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第一話-プロローグ01

初投稿です。ちょっと長くなってしまいました。

途中で飽きたりせず、最後まで読んでいただけると有難いです。


 「さあ、始めようぜ。俺の名は神宮寺 鏡(じんぐうじ かがみ)。スサノオ、お前を倒す!」



 さて、何でこんな事になっているのだろうか?俺には分からない。「神」を名乗る者に対してケンカを売るなんて、正気の沙汰じゃない。普段の俺なら絶対にしない。だが、これだけは言える。絶対にしないはずのことをこの目の前に居る奴は俺にさせている。そして俺はしないはずの事をしてしまうほど怒って、キレている。



 まあ、それも仕方がないことだ。もう既に此処は正気ではいられない、常識の通用しない世界...死後の世界。いわゆるあの世に居るのだから。俺は死んだ。目の前にいる「神」の手によって殺されて...



 おそらく、俺の運命は半日前に起きた出来事から狂い始めたのだろう。

 


 今まで俺は「死」というものについて考えたことはなかった。自分が死ぬと思ってなかったからだ。八十歳まで生きて、結婚して、幸せに暮らすと思っていた。もちろん死ぬときは、苦しまず、ボケたり、無駄に長生きしたりせず誰にも迷惑をかけないで、眠るように死ぬはずだった。これが俺にとっての理想だった。



 だが、そんな理想は叶うことがなかった。神の前ではそんなちっぽけな理想など、無に等しいのだとその時の俺は知らなかった。だが、「死」が目前に迫り、死ぬ間際に俺が祈った相手は神であった。祈った相手である神こそが俺を殺したのだということに気付けるはずもなかったのだから、仕方がないことではあるが......



 仕方がないからと諦める訳にはいかない。俺の命という俺にとって最も大事なものを奪ったのだから、神にその償いをさせるまでは死んでも死にきれないから......



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 その日の朝は妙に静かで、なんとなく不気味だったことを俺は覚えている。快晴であるにもかかわらず、なぜか雨が降りそうな何の根拠もない予感がした。起きてすぐ、顔を洗い意識をはっきりさせる。歯を磨き、着替えて、朝食を食べる。朝食は、ごはん、みそ汁、卵焼き、鮭の塩焼き、漬物、納豆、海苔といったこれぞ日本の朝食といったメニュー。作った俺も驚くほど、良いものが出来た。奇跡の味だった。よくよく考えるとこれが俺に訪れた最後の幸運だったのかもしれない......



 その後、俺の通う高校へと行く。傘を忘れたことに気が付く。天気予報では降水確率0パーセント。天気予報と自分の予感。信じるのは普通なら天気予報。だがその時の俺は自分の予感を信じて傘を取りに行くという選択をした。その日はもう遅刻が決定している時間に目覚めたのでいまさら急いでも遅く、ある程度ゆっくり出来たのだが、なぜか家にいる気にならなくて、家を出た。まるで何か大きな力に操られているような感じだった。傘を取りに行くために一度帰宅したのでもう午前中には着けないだろう。少々距離があるので、着くころにはちょうど昼休みかなとか考えながら歩く。



 歩き始めて30分ほど経ったころ、俺は軽いふらつきを感じて、近くの木によりかかった。こんなことは初めてであった。今まで感じたことのない感覚に戸惑う。今まで俺は、神の加護でもあるのでは、とバカなことを考えるほどの一切病気をしない健康体だったから。戸惑うことによってふらつきが止まるわけがなく、治まるまで少し休憩することにした。近くのベンチに座る。



 ふらつきが治まり、高校へと向かう。ふらつきは治まったものの明日病院に行こうと思った。今思い返すと、なぜあの時にふらつきが出たことを、疑問に思わなかったのだろう。俺がそんなことを考えないように、「神」が調整していたのだろうか?今更考えてもすべて遅いことだが。さて、まもなく俺の人生が終わる。誰にも気づかれずに死に、身元不明の死体となるまであと少し。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 俺が高校につくと、そこは地獄と化していた。人々は泣き叫びグロテスクな格好をした醜く、目、口、手のたくさんある怪物...クトゥルフ系かな?から逃げる。食われていく。燃え盛る炎から逃げる。燃え尽きていく。激しく揺れ動く大地から逃げる。押しつぶされ、大地にのまれていく。吹き荒れる嵐から逃げる。体を切り刻まれる。この世の終わり、終焉とはこのような光景になるのだろう、地獄とは正にこの光景のことだったのかと気づく。俺は腰が抜けてしまい、座り込んでしまった。ほかの人々のように助けを求めたり、逃げたりすることはできなかった。



 ただ絶望していた。頭痛、予感。すべて俺の身を守ろうとする生存本能から来たのだろう。気付けなかった。警告をしてくれた生存本能に詫びる。それと同時に、傘は雨じゃなくて、飛び散る血液に濡れないように傘を持って来ようと思ってしまったのかと今更なことを考える。覚悟は決めた。19年の人生。十分生きたというには短すぎるが、なかなか楽しかったので、良しとする。まだやりたいことはたくさんあった。神様に祈る。来世では平穏に死ねますように。こんな終わり方だけど、あんたの作った世界はなかなかに良かった。またこの世界で暮らせますように。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 あれ?俺生きている?



 前を見ると、炎は嵐によって消え、消した嵐も目の前から去っていく。怪物ももういない。地面はまだまだ揺れているが、もう安全だろう。安心した俺は立ち上がる。覚悟が無駄になってしまった、とか、神様に祈るなんてちょっと恥ずかしかった、とか考える。



 あれ?俺は何で空を見ているんだろう?どうして倒れているんだろう?どうして...右足が付いて居ないのだろう?



 俺は逃げる。覚悟決めたとか言ったけど、あれ嘘です。神様、やっぱり来世のことなんて置いといて、今生きたいです。ほかの人々とは違うとか思ってたけど助けてほしいです。逃げたいです。神様助けて!祈りは届かなかったようで、俺にはもう手足は残っていなくて、後は胴体が喰われるのを待つのみ、といった状態になっていた。目の前に怪物の口がある。肉片がこびりついてなかなかにひどいことになっている。そして、俺は喰われた。



 最後に思ったことは、怪物って体温高いんだ、ということだった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 目が覚める。目が覚めるなんてもう二度とないと思っていた。よく分からない感覚。死んだはずなのに生きているというのはこんなにも違和感のあることだったのかと気づく。周りを見る。もう二度と死にたくないから。油断はしない。ここは真っ白な空間だった。広さは分からない。無限に続いているように感じる。音はない。本当の静寂というのを初めて知る。こんな空間地球にはない。天国なのだろうか?疑問に思い声に出す。



 「誰かいないのか?此処は何処なんだ?俺は死んだはずなんだけど...」



 その時声が聞こえてくる。



 「ここは次元の狭間かな。俗にいう、あの世です。そんなことよりもまず祝福させてもらおうか。おめでとう。」



 その声は綺麗であった。澄んだ声というよりは、なめらかなこえだった。



 「なんで俺が死んだことであんたに祝われなくちゃいけないんだよ。あんたは誰だ?」



 「君は目覚めたのです。能力に。第5975兆6734億4697万9741知的生命体居住区―通称「地球」そこで行われた、生命危機時における、人間の生存本能による能力発現実験。3万回を超える実験の中で初めての発現者。君は僕たちの仲間です。君をこの「偽神」の仲間に受け入れましょう。僕のことは「スサノオ」と呼んでください。これからよろしく。」


  

 「実験?じゃあ俺はお前たちのせいで死んだのか?」


  

 「そうですが何か?いいじゃないですか。私たちと同じ神になれるのですから。そんな過去のことなんて忘れて、楽しい未来のことを考えましょう。そのほうが生産的ですし。」



 「そんな過去のことって......お前ふざけんなよ!お前のせいでこっちの人生は終わったっていうのに!」



 「ふざけてないですよ。もうあなたは死んでいるのです。生き返ることはあり得ません。だから、未来のことを考えましょうと言っているのです。何かおかしなこと言ってますか?」



 「ああ。おかしなことだらけだ。俺はお前らによって殺された。一生恨むぜ。俺がお前の仲間になることは一生ない。「偽神」?なんだそれは。くだらない。そんなもののために 殺されるなんてありえない。たくさんの罪のない人々を殺して平然としているお前は腐っ てやがる。地獄に落ちろ!」



 「さきほどから神に対する敬意というものが感じられないのですが。それと、僕はスサノオと呼んでくださいといったはずですよ。あまり僕を怒らせないほうがいいですよ。」



 「敬意なんて払わねえよ。お前のいうことなんてききたくねえ!」



 「いいでしょう。あなたは僕を怒らせた。神である僕を。仲間にしてあげましょうと言って差し上げたのに残念です。死んで詫びやがれ!」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 スサノオが攻撃してくる。このことは、予測がついていた。というか自分から攻撃させるように仕組んだ。俺の持つ「能力」はおそらく、「予測」。生存本能が自分を守るために脳内で高速に演算し、相手の行動を予測する能力。これが俺の能力の正体だろう。だが、あくまで「予測」であって、「予知」ではない。俺は能力が発現してからあまり時間がたっていない。まだ能力の全容を把握していない自分に比べ、「先輩」(・・)であるスサノオのほうが能力面では上手。ならば、自分の「予測」を上位互換である「予知」に近づければよい。自分の持つ知識、与えられた情報から仮定し、絞り込む。そして「予測」の精度は上がり、「予知」に近づく。「スサノオ」、その名前は素戔男尊(スサノオノミコト)から来ていることは間違いない。そして俺は「スサノオ」には素戔男尊の素質があり、そう名乗っていると仮定した。ならばスサノオは凶暴かつ子供っぽい性格を持っていることはすぐにわかる。そして、スサノオの能力はもっとも特徴的な話。八岐大蛇を退治した事で時に手に入れた、草薙の剣もしくは天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)と呼ばれる剣から来ていると仮定できる。天叢雲剣には雲という字がある。スサノオの名前には嵐や雨といった意味も含まれる。これらは五行思想の「水」にあたる。また、草薙の剣には草…五行思想の「木」に当たるものを薙ぐ力がある。これは「金剋木」。つまり木を切り倒す「金」の力があると考えられる。剣は金属。また、スサノオは凶暴。凶暴は怒り。怒りは「金」の属性を持つ。よってこれらのことからスサノオは「金」を持つ。そして、素戔男尊には木を授け、木の用途を定めた逸話がある。このことから、五行思想の「木」も持っていることが仮定できる。以上のことより、スサノオは五行思想の「水」、「金」、「木」を持ち、怒りやすく凶暴であると「予測」する。たくさんの仮定によって絞り込まれた「予測」は「予知」と化した!



 これだけのことが分かれば対策は簡単。だからこそ攻撃させることにした。



 スサノオは今怒っている。感情というのは大きなもの。よって、「金」の力が増す。強くなった「金」により、スサノオの持つ「木」の力は完全になくなった。「木」が無くなり、燃えるものが無くなって「火」は消える。「火」が無くなったので燃えた後の灰が出来ず、「土」はやせ細る。「金」は「土」の中にある。やせてしまった「土」からは良い「金」は生まれない。「金」は金属に当たる。金属は熱を伝えやすい。つまり、熱しやすく冷めやすい。本来ならば冷たい金属に水は凝結し「水」が生まれる。しかし今のスサノオの「金」の質はあまりよくない。よって良い「水」は生まれない。



 スサノオを怒らせるだけでもともと持っていた「水」、「木」、「金」の力を下げることが出来た。後は怒りによって作られる「金」を封じるだけ!「金」を封じるには、「火」の力を持って立ち向かえば良い。スサノオのように五行のバランスを乱さないように、「火」を強める。「火」には紅や血脈が含まれる。また、楽しむ感情も含まれる。楽しむ…つまり笑う。そして俺は......



 「ばーか(笑)」



 とスサノオに笑いながら、舌を見せて挑発する。舌は血管が集中している。もちろん赤い。血脈のある赤い舌をだし、笑うことにより、「火」の力を強め、儀式へと昇華させる!



 「貴様......神に向かってそのような挑発。よっぽど死にたい様だな。分かった。今すぐ直々に殺してやろう!」



 スサノオは怒る。怒ることにより自分の能力が封じられていることも知らず。自滅していく。まずい...本当に笑えてきた。神を笑うなんて恐れ多い事。普段の俺なら絶対にしない。だが、俺はもう普段の状態ではいられない。正気なんてもうない。このままでは狂ってしまいそうだ...五行のバランスを崩さないようにしなくてはいけないのに...



 だが、もう少しで終わる。能力を使えないスサノオは、ただの人と変わらない。ならば、あとは殴って復讐するだけ。俺を殺した相手を。俺のことを弱者だと、自分のことを強者だと思っているやつを下剋上して倒す。



 「最高に楽しい!」



 暗く愉悦に浸り笑みを浮かべる。



 此処で状況は最初に戻る。



 「さあ、始めようぜ。俺の名は神宮寺 鏡(じんぐうじ かがみ)。スサノオ、お前を倒す!」


誤字等ありましたら報告お願いします。

ちょっと、最初の状態から設定などを変えました。

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