第一章 Desert Rose 七
七
「待て、逃げるな」
「うわ!」
瓦礫の向こうにいたのは、子供だった。悲鳴を上げて逃げようとする少年の首根っこをヴォルフが掴み、引き止める。彼は尚も逃れようと両腕を振り回したが、ヴォルフの手は離れない。緩そうなズボンを穿いた足だけが、空しく宙を蹴る。
この町の子供だろうか。しかしこんな焼き尽くされた町に、子供が一人でいるというのも妙だ。ヴォルフが困惑して顔をしかめると、脇からジゼラが顔を出した。
「落ち着け少年。この人はこの通り何人か殺して来たような人相だが、呆れる程お人好しだ。腹が空いても食べたりはせぬぞ」
「お前は私をけなしたいのか? 子供を落ち着かせたいのか?」
子供を宥めようとしている者の言葉とは到底思えなかった。しかし柔らかな声を聞いて、少年は恐る恐る振り返る。ヴォルフの声が低いから、怖かったのだろう。
ぽかんと口を開けたまま、少年は忙しなく瞬きを繰り返す。状況が把握出来ていないようだった。年の頃は十前後だろうか。ふわふわとした栗毛が光に透け、明るい茶色に見える。
「……人間? アルカナじゃない?」
ヴォルフはどこをどう見たらアルカナに見えるのか問い詰めたかったが、やめた。代わりに手を離すと、少年は二人に向き直る。彼の薄い眉は、不安そうに下がっていた。
暫く無言のままヴォルフを見つめていた少年は、我に返ったらしく唐突に目を見開いて彼のコートを掴んだ。ヴォルフは反射的に身を引く。
「ねえ! 時計見なかった? 銀のやつ!」
「時計? なんだ、懐中時計か?」
問い返した事で知らないと察したのか、少年はコートを離して肩を落とした。ヴォルフは怪訝に眉を寄せ、ジゼラを振り返る。彼女は黙って瓦礫を乗り越え、少年の前に立った。
ジゼラが目線の高さを合わせるように屈むと、少年は彼女を見上げて頬を染め、俯いた。その顔を覗き込むようにして、ジゼラは首を傾ける。
「時計を捜していたのか?」
少年は黙ったまま、僅かに頷いた。小さな手で自分の服を握り締める彼の姿が痛々しく見え、ヴォルフは目を伏せる。
「パパの形見なんだ。逃げる時、落としちゃって」
呟く声を聞いて、ジゼラが眉尻を下げた。ヴォルフは何も言わずに頷く。縁もゆかりもない子供だが、親の形見を捜していると聞いてしまったら手伝わない訳には行くまい。
こんな世の中だ、親を亡くす子供は少なくない。それでも見かける度に哀れに思うのは、自分も同じような境遇にあるからだろうか。
「捜すか」
勢いよく顔を上げ、少年はヴォルフを見上げた。唇に笑みを浮かべて見せると、彼は嬉しそうに破顔する。長くこの瓦礫の山を探していたのだろう。顔は砂埃で汚れていたが、眩しいほどの笑顔だった。
「ありがとうおじさん!」
おじさん。その呼称に、ヴォルフは驚愕して目を見開く。しかし文句は言わずに、肩を落とした。
このぐらいの子供から見れば確かにおじさんだろう。しかし言われた方の心境としては、複雑だった。若いつもりもないが、いざ言われてみると落ち込むのだ。
「おじさんでも、私はあなたが好きだぞ」
肩を落とすヴォルフを見上げて、ジゼラが慰めるように背中を叩いた。ヴォルフはあからさまに嫌な顔をする。
「お前にはそれが全く慰めになっていない事が分からんのか」
ジゼラは小首を傾げ、今度は少年を見下ろして目の前に手を出した。少年は彼女の手を取り、不思議そうに、同じように首を捻る。それから、おもむろに背後を指差した。
「うちから逃げてきて、この辺で転んだんだ。そっちの入り口の方はもう探したんだけど、なかったよ」
「この辺りにもなかったなら、走っている間に落としたのかも知れぬな。家の方に行ってみよう」
うんと返し、少年はジゼラの手を引いて歩き出した。会った時は不安そうだったが人を見付けて安心したのか、彼の足取りは軽い。ヴォルフは危うく見送るところだったが、ジゼラが少年の手と一緒にコートの端を握り込んでいたので、引っ張られるようにして後を追う。器用なものだ。
親と死別する辛さは、ヴォルフにも分かる。両親が他界したのはこの少年と同じほどの年の頃で、その別れは身を切られるより辛かった。それよりも、親を知らない妹が不憫に思えて悲しくなるから、あまり思い出さないようにしている。
「この町の人は、皆避難しているのか?」
ジゼラは下を向いて時計を捜しながら問い掛けたが、少年は顔を上げて彼女を見た。ヴォルフは会話には入らず、懐から砂時計を取り出す。
みすぼらしい砂時計に変化はなかった。これもヴォルフにとっては、両親の形見のようなものだ。
「そうだよ。戦車が来た後、ライオンも来たんだから」
「ライオン?」
「わかんないけど、見たら目が潰れるって。みんなライオンて言ってた」
「『力』か」
後ろから口を挟むと、二人同時に立ち止まって振り向いた。しかしヴォルフは砂時計に視線を落としたまま、顔を上げない。分厚い手袋越しにも、砂時計がかすかに熱を発しているのが分かった。
確かに、タロットがいる。「力」にしろ「戦車」にしろ、まだこの町にいるのなら時計を捜しても無駄だ。タロットは人の念がこもったものを見付けると、それがどんな念であれ拾って取り込む習性がある。少年の時計は取られている可能性が高い。
「フォース? ライオンのこと?」
「そう、ライオンではなくタロットだ。続けて襲われるとは、災難だったな」
タロットは種類が同じなら概ね同じような姿をしており、「力」なら、ヴォルフも何度か見た事があった。あのタロットが出たのなら、少年が見るなと言われた理由も分かる。普通の親なら、あれを子供に見せたくはないだろう。
ジゼラは暫く不思議そうにヴォルフを見上げていたが、少年が歩き出したのですぐに向き直った。瓦礫や煤、炭化した物が散らばった道を注意深く見ながら、二人はゆっくりと進む。障害物を避けながらの歩みは、焦れるほど遅かった。
砂時計が発する熱で、徐々に手袋が熱くなって行く。ヴォルフは厳しい表情で顔を上げたが、少年が煤けた家の扉を開けたので、口を噤んだ。子供の行動というのは常に唐突すぎて、ついて行けない。
「うちに置いてあるかもしれない」
「ここが、君の家か?」
聞きながら、ジゼラは少年の後に続いて家の中へ入って行く。外壁は黒くなっていたが中は無事だったようで、室内は整然と保たれていた。人だけがいなくなったような光景が、物悲しくも思える。
コートを引かれていたので外で待つ訳にも行かず、ヴォルフはジゼラに続いて中へ入る。少年はジゼラの手を離して、暖炉の中を覗いていた。
「お母様は、いるのか?」
ジゼラはヴォルフのコートを掴んだまま少年に問い掛けた。彼はうんと返して、暖炉に溜まった煤を火かき棒で混ぜる。そんな所にはないだろうとヴォルフは思ったが、言わなかった。
「ママに黙ってきちゃったんだ。怒られるや」
「そうか。なら早く見つけよう」
「ママ怖いんだよ、すぐ怒るんだから」
手伝おうとしたかやっとコートを掴んでいた手が離れたので、ヴォルフは開いたままの扉から外を覗く。室内の二人が和やかに雑談する一方で、彼の表情は硬いものだった。
「あまりお母様を怒らせるような事をしてはならぬぞ。こんな所に一人で来るのも駄目だ、危ない」
ジゼラがまともな事を言っているのを聞いたのは、初めてだった。少年はうんと軽く返したが、ヴォルフは驚く。彼女は訳の分からない事しか言わないと思っていたから、少々意外だった。
しかし、そんな事に驚いている場合ではなかった。
「中にいろ」
言いながら、ヴォルフは外へ出て周囲を見回す。建物に視界を遮られて肉眼では見えないが、砂時計は確かにタロットの存在を報せていた。
彼の手の中で、砂時計が瞬いている。いや、瞬いているのは中の砂だ。
錬金術師達の間で星の砂と呼ばれるこの砂には様々な効果があり、混ぜたものに反応して熱を発する性質も持つ。この中には最初に魔術師が魔を入れたカードの破片が入っているから、彼の魔力に反応して熱を発し、熱せられる事によって砂が光るのだ。つまりこの近くには、タロットがいるという事。
瞬き始めているところを見る限り、かなり近くにいる筈だ。探しに行こうと足を踏み出すと、背後で扉の開く音がする。
「どこへ行く?」
出鼻を挫かれて渋い表情を浮かべ、ヴォルフは背後に立ったジゼラを見下ろす。彼女の手は、やっぱりコートを掴んでいた。ただでさえ襤褸だから、これ以上引っ張られると着られなくなってしまいそうだ。
そんなに離れたくないのだろうか。悠長な事を言っている場合ではないというのに。
「近くにタロットがいる。お前はここにいろ」
「駄目だ」
何がどう駄目なのか、ヴォルフには分からなかった。思わず眉間に皺を寄せると、ジゼラはコートを抱くように胸元へ引き寄せる。
「目を離したら、あなたは一人で行ってしまうだろう。駄目だ」
そんなつもりはなかったので、ヴォルフは目を丸くした。見上げるジゼラの表情は、怯えているようにも見える。淡いグレーの大きな目は、かすかに揺れていた。
一人になるのが嫌なのだろうか。元々一人で暮らしていたから、そういう訳でもなさそうだ。
しかし彼女の仕草に、胸が詰まる。記憶の中の実妹も、こうして服を握って、どこへ行くにもついて来たものだ。
「行くのはいいが、手は出すな」
聞いていたのかいないのか、ジゼラは開いたままの扉から中を覗いた。何故人の話を聞いてくれないのだろう。
「少年、ここにいろ。私達はタロットを探しに行く」
「うん、行ってらっしゃい」
こちらも意味が分かっているのかいないのか、にこやかに手を振ってくれた。ジゼラはかすかに笑みを浮かべて、その手に応える。
「夕飯までには帰るぞ」
「町にな」
短く補足して、ヴォルフは砂時計を見つめたまま歩き出す。ジゼラはコートを掴んだままついて来た。出来れば少年と一緒にここにいて欲しいのだが、彼女の事だから何を言ってもついて来るだろう。
早々に説得を諦め、ヴォルフは砂時計を頼りに瓦礫を踏み越えて行く。砂時計が反応したという事は近くにいる筈なのだが、瓦礫や家屋に阻まれて姿が見えなかった。怪訝に眉をひそめた時、後ろからコートを引かれる。
「ヴォルフ」
「なんだ」
「血のにおいがする。あちらだ」
嗅覚が犬並みだ。ヴォルフは鼻が良くないから、嗅ぎとれなかっただけかも知れないが。
指差された方向には比較的無事な家屋が多く、家と家の間に路地が残っていた。一つ一つ確認するのも面倒だが、探すしかないだろう。ヴォルフが嫌々路地を覗くと、横から肩を叩かれた。
「なんだお前はさっきから」
「あの猥褻物がタロットか?」
は、と問い返して振り返ると、反対側の路地で白い生き物が蠢いていた。いや、生き物ではない。
それは一見全裸の女のようだったが、通りを向いた丸い尻には、獅子の尾が生えていた。四つん這いになって頭を下げたその姿勢から、ヴォルフは何か食っているのだろうと推測する。
乾いた風に乗って、微かに魚のような生臭い血臭が漂ってくる。生き残っていた人が襲われたのか元々死体だったのか定かではないが、どちらにせよあれは倒さなければならないものだ。タロットが糧とするのは人の邪念だけのはずが、彼らは何故か人を見ると襲い掛かって喰らう。時には死体を食う事もある。だから、放っておく訳には行かない。
「あれがフォースだ。猥褻物ではない」
「はしたないな。全裸で人前に出るとは」
「人間ではないのだ、全裸も何もない。ああいうものだ」
ヴォルフが背負っていたメイスを掴むと、殺気に気付いたか先端に飾り毛のついた獅子の尾がゆらりと揺れる。白い尻がゆっくりと下がり、頭が振り向く。その口には、真っ赤に濡れた人の内臓が銜えられていた。
人間の女のような白い顔に眉はなく、鼻は獣のそれのように上を向いている。後ろから髪のように見えたのは全てたてがみで、確かに少年の言うとおり、ライオンのようでもある。
胸元まで生えた体毛の下から、重力に従って垂れ下がった白い乳房が覗いている。人間の女だったら、見事な体つきだと言えただろう。しかしその目は金色に爛々と光り、瞳孔の形からして人間のものではない。感情のひとかけらも見て取る事の出来ない目が、ヴォルフを認めて細くなった。
「力」の口に銜えられたものを見て、ジゼラはようやくあれが人でないと認識したようだった。身を硬くして掴んでいたコートを離し、外套の下から細身の長剣を抜く。ヴォルフは彼女の前に一歩進み出て、手にしたままの砂時計を突き出した。途端、タロットがそれに向かって低い唸り声を上げる。
「路地から出ろ。追い込まれたら一溜まりもないぞ」
言いながら砂時計を返し、ヴォルフは一足先に路地を出る。耳に届く唸り声が一層高くなり、「力」の顔が憎々しげに歪んだ。この中に同族が閉じ込められていると分かっているのか、敵と見なしただけなのかは定かではない。しかしタロット達は皆、この砂時計を見るとああして敵意を剥き出しにする。
危険ではあっても、見せなければこれは効力を発揮しない。対象が砂時計を目視して認識しないと、返しても無意味なのだ。
「力」と対峙したまま横目で砂時計を見ると、砂の落ちるペースが異常に遅かった。ヴォルフは苦々しく表情を歪める。
「長くなるぞ。後ろにいろ」
「私もやる。女としてあれはなんだか嫌だ」
そういう問題ではないだろうと思ったが、「力」が突然空を向いて咆哮したので、何も言わなかった。獣そのものの低い声に、大気が震える。察したヴォルフがメイスを引くのとほぼ同時、タロットの四肢が地を蹴った。
大きく開いたその口内にはびっしりと鋭い牙が並び、血のように赤い舌が覗いている。否、彼らの血は赤くないはずだから、舌が赤いのは先程まで食っていた肉のせいかも知れない。生臭い呼気が、瞬く間に目前へ迫り来る。
ヴォルフは肩に食らい付こうとするその口に、横向きにしたメイスの柄を無造作に突っ込んだ。鉄の柄が牙とぶつかった瞬間、きんと甲高い音が響く。異形は猫科の獣のそれに似た長い爪の生えた手でメイスの鉄球を掴み、柄に噛み付いて奪い取ろうとしたが、ヴォルフに押し返されて叶わなかった。
両手両足をついて着地したそばから再び飛びかかった「力」の腹に、スパイクの並んだ鉄球が迫る。しかしカマキリのように曲げられた腕が、難なくそれを跳ねのけた。鉄球自体にかなりの重量がある筈だが、大して力を込めた様子もない。力という呼び名は飾りではないようだ。
異形がメイスに気を取られている隙に、ヴォルフは反対側から胴体を蹴る。大した手応えはなかったが脛が胴に食い込み、タロットは衝撃で横へ吹っ飛んだ。
空中で体勢を整えて着地した異形に、柄を長く持ち変えたヴォルフのメイスが追い縋る。彼が片手に持った砂時計の中身は、三分の一ほどが金色に変わっていた。
ヴォルフは鉄球を避けながら高く跳んだ「力」を見上げ、得物を手元に引き戻して身構えた。しかし金色に光るタロットの目は、彼ではなくジゼラを見ている。
「避けろ!」
ヴォルフが言うが早いか、「力」がジゼラ目掛けて爪を降り下ろしながら飛び込んで行く。飛び上がってからジゼラの頭上に降下するまでかなり速かったが、タロットが腕を振りきった時にはもう、そこには誰もいなかった。勢いよく地面に降りた「力」の頭をブーツの足が踏み付け、外套が翻る。
彼女は、空にいた。頭を踏み台にして跳んだようだが、それにしても違和感を覚えるほど身軽だ。軽業師でも、あそこまで跳べるかどうか。
ジゼラは大きく背を反らして空中で後転し、足から落ちながら「力」の顎目掛けて剣を振る。着地した瞬間下から切り上げられた異形は、反応出来ずに顎を弾き飛ばされた。
しかし、然したるダメージはないようだった。人間に対しては顎も急所となるが、思念体にとってはそうではない。タロットの方もジゼラと同じく、跳ね飛ばされた勢いのまま空中でくるりと後転し、両手から着地した。太い爪の食い込んだ地面が、大きく抉れる。
たてがみに被われているせいで傷口は見えないが、刃で割られた「力」の顎からは、止めどなく黒い血が滴り落ちていた。確実に傷を負わせたというのに、ジゼラの表情は曇っている。
「なんだこの手応えは。斬ったのに」
「実体だが、思念の塊だからな。頭を割らねば動きは止まらんぞ」
言ってから、ヴォルフは獰猛な雄叫びを上げる「力」が向かって来る前に、手にしたメイスを振る。当たる寸前で避けられたが、すぐさま柄を持ち変え、後を追うように方向転換させた。長年化け物達を相手にし続けて鍛え上げられた彼の筋力も、伊達ではない。
一抱えはある大きな鉄球が、異形を捉えた。咄嗟に頭を護ろうと上げられた腕ごと肩へ強かにぶつかり、タロットが吹っ飛ぶ。「力」はそれでも体勢を立て直そうとしたが、一瞬遅く、石造りの壁へ激突した。
「終いだ」
ジゼラが追撃しようと足を踏み出したが、ヴォルフは止めた。彼の左手の中で、砂時計が金色に輝いている。あと数分で全ての砂が落ちきるだろう。
地面に崩れ落ちた「力」がゆっくりと起き上がり、砂時計を見て身を硬くする。不気味に光る目は、無感動にヴォルフを見上げていた。
「愚者よ」
獣の鳴き声しか上げなかった「力」の口が、初めて人の言葉を喋った。ジゼラは驚いたように目を丸くしたが、ヴォルフは動じない。
「何故我らに仇為す」
「知れた事。『力』よ」
砂時計の砂が、計ったように落ちきった。金色に瞬くそれを見て、獣の爛々と光る目が大きく見開かれる。
「己の正の意味を、知れ」
それだけだった。砂時計は光る以外の反応を見せないし、ヴォルフもそれ以上何も言わない。しかし「力」の口からは、獣の絶叫が迸った。
断末魔が、乾いた空気に乗ってその場で長々と響く。不安を煽る不気味な叫び声が耳鳴りのように反響する中、タロットの体が徐々に黒く変色して行く。
やがてその全身が影のように変わると同時、弾けて金色の粒となり、消え失せる。後には砂金に埋もれた銀色の懐中時計だけが、ぽつんと残されていた。