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ミスリル・オムニバス 4

『決まったぁぁああああっ! Aブロック勝者はエルシア選手とラピス選手だぁああっ!!』

『ほほう。カインくんは文字通り足元をすくわれた形になったな。だがこれで皆わかっただろう。どれ程の実力を持っていようと必ず倒し方はあるということを。だが勘違いするなよ。決してカインくんが弱かったわけじゃない。ラピスさんの冷静な思考と立ち回りが勝利を掴み取ったんだ。今回はそれがよくわかる面白い戦いだった』


 エミーシャとリールリッドがAブロックの総評に入っている最中に、怪我人は医務室へと運ばれていく。それを傍目に見ながらエルシアとラピスも医務室へと去っていく。

 とは言うも、エルシアもラピスも大きな傷は負っていないので、少し休憩すれば選手用の観客席に戻ってくることになるだろう。


 そんなことを思いながら、レオンはゆっくりと立ち上がる。


「さぁ。次は俺達の番だな。頑張ろうぜアスカ。キャロ」

「当然よ。アタシは絶対あんたに勝つわ!」

「頑張ろうね。二人とも」


 レオン、アスカ、キャロットの三人はそう意気込みながらリングへと向かい、


「まさかカインの野郎が負けるとはな」

「カイン殿とコノハの仇、拙者らで取るでござるよ」

「いやいや。Bブロックにゃレオンとアルベローナがいるんだぜ?! 勝てるのかよ!?」

「弱音吐くなよポルネオ。ギィリよりゃマシだろ」

「……それもそうだな」


 そんなことを話すのはソーマ、シャルル、ポルネオだ。三人はたった一人でCブロックを戦わなければならないギィリ(目が死んでる)に敬礼してからリングへと向かい、


「行きますわよクロード。ラピスに続くのです!」

「わかっている。あの女には負けられない……!」


 先に二回戦へと駒を進めたラピスに続くべく、アルベローナとクロードも意識を強め、


「うっしゃあ! 行くでプディング! 姉御の敵討ちや!」

「お、お~」


 テンションの高いクリムにやや気圧されるプディングは、どうかマルコシウスのことも思い出してあげて、と心の中で願うのだった。


~~~


『大迫力のAブロックを終え、お次はBブロックです! 皆様準備はよろしいですか? では早速カウント始めます! 5、4、3、2、1──試合、開始!』


 試合開始のゴングが鳴り、Bブロックの試合が始まる。

 Aブロックの時と違い、最初からフルスロットルで突っ込む者はおらず、全員が慎重に周りの出方を窺っている。

 Bブロックには《プレミアム》の生徒はおらず、各クラスの人数もそこまで偏っているわけでもない。そのため、どう攻めるべきか考えあぐねているのだ。


「ソーマ殿。拙者、仕掛けるでござる。サポート頼むでござるよ」

「ん? あぁ、やれることはやってやる」


 シャルルが小声でソーマへと話し掛ける。ソーマは何とも不安になりそうな返答をしたが、シャルルは彼のいい加減ながらも仲間想いなところを知っているため、何の躊躇いもなく仕掛けることが出来る。


「いくでござるよ! 《風分身》の術!」


 独特の詠唱の後、シャルルの周りに三つのつむじ風が出現したかと思うと、その風がシャルルの姿へと変わった。


「「「続けて《風手裏剣》!」」」


 分身体のシャルル達が他のクラスに牽制として攻撃を仕掛ける。

 その隙にオリジナルのシャルルは《ドワーフ》の二人の元へ駆ける。


「俺も行くぞぉぉお!」


 シャルルに続いてポルネオもその後を追う。

 《ドワーフ》のクリムとプディングは分身体の攻撃を捌きながら迎撃体勢に移る。


「来んでプディング。負けたらあかんで!」

「わかってる。クリムちゃんはあの忍者ちゃんをよろしくね!」

「畳み掛けるでござるよポルネオ」

「了解ィィ!」


 シャルルは扇子型のアークを大きく振りかざして強風を発生させた。


~~~


「はあっ!」


 一方、アスカはシャルルの分身体を斬り裂き、状況を整理する。

 最初に動いたのは《ハーピィ》のシャルル=オリンピア。彼女は三クラス全てに自分の分身体を差し向けて足を止めさせて、自身オリジナルは《ドワーフ》へと攻め込んでいた。


 風属性に弱い土属性を狙い、舞台上の人数を減らす作戦のようだ。


「なら、まとめてリングアウトにしてやるわ。《フレイム・スラッシュ》!」


 アスカは両手に握りしめている太刀を交差に降り下ろす。炎の斬撃がシャルル達に向かって飛ぶ。

 その攻撃に気付いたクリムやプディングはどうにか防御しようと動きが固まる。


 だがシャルルとポルネオは尚も攻撃の手を弛めなかった。何故なら──


「《サイクロン・サイス》」

「なっ!?」


 突如空から高速回転しながら飛来した大鎌が《フレイム・スラッシュ》を斬り裂いた。


「わりぃけど、邪魔しねえでやってくれるか?」


 ──何故なら、頼れる仲間が自分の後ろを守ってくれているから。

 大鎌を手に取り、気だるげな顔でアスカを見るソーマ。やる気の無さそうな表情をしているくせに、まるで隙がない。それに通常、風は火に弱い。にも関わらず《フレイム・スラッシュ》を容易く斬り裂かれた。それはソーマの魔力の方がアスカの魔力を大きく上回っていることを意味している。


「ふっ。面白い! 本気でやってやるわ!」

「マジかよ……。それなりに手加減してくれねえかな?」

「冗談! 行くわよ!」

「出来たら来ねえでくれ……って、無理だよなぁ……はぁ~」


 ソーマは長々と溜め息を吐き、直進してくるアスカと対峙した。


~~~


「アスカ! 単独で動くと──」

「あら? よそ見してる場合ですの?」

「危ないレオン君! 右から来てる!」


 アスカが単独でソーマへと駆け出したことに一瞬気を取られたレオンの元に羽衣のようなアークを纏ったアルベローナが攻撃を仕掛けてきた。

 それにいち早く気付いたキャロットは短銃のアークの引き金を引き、アルベローナに向かって威嚇射撃を放つ。


「食らいませんわ。《バブル・ダンス》!」


 アルベローナが羽衣を一度仰ぐと彼女の姿が見えなくなるほどの大量の泡が発生し、キャロットの放った炎弾はその泡にぶつかり、掻き消された。


「そんなっ!?」

「もらいましたわ!」


 泡の壁の向こうからアルベローナの声が飛び、直後拳ほどの大きさの水弾が襲い掛かってきた。

 咄嗟に魔力を高め、防御姿勢を取ったキャロットだが、その判断は間違いだった。水に弱い火属性の彼女。それに相手は《セイレーン》序列一位。その攻撃を受けきれるわけがなかった。たとえ耐えられたとしても、大幅に魔力を削られ、すぐに戦闘不能になることだろう。今キャロットは回避に全力を注ぐべきだった。


 ──しかし今回に限り、それは間違いではなかった。


「《ブレイズ・ブレイド》!」


 キャロットに向かって飛来する無数の水弾は、次の瞬間には灼熱の剣に全て打ち落とされていた。


「大丈夫かキャロ?」

「う、うん……。ありがと」

「それはお互い様だよ。それより集中だ。相手は強敵だよ」


 レオンは剣に付いた水滴を払うように降り回し、再度炎を灯して今度は上空に向かって一閃する。

 すると上空からこちらに向かってくる人影が、炎と斬撃とぶつかった。


「ちっ! 《アクア・ファウンテン》!」


 その人影は地上から噴水を発生させ、レオンの攻撃を蒸発させる。


「《アクア・ロード》!」


 奇襲には失敗したが、瞬時に思考を切り替え、その噴水を利用して攻撃に発展させる。噴水から伸びる《アクア・ロード》はレオンの目の前へと着弾し、直後《アクア・ロード》の中から姿を現したクロードはトンファー型のアークでレオンの顔を目掛けて殴りかかる。


「うおぉ!?」


 レオンは咄嗟に腰を曲げてクロードの攻撃を躱す。しかし、クロードは躱されることも計算にいれていたのか、殴りかかったその勢いのまま回転し、レオンの腹部を蹴りつけた。

 だが、レオンはそれすらも予測しており、ギリギリのところで剣でガードし、大きく後方へ飛び退いた。


「危ない危ない。もう少しでまともに食らうところだった」

「くそ、もう一手たりなかったか」


 クロードはずれた眼鏡を掛け直しながら冷静に今のやりとりを分析する。そんなクロードの後頭部に不意の一撃が襲う。


「クロード! わたくしより目立つんじゃありませんわ!」

「馬鹿か君はっ!? 今はそんなことを言っている場合じゃないだろう!」


 その不意の一撃は仲間、であるはずのアルベローナからだった。折角掛け直した眼鏡を再度掛け直しながら、理不尽な一撃を食らわしてきたアルベローナに食ってかかる。


「いいか?! この一回戦で勝ち残れるのは二人なんだ! つまり僕らで争う必要はなく、二人で協力して勝ち残ればいいだけの話なんだ! だから邪魔しないでくれ!」

「なら貴方がわたくしのサポートに回ればいいではないですの! 何でわたくしがサポート側みたいになってますの!?」

「あの大量の泡は僕の姿を隠してくれるものではなかったのか!? てっきり君もようやく連携というものを覚えたものだと思ったが、とんだ勘違いだったようだな!」


 ぎゃいぎゃいと騒がしく言い争いをする二人を、レオンとキャロットはぽかんと口を開けながら眺めるだけだった。


 そんな四人を一気に現実に呼び戻したのは、リング上に迸った暴風と炎熱だった。


~~~


「こんの、ちょこまかと!」

「そんな大振りの攻撃、当たらんでござるよ」


 クリムの持つハンマーは勢いよく空を切り、シャルルは余裕の表情で挑発するようにそのハンマーの上に立つ。


「これで吹き飛ぶがよい! 《烈風昇破》!」

「うわ、うわわわっ!?」


 シャルルの扇から発生した竜巻に吹き飛ばされ、クリムはリングの外へと押し出されそうになったが、寸での所でハンマーをリングに叩きつけ、何とか耐えきった。


「むむ……。しぶといござるな。しかしこれで──!?」

「どぅわあああーーー……ぐへぁ!?」


 再び扇をかざすシャルルだったが、それを振り下ろす前にポルネオがシャルルの前に落ちてきた。


「……ポルネオ殿」

「わ、わりぃ! すぐにどく──」

「《ロック・フォール》!」


 ポルネオの不甲斐なさに呆れていた時、ポルネオと対峙していたプディングが二人に向かって魔法を放つ。上空から二人目掛けて落ちてくる岩石はそれほど大きくもないが、直撃すればいくら風属性でも無傷では済まない。


 迎撃よりも回避する方が得策と判断したシャルルは体に風を纏わせ身体を強化する。


「逃がさへんで! 《アース・ウォール》!」


 だがそれより一歩早くクリムが手を打った。シャルル達の周りに土壁を発生させ、逃げ場を塞いだのだ。


「あ……まずいでござる」

「ぎゃあああ潰されるぅう!」


 唯一の逃げ場と言えそうなところは真上に飛ぶことだが、真上から岩石が降ってきているのでどうしようもない。土壁、もしくは岩石そのものを破壊出来れば何とか出来るかもしれないが、そこまで意識が回らなかった。


 万事休すか、とシャルルが目を閉じたその時。


「《ストレート・ストーム》!!」


 ソーマの叫ぶ声が聞こえ、閉じていた瞳を即座に開く。見ると、こちらに向かってきていた岩石の姿はどこにもなくなっており、クリムとプディングの悲鳴が聞こえてきた。その直後、今度は大きな爆発が起きた。だが四方を土壁に囲まれているせいで何が起こっているのかわからなかった。


「ポルネオ殿!」

「お、おうっ?!」


 シャルルはすぐに真上に飛び上がり、ポルネオもそれに続く。


 結界ラインギリギリまで飛び上がったシャルルはすぐに地上を見下ろした。

 するとそこには、リングアウトしたクリムとプディング、そしてリングに倒れ込むソーマの姿があった。


~~~


「仲間助けて自分がやられてちゃ世話ないわね」

「はっ……そうだな。でもまあ、敵も二人、倒したし、そう責めるなよ……」


 倒れ込むソーマにアスカは太刀を突き付ける。


「ならもう悔いはないわよね。じゃあさっさと降参しなさい。そうすれば痛い目みないで済むわよ?」

「そうしたいのは、山々なんだがな……」


 絶体絶命な状況にあるにも関わらず、ソーマは相変わらずどこかふざけたような口振りだった。


「……そう。とどめ刺される方がいいってわけね。なら! これで終わりよ! 《フレイム・バースト》!」


 アスカは火球を撃ち込み次々と爆発させる。ソーマの姿は黒煙と砂埃の中に消えた。

 アスカが勝利を確信した直後、自分の体が何者かに突き飛ばされた。


「えっ……?」


 アスカを突き飛ばしたのはキャロットだった。何故、とアスカの頭は混乱したが、その答えはすぐに理解した。いや、理解させられた。

 キャロットはアスカを突き飛ばした後、すぐに激流に飲み込まれ、そのままリングの外へと押し流された。


「外したか。だが、これで一人脱落だな」


 アスカはすぐに激流を放った人物を睨みつける。クロードは何事も無かったかのように平然としている。

 アスカは自分の不甲斐なさと、その不甲斐ない自分を庇って犠牲になったキャロットに対する申し訳ない気持ちと、クロードに対する怒りを覚え、逆巻く炎を纏いながらクロードへと飛びかかる。


「あんただけはアタシが斬る!」


 だが、アスカの振りかざした太刀をアルベローナの羽衣が包み込み、そのまま地面に叩きつけた。


「あらごめんなさい。注意散漫になってとても無防備でしたのでつい。親切心から苦言を呈しますなら、少し熱くなり過ぎではないかと。今の貴女はとても淑女には見えませんわ」

「…………こ、の……ッ!」


 完全に頭に血が上っているアスカにそれはただの挑発にしかならない。相手の怒りをわざと煽り、冷静な判断力を削いだ、とも取れるが、アルベローナのそれはただの天然だった。

 それをクロードはよく知っているが、別にわざわざ教えてやる必要もない、と視線をレオンへ戻す。


 だが、そこにレオンの姿は無かった。クロードは決してレオンを警戒していなかったわけではない。過小評価していたわけでもない。細心の注意を向けていた。ただ、ほんの少し、アスカがこちらに向かってきたそのたった一瞬の間にレオンはクロードの意識の外へと移動していた。


「一体どこに──!?」


 すぐに周囲を見渡すもレオンの姿は確認出来ない。ただ、わずかに魔力の波動を感じて視線を上に向けた。そして彼の眼前で突如凄まじい爆発が起きた。


「クロード!?」


 突然のことにアルベローナも驚き、先程までクロードがいた爆煙を注視する。するとレオンがその爆煙の近くに着地した。どうやらレオンは空高く跳び上がっていたようだ。

 煙が晴れるとそこには気を失ったクロードが倒れており、次の瞬間には結界の外へと転移した。


「あら。注意が散漫になってるわよ?」


 その声はアルベローナのすぐ背後から聞こえた。そしてその台詞は奇しくもつい先程自分が発した台詞だった。


「ッ!? しまっ──」

「《千火ノ太刀》!!」


 防御することも儘ならない状態でアスカの連撃をまともに食らい、リング端まで吹き飛ばされたアルベローナだったが、何とか踏ん張ってギリギリでリングに残る。


「《烈風昇破》!」

「えっ? きゃあああっ!?」


 しかし、そこに立て続けに暴風が襲いかかってくることまでは予想もしていなかったのか、そのまま呆気なくリングの外へと放り出されてしまった。


「はぁ、はぁ……。やったでござる……」

「ま、マジか……。すげえな、シャルル」


 アスカは宙に浮かぶシャルルとポルネオを見る。シャルルは既に疲弊しており、魔力も足りないのか、地上に降りてきていた。一方、ポルネオはまだ魔力に余裕がありそうだが、戦い慣れしていないのか、声が震えている。


「勝てるわ。一気に行くわよレオン!」


 一気に駆け出すアスカ。しかしレオンは動かない。何か違和感を感じたからだ。

 でもその違和感の正体がわからない。だから動けずにいたのだ。

 アスカの言う通り、このままいけば勝てるはずなのだ。疲弊したシャルル。実力では余程のことがない限りアスカには勝てそうにないポルネオ。属性もこちらが有利。


 なのに、何故? レオンはすごい勢いで思考を回転させ、ふと視界にあるものが映る。

 それは先程アスカがソーマにとどめを刺した時に発生させた砂埃だ。黒煙は消えていたが何故か砂埃だけはまだ続いていた。

 その時、レオンは違和感の正体に気付いた。まさにその砂埃が違和感の正体だった。

 アスカがソーマにとどめを刺したのは少し前。そして黒煙は消えているのに、何故砂埃だけは未だに宙を舞い続けているのか。

 否。あれは砂埃を宙に浮かし続けているのだ。そしてそんなことが出来るのは──


 レオンは弾かれるようにアスカの方を振り返る。見るとアスカの真上には高速で回転する大鎌があった。しかしアスカはそれに気付いていない。今更レオンが制止を呼び掛けても間に合わない。攻撃を撃ち落とそうにも、アスカを巻き込んでしまう可能性もある。だとすれば魔法を放たれる前に倒す他ない。


「間に合えぇぇ! 《クリムゾン・ブレイド》ォォォ!!」


~~~


 砂埃の中、確実にアスカに狙いを定めたソーマは小さな声で詠唱する。


「《エアロ・ブラスト》」


 最後の魔力を振り絞り、アスカの上空に飛ばしていた大鎌から空気の弾丸を放つ。そのすぐ後、ソーマは砂埃を焼きながら進む紅蓮の炎に飲み込まれた。


~~~


「《フレア・チャージ》!!」


 炎を纏わせながら突進してくるアスカを迎撃しようとシャルルが残りわずかな魔力を振り絞る。


「《エアロ・ブースト》!」


 だがポルネオがシャルルの体を風で包み、真上に吹き飛ばした。


「な、何をっ!?」

「へっ。俺、全然良いとこ無かったけど、最後くらい格好付けさせろや」


 ポルネオは満身創痍のシャルルを庇って、アスカの攻撃の届かない上空へと緊急避難させたのだ。


 打ち上げられたシャルルと入れ替わるように、ソーマが放った《エアロ・ブラスト》が地上に向かって飛んでいく。


「はあああっ!」

「グッハァァアッ!?」


 強烈な一撃をまともに受けたポルネオは結界の外へと押し出され、アスカはすぐに空に退避したシャルルへと視線を移す。が、彼女の目に映ったのはシャルルではなく、空気の弾丸だった。


「…………はっ?」


~~~


 試合終了のゴングが鳴り、会場には歓声が飛び交う。

 結界内に立ち上っていた黒煙と砂埃がようやく晴れ、最後までリングに残っていた二人の姿が確認出来るようになった。勝利したはずの彼らは、しかし勝者のそれとは不釣り合いなほどの複雑な表情をしていた。

 一方は助けられなかった者。

 もう一方は助けられてしまった者。

 彼らにとってこの試合は複雑な感情を残す結果となってしまった。

 しかし、魔術師は実戦主義であり、結果が全て。どのような理由があっても、最後までリングに残っていた者が勝者である。

 そして会場のスクリーンにBブロックを勝ち残った二人の名前が表示された。


 ──Bブロック勝者

 《イフリート》レオン=バーミリアン

 《ハーピィ》シャルル=オリンピア

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