プロローグ
やがて来るであろう近未来
我らが地球は、三度あった大戦を経て諸国が統一され、新たな統一国家「世界政府」による統治体制が施かれていた。過去、核戦争による破壊と汚染、激しい環境変動により、人類総出で当たらなければその滅亡は避けられない世界となったにも関わらず、意地・欲・見栄・しがらみに凝り固まった人類とその国々は、互いに歩み寄ることをしなかった。そのためにさらなる愚行を重ねなければ成らなかった統一は、当時の統一指導者をして、「私は、知恵ある人類に絶望した」と謂わしめた。
そして、統一から50年後の現在、生物絶滅の寸前だった地球は生き還った。大なる力と指導者の覚悟を根源に世界政府は次々と復興策を実行する。時には人体にまで直接の害をもたらす「広域除染薬」の投下など非人道的施策にも迷いが無かった。大のための少なくない小の犠牲。実に総人口の八割にも及ぶ犠牲を出しながらも、人類は「生きる世界」を取り戻したのだ。腐った大地から生命の芽が出たあの時、我々は只々涙を流し、そして吼えた。
だが、安定した世界はそれまでの統一事業で無視され燻り続けてきた問題を再燃させた。これまで、宗教、歴史観、人種、民族、言語、慣習など思想の統一が図られないまま強引に統一がなされたが為に、至る所で争いが起こったのだ。それは徐々に各地に拡散し、世界紛争となった。
これに対し世界政府は、真っ先に政府内部の改革を行った。紛争の原因が思想面に起因している限り、誰もが政府に反旗を翻す可能性があったからだ。指揮系統を指導者の下に一本化し、相互監視と外部からの監視による体制を構築することにより、紛争鎮圧に向けて万全を期すことができた。
その上で、世界政府は旗下の戦力を統合し、未だかつてない強力な軍隊・世界平和維持軍を創設して事態の鎮圧に当てた。世界平和維持軍は圧倒的武力を背景に各地の紛争に介入し、容赦など微塵もない一方的殺戮を行った、ある時には一夜にして大都市が荒野と化したこともあった。またある時には世界政府創設時のメンバーが紛争関係者に接触したことで粛清されたこともあった。最早、対話などなかった。少しでも抵抗した者はたとえ降伏しようとも有無を言わさず全て消し去さり、まるで人類から反抗する思考すら奪うかのような徹底した弾圧により、紛争の火は忽ちのうちにその勢いを弱めやがて消え、かつてない規模だったはずの世界紛争は僅か3ヶ月で終結を宣言された。
世界紛争の終結後、世界政府は同じ過ちを二度と繰り返さぬように民族統一政策を実施する。氏姓を名乗らせない棄姓令を始め、虚学焚書、度量衡・言語の統一など、次々と改革を行い人々はそれを受け入れた。
そして世界は漸くにして静寂のときを迎える。
と思われた…
力でねじ伏せても、それが力である限り、力で振り解かれる。
世界政府の思惑は当たらず、徹底した武力による弾圧は、武力による新たな反抗を育ててしまった。
あえて、世界政府を世界を照らす太陽と例するならば、その光に照らされた物には影が伴うかのように、世界政府に反抗する勢力は世界各地に存在していった。平和維持軍によって大半が壊滅させられたものの、逃れたそれらは一人の男のもとに結集し、秘密結社『不滅の魂』として世界政府に比肩しうる力をつけた。近代兵器によって武装された数と質を有する平和維持軍に対し、肉弾のみでこれを蹂躙する『不滅の魂』…
地球の平穏はまだ来ない。