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一年生の部 1

サイドストーリー 《ミスリル・オムニバス》


一年生の部 二回戦 第一試合

レオンvsラピス

 試合開始のゴングが鳴り、レオンは即座に距離を詰める。

 ラピスの武器はライフル。それに引き換えレオンは剣。遠距離戦に持ち込まれればレオンが圧倒的に不利だ。それどころか属性でも火のレオンが不利なのだから、レオンに他の選択肢は無かった。


「《バブル・ショット》」


 直進してくるレオンにラピスは泡の弾丸を放つ。レオンは警戒しながらも体をわずかに逸らして攻撃を躱す。


「《ウォーター・ウォール》」


 続いてラピスは自分の目の前に水の壁を発生させる。レオンは怯むことなく水の壁を斬り裂く。

 しかしラピスは壁の後方へと待避しており、剣を振り下ろした状態のままであるレオンに攻撃する。


「《アクア・スパイラル》!」


 突如発生した渦潮がレオンへと迫る。レオンは剣に炎を灯して迎撃する。


「はぁあっ! 《フレイム・スラッシュ》!!」


 水と火の衝突によってリングに大量の水蒸気が発生する。わずかにレオンの攻撃が勝り、熱気を強く感じる。しかし、ラピスの動きは迅速で、すぐに次の攻撃に移る。


「《スコール・レイン》」


 水蒸気を突き抜けて昇る水柱が宙で弾け、雨のようにリングに降り注ぐ。

 攻撃力は無いが熱気に包まれていたリングは冷やされ、湿気が強まる。


「くそ……。まずいな」


 未だ水蒸気で視界は遮られ、ラピスの姿は見えず、湿気と雨で火は弱まる。更に《スコール・レイン》は相手の体力を削ぎ落とす効果を持つ。効果自体はさほど大きくないが、油断していると命取りになる。

 レオンはこれ以上下手に魔法を使えば再び水蒸気によってより視界が悪くなる。

 しかしそれは同時にラピスも同様に視界が塞がれることになる。狙撃が得意とはいえ、見えない相手を撃ち抜くことは不可能に近い。


 何を考えているのか、と勘ぐっていると横一線に伸びる水の刃がレオンに向かってくる。それにギリギリ気付き、飛び上がって回避する。


 雨によって濡れたリング。足を取られないよう十分注意しながら着地する。そこに今度は三発の泡の弾丸が飛来する。

 完璧な軌道を描きながらレオンの腕と足に命中し、残りの一発は剣で受け止める。


 水属性の攻撃は威力が低いため、これで戦闘不能になりはしないが、足を負傷したのは痛い。

 咄嗟に弾丸が飛んできた方へと火球を放つも手応えはない。それどころか更に水蒸気を発生させるだけとなった。


 何故かラピスはこの水蒸気に包まれたリングで正確にレオンの場所を捉えているようである。

 一体どうやって。レオンが思考に耽っていると再度水の刃が飛来する。今度は横に大きく飛び退き回避する。そして先程と同じように泡の弾丸も襲い掛かってくる。

 レオンは咄嗟に自分の周囲に炎の壁を纏う。泡の弾丸は炎の壁に衝突し、またしても水蒸気を発生させる。


 このままでは埒が明かない。レオンは出来る限り姿勢を低くし、ラピスの狙いを探る。ふと、レオンが地面に手を置く。気付くと、手にはわずかに水滴が付いていた。先程の雨が原因だろう。


「……ッ! そうか……。わかったぞ」


 レオンは何故ラピスがこちらの動きを察知出来ているのか。その理由はこのリングにあったのだ。

 リングにはラピスの魔法により、全体が薄い水溜まりのようになっている。レオンが動くことにより水溜まりが跳ね、ラピスはそれを感じ取っていたのだ。

 通常ではそれだけで相手の場所を探ることなど困難なはずだが、ラピスは水属性で、分析を得意とするスナイパーだ。十分可能性はある。


「なら、これで!」


 レオンは剣に豪炎を纏わせ、真下のリングに向かって放つ。その火力は凄まじく、リングに張っていた水溜まりはおろか、宙を舞う水蒸気すら焼き払う。


 リングどころか会場そのものを熱気に包みこむ。そして、レオンはようやくラピスの姿を捉えた。


「…………無茶苦茶ですね」

「そうかな? ……そうかもね」


 驚きを通り越してもはや呆れているラピスに、レオンは苦笑で答える。確かに無茶苦茶だ。火が水を焼き払った。つまり属性不利をも覆す威力を持った攻撃だったということ。

 ラピスが準備して整えた舞台は、たった一瞬で全て壊された。すぐさま作戦を練り直す必要があるが、レオンがその隙を与えるわけもなかった。


「うおおおっ!」

「くっ……!?」


 レオンの得意とする近接戦に持ち込まれ、ラピスはライフルを盾にしてレオンの連撃を受け止める。何とか距離を取りたいラピスだが、レオンがそれを許さない。


「《フレイム・ドライブ》!!」


 爆発的な五連撃を叩き込み、ラピスはライフルを弾き飛ばされる。その勢いのままリングに倒れ込み、すぐに起き上がろうと体を持ち上げたところを、レオンに剣先を向けられた。


「俺の勝ち、でいいかな?」

「…………えぇ。私の、敗けです」


 爽やかに笑いかけるレオン。ラピスは悔しさで奥歯を噛み締めるも、自分はこれまでだと悟り大人しく敗北を認めた。


 ──一年生の部 二回戦 第一試合勝者

 《イフリート》レオン=バーミリアン

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