オレと熱帯夜
入れてて良かったR15タグ。変態注意です。閑話は飛ばしても大丈夫!
その日の夕食はなかなか喉を通ってくれなかった。
母の料理は美味い方だと思う。舌が慣らされているのかもしれないが、家に呼んだりお裾分けしたりで家族以外が食べた際にも好評をいただく事が多いのだから多分美味しいのだろう。
そんな母の料理が喉を通らず、半分近くを親父に食べてもらう事になった。
親父は身体の調子が悪いんじゃないかって心配してたな。胸がいっぱいだとか言ってゴマ化したけど悪い事をしてしまった。
身体は全く問題ない。
問題なのは気持ちの方だ。
真っ暗な部屋の中、寝よう寝ようと意識しながらもなかなか眠れず寝返りを打つ。そんな事をすでに一時間以上も繰り返していた。
当たり前といえば当たり前だが、今日は自分のベッドに一人で寝転がっている。
夏真っ盛りのこの季節、一人で寝る方が熱が篭らなくて快適だ。布団が熱を持ち始めたら寝返り打てばひんやりした感触に身を沈められる。今日は特に雨のせいで蒸し暑いのもあって、とっくにパンツ一丁になっている。それでも眠れないのは夕食時の事を引きずっているからだろう。
意識してない証拠……かぁ。
親父が安堵しながら言ったその台詞を頭の中に浮かべてはずっと悶々と考えているのだった。
思えば昨夜もあまりよく眠れなかった。
暑かったから、というわけではない。下手に寝返りを打とうものなら隣で無防備に眠る柔らかな物体に触れかねなかったからだ。もしそうなってしまったら自制が効くとは思えなかった。
大体、スキンシップ激しすぎなんだよ……
仰向けに寝転がった状態で両手を胸に当ててみる。昨日今日と特定の人物には非常によく触られたり揉まれたりした胸である。そのほんの少しだけいつもと違う感触に、知らず心は高揚していた。確かに触れていたくなるのが理解出来るくらいには心地よい柔らかさをしていると思う。
けれど触っているうちに思ったよりも小さい事に気づいて首を捻る事になった。
昼間はもう少しあると思ったんだけどなぁ?
首を持ち上げて見下ろしてみるが、部屋が暗過ぎて被っている肌布団のシルエットくらいしかわからない。
上半身だけ起き上がってカーテンを開いてみるが、生憎の天気で月も出ていない為、部屋の暗さは変わらなかった。
こんなもんなのかなぁ。
見た目と実際のボリュームには差があるのかもしれない。そう思いつつ諦めをつけるために再度胸に触れてみる。すると不思議な事に先ほどよりもより深く柔らかい感触が返ってきた。
はっ! そうか、重力!
どうやら仰向けの状態だと胸が重力に負けて脇の方へ落ちてしまっていたらしい。上体を起こして重力の方向を変えてやれば脇へ逃げていた分が本来の位置に戻ってより厚く、より柔らかくなるというわけだ。
そう気づいた時、脳裏に閃くものがあった。
待てよ。という事は胸に肉が集まるように下向きに……例えば四つん這いになればもっと大きくなるのではないだろうか。
好奇心は猫をも殺すという言葉がある。
イギリスの諺だが、九つの命を持っていると言われるほど容易には死なない猫ですら好奇心によって命を落とす事があるという意味だ。
逆に言えばそれだけ好奇心というのは抗い難い感情であるとも言える。
また、ここは私室であり、周りには誰も居ない。暗闇なのもプラスだと言えるだろう。
思い立ったが吉日。早速身体を反転させて四つん這いになってみる。膝立ちに立って腰を曲げ、腕を突っ張って布団との間に空間を保つ。すると確かに胸の辺りでかつてない量の肉が揺れる感覚があった。期待に胸が高まる。しかし感覚だけでは確かな事はわからない。やはり触れてみるのが確実だ。
ところが、である。四つん這いのままでは両手をついているので当然触れる事など出来はしない。腕一本で姿勢を保って逆の手で触れてみるが、片手だからか先ほどとさほど違うようには思えなかった。
う~ん、やっぱり両手で寄せたりしながら触らないとわからんな。ならば――――
少し考えてから突っ張っていた腕を放し、上体を肩で支えるようにして両手を胸に添えてみる。少し苦しい体勢になるが、これならば両手は自由になるし胸の下に空間も確保出来るので、ボリュームを確保したままその感触を堪能する事が出来るのである。
唯一の欠点は自分の胸を触りながらお尻を突き出した格好になるので非常に情けないという事だが、ここは私室であり、周りには誰もいない。暗闇なので自分にも見えないから自己嫌悪にもなり難いと言えるだろう。
そっと手を添わせて触れてみると、ふにゅんと逃げるように揺れる感覚があった。逃がさないよう、両手で包み込むように触れると、かつてなく柔らかでボリューミーな感触が返ってくる。その大きさは指の隙間から零れんばかりだ。仰向けの時とのあまりの違いに寄せて上げるブラが人気になる理由が本当の意味でわかった気がした。
あいつの胸もこのくらいなのかな…………?
ふと脳裏にいくつかの光景が浮かび上がる。どれもこの二日間で見た景色だ。昨夜、パジャマに着替える時、今朝出かける前、昼間お店のスタッフルームみたいなところで。
どれもちゃんと見たわけではないが、透き通るようなキレイな肌がなだらかな曲線を描いて膨らんでいる様は神々しくすら思えた。
あの胸に触ったらどんな反応が返ってくるだろうか。殴られるかな。蹴られるかな。もしかしたらまた口を聞いてもらえなくなるかもしれない。
けど今だけいいよな? 自分の胸なんだもん。心の中で姿を重ねるくらいは許されるよな?
何度も言い訳を繰り返し、荒くなる吐息を抑える。
呼吸を整えつつ目を閉じ、想像の中で手を伸ばして、こちらに背を向けて着替える女の子を後ろから抱きしめるようにしてその双丘に優しく触れた。
と同時に現実には自分の胸に手を触れさせ、ゆっくりと力を込めようとした。と、その時。
「おーねーえーっちゃーん! 一緒に寝よーっ!」
突然ドアが開かれたかと思うと想像の中にいたはずの女の子が大きな目を見開いてこちらを凝視していた。開かれたドアからは廊下の明かりが差し込み、言い逃れも出来ないほどあられもない格好になったオレの姿を浮き彫りにしている。
おー、まい、ごっど。
というわけでお兄ちゃん視点でした。次回もこの続きでお送りします。




