い。

 だがこれ以外に何も思い付かなかった。そんなティアラの回答に、グレイではなくミュウが答えた。


「はい。わたしは、自分の意志でティアラさんの、お友達になったんです。決してマスターに命令されたから、じゃないです。だから、わたしは……わたし、は…………」


 これだけはどうしても信じてほしいという必死の想いを乗せた言葉と、その瞳から一筋の涙が溢れ落ちたのを見てティアラはようやく自分の酷い勘違いに気が付いた。


 そうだ。ミュウはこんな自分のことを友達になるといってくれた。ミュウはティアラの弱点を探ったり、貶めようとしたことなど一度たりともなかった。

 むしろ、自分が長年悩んできたこの厄介な性格に呆れず付き合ってくれて、果てには改善するための手伝いまでしてくれたではないか。

 なのにグレイの妹だという理由だけで勝手な憶測で決めつけて、今もどれだけ酷い態度を取ってしまっていたか。


 ティアラは自分がされて嫌なことを知らず知らずのうちにミュウにもしてしまっていたのだ。


 信じて欲しいのに、仲良くしたいだけのに、勝手な勘違いで決め付けて、話を聞こうともせず、酷い言葉を投げつけた。

 同じだ。何もかも。自分が嫌った人達と何も変わらない。


 知らぬ間にティアラの目にも涙が溜まっていた。それは悲しみの涙ではなく、後悔と懺悔の涙。


「ご、め……なさ、い……ッ! ごめんなさいミュウ!! わたし、勝手に勘違い……して……あなたのこと、信じようともしないで……!」

「いえ……。わたし、も……最初にお話ししておくべきでした」


 まだまだ幼く未熟な少女達は目いっぱいに涙を溜めながら互いに謝罪する。

 その様子を少し離れた場所で見ていたグレイはホッと胸を撫で下ろし、エルシアは軽く涙ぐみ、アシュラはニヤリと微笑する。


「取り合えずは仲直り出来た、かな」

「ええ。良かった。本当に……」

「んじゃさっさと始めようぜ。今こうしてる間にも決着付いちまったら興醒めだぜ?」

「あ、あんたね……。もう少し空気読めないの? これだからモテないのよ」

「あぁん!? 今それ全く関係ねえだろうが!?」

「やめろやめろ。何であっちが仲直りした後にこっちで喧嘩が勃発するんだよ」


 風情もへったくれもない空気読めない問題児三人を見て、ミュウはわずかに微笑み、またティアラも羨望の目で三人を眺める。

 自分にもあんな風に言い合える友達が欲しいと強く思う。だからこれはケジメだ。

 ティアラは震える手でミュウの手を強く握り、涙を浮かべた顔で微笑む。


「ミュウ。改めて、本当にごめんなさい。それと厚かましい話だとは思うんだけど、その……もう一度、私の友達に、なって……ください……っ!」

「…………もう、わたしたちはとっくにお友達ですよ」


 初めて見たミュウの優しい笑顔に、ティアラは文字通り初めて心の底から笑えた気がした。


~~~


 それからグレイは話し掛けるタイミングを見計らってからティアラにひとつ提案する。


「っと、そうだティアラ。仲直りも済んだところで俺にひとつ、この最終競技を大いに楽しむための秘策があるんだ。作戦名は《プレミアム・ファミリア》。どうだ? 乗る気はあるか?」


 《ファミリア》。それはティアラにとっての孤独の象徴。しかしグレイの提示したこの名はここにいる五人を結ぶ確かな絆を感じるものだった。


 そして作戦の内容を聞いてティアラは目を丸くして驚いた。


「そ、そんなこと出来るわけが……! 第一許可が降りるはずない……」

「やれるさ。何せ俺は道化師だからな。場を盛り上げるのは得意なんだよ。だからあとはお前の返事次第だ」


 そう言ってグレイは手を突きだし、それに倣うようにエルシアとアシュラがその手の上に自らの手を重ねる。


「やろうぜ同類。折角の奇跡的な出会いなんだ。思う存分楽しもうぜ。それにこういうのは面白おかしく楽しんだ者勝ちって言うしな」

「だが勿論やるからには勝ちを本気で狙っていくからな! 盛大に暴れまくってやるよ!」

「別にこの馬鹿二人のテンションに合わせることないわよ。……でも、一緒に楽しみたいって気持ちだけはこいつらと同じだから」


 重なりあう三人の手を見て少し戸惑うも、隣のミュウがティアラの手を取り、その上に重ねた。

 手のひらから感じる暖かな温もり。仲間の温もり。本当はずっとこれが欲しかったのだ。

 気を抜くとまた泣き出してしまいそうになるのを必死に堪え気丈に振る舞って見せる。


「ふ、ふんっ! 仕方がない。乗ってやるのだ。その荒唐無稽な作戦にな!」


 四人目の仲間プレミアムの協力を得た問題児三人は楽しそうに笑みを浮かべた。


「さて。それじゃ始めようか。四人の奇跡が紡ぎ出す、とびきり馬鹿げた道楽を!」

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